mochita_rj
2024-11-16 17:15:13
24499文字
Public TwitterのSS
 

SS2023年分

1Pに説明があるよ



「あ、の。露伴先生、」

ぼくを見上げるアメジストのように輝く瞳。期待と困惑の両方を滲ませたそれは、ぼくという汚い大人の本性も知らずに、若くみずみずしい光を煌々と散らしていた。

「どうしたんだ?」
「ええと、なんでこんなに近いのかな〜とか、思ったりして

ソファに身を沈める仗助の体とぼくの体、拳ひとつ分も満たない。互いの体温すら感じられるほどのこの至近距離で、仗助はでかい図体を縮こませてこちらの様子を伺っていた。ぽっと頬を赤らめてチラチラと視線を寄越す仗助に、随分うぶなもんだ、と思う。もしやこの反応、

「なぜ?恋人同士なら当たり前だろう」
「ふぇっ!?」

所在なさげに空を泳いでいた仗助の手のひらに手を重ねる。ビクッと大袈裟なまでに肩を跳ねさせた彼に、ああ、あっちの僕は余程恋人の事を大切にしているらしいと悟った。ぼくはクスっと笑い、熱い手の甲を撫で、指の隙間にぼくの指を滑らせる。仗助はそれだけで逃げ場を失ったように、さらに距離を詰めるぼくにされるがままだった。

「も、今日のアンタおかしいっスよ!い、いきなりこんなっ!」

やはりこの少年は美しい。性格は合わないと言えども、ぼくはその恵まれた容姿を素直に認めざるを得なかった。限界だ、と言わんばかりに目尻から零れた涙も、真っ白に透き通る肌が上気して淡い桃色を浮かべているのも。初めてこの距離で視界に入れる東方仗助の全てが、やけにぼくを惹き付けた。まだ年端も行かないのにこの色気、よくこんな恋人を目の前に我慢できたものだ、と感心半分、呆れ半分の感情が湧いてくる。と同時に、手を握っただけでこの反応ならば、この先に踏み込んだらどうなるのだ?と俄然興味が湧いてきた。

気が変わった」
「え?ちょ、露伴せんせ、んっ!?」

触れた唇も抱きしめた体も、ついこの前抱いた女よりずっと熱くて柔らかかった。仗助がピタリと動きを止めたのをいい事に、舌をするりと滑り込ませて考える。あの女の名前は確かイブとか言ったっけ?女のリアルを知るためだとか、ファンの期待に答えるためだとか適当な理由を付けて家に上げた女は、1度知ってしまえばそれはもうつまらないものだった。あれと過ごす時間は、男の欲を発散するためだけの虚しい行為であったのは間違いなかった。

「んあっ、ろはん、んむ
「ふ、仗助

それなのに、今はどうだ?年下のガキ、ましてや女でもないこの体に、確かにこのぼくは興奮している。いじらしくぼくの背中に縋る手も、健気にも必死に応えようと絡みつく厚い舌も、何もかもが愛しいのだ。クソ、このぼくが惚れたガキはどんな奴なのか?そんな安易な気持ちでウチに上がり込んできた少年を、からかうだけのつもりだったのに。今この瞬間は粘膜に触れる唾液すらも甘く感じちまう。だめだ、これ以上やるとぼくがおかしくなっちまう。こんなクソッタレのガキに手を出すなど、

「ぷは、」
「んぁふ、はあっろ、はん?」

蕩けきったアメジストは直前までの見る影もなく、期待だけが滲んでいた。舌にまとわりついたぼくのものではない唾液を飲み込みながら、バカになった頭を働かせる。ぼくは誰も拒まないし去るものも追わない。だけど、どうやらきみは違うようだ。そう理解してしまえば早かった。

「仗助」
「っ!んぁっ

ソファの背もたれに全身しなだかれかかった仗助の顔の脇に手をつき、赤く火照った耳たぶをはむ。鼻を擽る大量の整髪料とうっすら混じる汗の匂いは、明らかに女物の香水とは違う。それでも、この男の匂いの奥に潜む仗助自身の香りを認識した途端、心臓がドクドクと高鳴った。やっぱりぼくは、組み敷いたこの少年に惚れ込んでいるのだ、と思うほかない。それならば。

馬鹿だなあ、あいつも。ぼくに取られるなんて思ってもないんだろうね」
「んどうしたんスか?露伴」
「なんでもないよ」

ニッコリと笑顔を貼り付けたぼくに、仗助は「早く」と消え入りそうな声でぼくの首に顔を埋めた。誰も、この僕ですら触れてないその無垢なからだを、今から汚すのだ。興奮のあまりに脳みそがぐらぐらと沸騰する錯覚に陥った。全身に沸き立つ熱は、独占欲というべきか、それとも優越感というべきか、なんて名前を付ければいいのかもわからなかった。ただひたすらに、初めて感じたこの衝動に、身を任せたかったのだ。まあいいさ、悪かったなあ、あっちのぼく。悪いが一足先に味見させてもらうぜ。きみは精々ありもしない記憶を必死に手繰り寄せればいいのさ。

「露伴。すき、すきッ、」

何も知らずに甘い声を発するその唇に、ぼくは夢中で噛み付いた。それから、ぼくは生涯口に出した事も、出す予定も無かった言葉を吐いた。

仗助。ぼくも好きだよ。愛している」