●
ん、どうした
ここ数日、一気に春めいてきた午後の野原に、勝手知ったる部屋の長椅子かひとのベッドみたいに身体を投げ出すかと見えた隼人が、自分の勢いと重力に逆らって腹筋で身を起こし、すとん、と小さく座り込む。長すぎる脚は二つに畳まれ胸元に抱き寄せられても、白い顎を乗っけるにはままならないところまで膝頭が来るのに(なんてこった流石だな)と変なところ感心するのは竜馬だった
先客だよ、潰しちまうとこだ
午睡の寝床をひと撫でする隼人の手の下には淡くやわらかな紫、その中に目を刺すほどに眩しい金色の花芯
クロッカスか、いよいよ春だな
なんだいこんなところに花なんて咲いてなかったぜ
クロッカスは生い茂らなくてもいきなり飛んできて思いがけないところに咲くんだそうだ、器用な花だよ
「ふうん」
だけど雨のひとつも降れば溶けるように萎れて消える。春の花は跡形なく消えるものがいくつもあって
『
―――お前は何処からでも来て、何処へでも行くだろう』
萌え出た花を潰さぬように、膝を抱えたままの隼人の傍ら、竜馬も腰を落とし片膝をつく
「凄い黄色だ、金色みたいな」
「あいつみたいな?あいつらみたいな花かな?」
「いいや?」
竜馬はそっと両手の中にその数輪を乗せて風にそよがせる。むしり取ってしまわないままにその花弁を撫でて。
「紫は赤と青、」
そしてその中に金
「何色でも作れるのさ俺達の三つの色で」
どの花も俺達の色で咲くよと尊大だか図々しいことを、まるで安心させるかのような調子で、竜馬は、隼人の耳元で、言った。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.