河童の皿箱
2025-04-02 09:15:59
11966文字
Public 旧作
 

赤気

娑楽斎とランブラのお話。



 ぴーん、ぽーん。

 月夜に軽快なインターホンが鳴る。すぐにガチャリと音が鳴って、またあの声が聞こえた。

『ランブラさん。どうぞ、お入りください』

「こんばんは、娑楽斎さん。お邪魔します」

 あの日と同じように、また門がからから開く。よいしょと大きな荷物を背負いなおしてから家の入り口に向かえば、そこには彼が立っていた。

「キャンバスごとお持ちになったんですね」

「ふふふっ、ついつい楽しみで楽しみで。それに、絵を描くのなら必要でしょう?」

「重かったでしょう、持ちますよ。えととりあえず上がってもらってああいや、今日はこっちじゃなくて、あっちにアトリエがあるので」

 彼がキャンバスや荷物を持ってくれて、かなり気軽になった。そして、また導かれるままについていく。以前入れてくれた1番大きな建物ではなくて、その横をぐるりと通ると、また別の古い建物を通り過ぎ、それとはまた別の小さな建物が2つ見えてきた。
 中からガガガガと何かを削るような音が微かに聞こえる方ではない方に通されれば、そこにはたくさんの描きかけの線画や数えきれないほどの毛筆と、削りかけの木の板や彫刻刀、刷毛とペンキなどなど、実に多彩な画材の山があった。
 ごちゃりとしているけれど、ある程度の空間が確保されている。これなら、すぐに始められそうだ。

これでも片付けはしたんですけど」

「ふふ、わかりますよ。描くのに夢中になってるとこうなっちゃうのよね。わたくしもおんなじです」

 彼が持ってくれたキャンバスの封を解いて、スタンドを立ててかける。ローラーをいくつも広げて準備をしていれば、彼も筆洗に水を入れて持ってきてくれていた。最後に椅子を立てて、彼に座ってもらい、スポンジローラーを握らせ絵の具を水で溶かす。

「それでは、お願いします。先生」

「えぇ。こちらこそ」