●エイプリルフール、チェンゲ 完全にジャスラック物件なのでベッターと名刺限定です
四月馬鹿でもなんでも
お前と関わるのはもう沢山だ解放してくれの逆ってんでいいからよ
甘ったるい言葉を寄越しやがれ
などと流竜馬が言ったのは、ある激戦後、みな疲労困憊した深夜、「タワー」内の一室においてであった
曰く、「甘やかせ」と。
言われた相手は嘗ての芳容をずたずたにした十数年の歳月の向こうから彼をじっと見た後、細く長く息を吐いて眉の付け根辺りを揉み解しつつ
「
―――歌でいいか」
「あ?」
「自分の言葉で出そうとすると流石に30分ほどの仮眠の後にしないと後で改良点を多々思いついて後悔する」
指令室においても取り乱すことのない神隼人の唇がそれでも既に渇き罅割れうすら血の匂いさえしているのを嗅ぎ付ければ、竜馬は首肯の代わりに顎をしゃくって相手の意のままの行動を促すこととなった
そして、なんでそんなものまで作ってたんだ実は余裕かよ、とか、敷島博士が今作バカやらせてもらえないストレスで変な設計図引いたんじゃねえのという艦内カラオケルームにて竜馬はいま現在タンバリンを振る
死んでしまおうなんて
悩んだりもしたわ
バラもコスモスたちも
枯れておしまいと
隼人は恋に人生に疲れた嘆き節を歌う。その歌詞は確かに彼に似合っていた、痛々しいほどに、あるいは恨みがましさが鬱陶しいまでに。
ねえおかしいでしょ若い頃
ねえ滑稽でしょ若い頃
笑い話なのに涙がいっぱい
涙の中に若さがいっぱい
「おい竜馬よ、こいつはひっくり返さないでも、まんまあいつの十三年だ」
「ああ黙ってろ」
だから何だってんだいい声じゃねえか相変わらずよと、竜馬は心配して付いてきた弁慶にとても良い作画で凄む
有名な演歌だ、だからこの後もみな知っている。だが、それならつまりはどういうことだ?昼間の激務で疲労の色濃い隼人が、全てを過去のとして清々しいまでに割り切り諦めた寂しい、もしくは飄々としたイイ女の小芝居までして竜馬に目を向けサビに入ったのは。いいかここからだぞ、という風に。人生はいろいろな事があって出会う男もいろいろいたから、こちらも方々で咲き乱れて来たのだと、「エイプリルフールとして」隼人が歌うのは。つまり、その反対だというなら。
竜馬のタンバリンが、シャンという音だけさせて止まる。少年のように目元が赤らみ、何にも代えがたいというような至福の微笑みが獰猛なその表情からにじみ出て、岩を砕く清水のようにその表情の上にあふれて来る
「嘘」でいいから「愛してる」と歌われたいのではなかったか、甘やかしの言葉が欲しい夜ではなかったのか。あるいは本当は咲き乱れて来たという女のそれでも「誰か」を忘れられなかった思いを掬い取って愛するべき歌かもしれないが、そんな凪いだ湖面のような心ではいられない夜に効いたのは、その歌詞を真反対にひっくり返してみることで。それは必要があればまた酷い裏切りもしかねない、そして手前が一番いつまでも深く傷付き自分を責めるに違いない、大事な親友からの、
『お前だけ』
ああ畜生恋敵は世界やら人類だ!
「あいつ忙しいのにミュージカル俳優のバイトだのなんだのもやってたからな
そこから追いかけて来て今のオペレーターに入った志願兵の女の子もいるらしい。大した歌姫ぶりだよあいつ」
「うるへえ誰が泡姫だ」
嬉しいらしいのと照れくさいらしいのと、不覚にもウルッと来たらしいのと正直彼自身既に肉体が限界なのとで、
流竜馬の顔と返事は、後の早乙女博士の精神攻撃空間突入時の戦友以上に、そりゃもう支離滅裂だったという。
(了)
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