akinoshiroihana
2025-03-22 23:18:01
12058文字
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名刺置き場10





あら、ま~~あ、と。
ずいぶん素っ頓狂な声が挙がったもんだと隼人は朝のリビングを覗く。
居間にはミチルが一人腰に手をあて、花鉢をにらんでいた。
「台無しじゃない」
説明は後でとばかり、彼女はその憤懣やるかたなさをまず同学年の彼にぶつけに、ねえ?と迫って来た。
居間の壁際には昨日までとは違う、今を盛りと咲く石楠花が活けられていた。そして、その脇には小さな星型の野草も一輪
「お母様が外にいたリョウくんに、今よく咲いているあそこのお花を切ってきてってお願いしたのよ、私はピンクの方をねって頼んだわ」
客間に案内するでもないちょっとしたお客様や彼らが集まる場所、そこにはあまり目下の研究所が負う事になったロボットの話題に終始してしまわない色を配置するのに気を配るのだという。ああそういえば弁慶の色の水仙を飾る時も各色取り混ぜ、柔らかいフォルムのものが選ばれていた気がする、と隼人も納得する、と共に
「で、これじゃあダメかい?ちゃんとピンクだ、別に俺達の色じゃない」
「よくありませんことよ、この野の花!『そういえばじゃじゃ馬の娘さんはレディなんとかで一緒に戦争ごっこですかな』って言われる余地ができちゃってましてよ」
もう、と学園のマドンナはため息をつく。
あたしって意識過剰って言われても、気にしないけど気にはなるのよ。あたしは隼人くん達の仲間の一人か隼人くんたちの追っかけを特別席でやってるのか、女王様気取りで隼人くん達を連れまわしてるのか、隼人君たちの誰か狙いかどういうお付き合いかドコマデイッテルノカ、どの目で見られるのか、もね、こんな時でも
なるほど彼女は大輪の花ではなく、そこに竜馬のアドリブで添えられた白い花弁に自分を見出してしまったらしい、なるほど、コマンドマシンの機体は白い、しかし

「いや多分、これミチルさんじゃないと思うぜ」
そう幾分口幅ったい調子で隼人は言う。あいつ、たまたま目に入った花を、ああ可愛いなーってお優しいい~い顔で微笑んで摘んじまって、その後ではっとなってこれどうしよう、ってきょろきょろして処し方に狼狽えるんだよ、去年一年そうだったから間違いねえや。
「そうそう、俺が保証するよ」
じゃあこいつだけ俺達の部屋にもらっていくことにするよと少しの笑顔を向け、白い花と共に彼は退散する、そして細くも深々とため息をつく。
豪奢に咲いた躑躅色と牡丹色のあいだのあざやかな花弁が小花と寄り添う図はなんだかでかい立派な犬と小さな子猫みたいにも見える取り合わせが可愛らしくもあるが、その可愛らしさと見えるのも、深い愛と見えてしまうのも、これは。何とも頭の痛い、いや恥ずかしいいやそれとも―――なんて恥を知らない傲慢か!

「ああ隼人、探していたん―――
「俺もだよ、これやる」
廊下で仏頂面の友に花を渡された青年は、え、ま、待て待ってくれハヤトとよく通る朗々としたいささかヤカマシイ声で叫んだ

ゲッターロボの二号機も、死地に舞ったジャガー号も、かつてはおなじく白かった。