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mochita_rj
2024-11-16 17:15:13
24499文字
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TwitterのSS
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SS2023年分
1Pに説明があるよ
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「ろはーん
…
ろはん!」
同時に鳴らされるトントントン、と遠慮を知らないノックの音。瞬間ぼくは意識が引き戻され、ペンを置いた。ノックの回数は2回ではなく3回だ、とぼくが口酸っぱく言ってるのをようやく覚えたか。なんてため息をついている間に、ぼくの返事を待たずに扉が開く音が背後から聞こえた。返事を待ってから入るという教えはまだ覚えてないらしい。
「露伴!年越しちまうっスよ!いつまでやってんの」
「あーすまん、もうそんな時間か
…
忘れてた」
年越しそば食おうぜ!と出汁の香りを纏って言った仗助がぼくの顔を覗き込む。年明けの休み1週間分余裕を持てるようにと、年末のこの日まで原稿に没頭していて年越しを忘れていた。一人暮らしだった去年も無心で机に向かって気づけば新年、なんて事になったが、また今年も同じ事をしそうになっていた。
「露伴さァ〜おれがいなきゃ本当ダメだよな」
2人で階段を降り、随分と楽しそうな背中を追いかける。蕎麦の出汁の香りが強まったリビングの床には空いたコーラのペットボトルが転がり、つけたままのテレビは今年のヒットソングを流している。年末の浮かれきった部屋を横目に、仗助にしつこくせがまれて買った、洋室には合わないこたつに足を収めた。
「はい。箸」
「ああ、ありがとう」
「ん」
足にじんわりとした温もりを感じていると、目の前に出来たてほやほやの年越し蕎麦が差し出された。思わず見ただけできゅうっと腹が鳴る。そういえば昼から何も食べていなかったっけな。空腹を満たすべく仗助から手渡された箸で麺をすくい啜る。うん、美味い。鼻に抜ける出汁の心地に空だった胃も食欲も満たされて勢いよく食い進めると、目の前で仗助がんふふと嬉しそうな笑い声をあげた。
「そんな慌てて食うなって。逃げねえから」
「美味いな。また腕を上げたか?」
「露伴のお嫁さんなので。当然っス!」
2人分のお茶を淹れながら、仗助は冗談めかしてはにかんだ。その言葉通り本当に仗助と結婚したとしたら、10年後も20年後も同じような光景を見るんだろうな、なんて。大人になっても仗助はきっと、変わらず凝り固まった心をほぐすような、柔らかくて優しい笑顔をずっとぼくに向けてくれるのだろうという確信さえ感じた。
「
…
仗助、ありがとうな。この1年」
「ん?へえっ?いきなりなんスか?」
「おかげさまで、きみの言う通りぼくはダメになっている気がする」
「それ、いい意味で言ってます?」
ぼくの唐突な感謝の言葉に、仗助は蕎麦を啜る手を止めた。ぼくはきみから呼び起こされるまで漫画の世界から帰ってこれないし、仗助がいなかったら、こういうありふれた人間としての幸せを知らないままだった。また一年、何事もなく仗助と暮らせたことに、ぼくはほっと安心のため息をついた。仗助は多分、ぼくの感謝の言葉にそこまでの重みがあるとは思ってもないだろうけど。
『年越しまであと10秒ですよ〜!』
「あ、あと10秒だって」
「年越しの瞬間地球にいなかった〜ってやつしなくていいのか?」
「おれそんなガキじゃあねえよ!」
テレビ番組のアナウンサーがこの1年の終わりを知らせる。ちょうどいいタイミングで蕎麦を食い終わったぼくらは、そわそわとその瞬間を待った。あと3秒、2秒、1秒。いつもより長く感じる10のカウントは進み続け、ディスプレイに映る数字がゼロになった瞬間。わあっと賑やかな歓声が部屋に響き渡った。
「あけましておめでとうございます!露伴」
「あけましておめでとう、仗助」
にこっと笑ってお辞儀を向ける仗助にぼくもお辞儀を返す。仗助と誕生日、クリスマス、年越しといったイベントを共に過ごすようになってから、世間のお祝いムードがだいぶ肌に慣れてきた気がする。
「と、こ、ろ、でェ〜〜」
「ん?」
「おれに渡すモンあるでしょ?露伴センセー」
「何だよ」
仗助はこたつから身を乗り出し、にやにやとわざとらしく笑って手を差し出した。こいつがぼくのことを先生と呼ぶ時は大抵ろくなことがない。それに、この表情は前、ぼくんちにいきなり押しかけてサイコロを差し出してきたときと同じ。
「白々しいの〜!お年玉!に決まってるじゃあないっスか!」
「なっ
…
きみ、恋人にまで貰うつもりでいたのか!」
「お年玉に恋人も何も関係ねえでしょ!」
「おれまだギリ貰える年だし〜」なんて頬杖をついて甘えた顔をする。そういえば、去年の正月も朝っぱらからアホの高校生3人組はウチにお年玉をせびりにやって来た。「露伴先生ー!子度が来たぜー!」と玄関先でぎゃあぎゃあ騒ぎ立てるから仕方なく小遣いをやって帰らせた記憶が今急に蘇った。こいつは、金の事になると満足するまで何でもしやがる。近所迷惑になることも、家だって燃やすことも。
「
…
無駄遣いするなよ」
「やったー!ありがと!大事に使わせて頂きますッ!」
「新年早々家を燃やす訳に行かないからな」
「何の話スか?」
ぽち袋なんて大層なもの用意してないから生で渡した1万円札に、仗助は飛び上がって喜んだ。明日何買お〜なんて、手に入れて早々使い道を模索してはしゃぐ仗助は、ぼくの嫌味には全く気づかない。ぼくもこうやって結局折れちまうから、仗助を調子に乗らせるのかもしれない。近所のガキから恋人という関係に変わってから、余計仗助への甘やかしは加速してるし。
「さて。子供には小遣いもやったし、年も明けた。次は恋人として、早速姫始めと行こうか?」
我ながらオヤジくさいな、なんて笑いながら、こたつを抜けて向かいの仗助の隣に座る。ひめはじめ?と首を傾げた仗助にぴったりと寄り添うと、こたつの熱でじんわりと温もったからだが触れ合って益々暑くなった。布団の中に手を入れ、太ももをつうっと意味ありげに撫でる。ついでに無防備な首元に顔を埋めてみると、ぴくんと大きな体が小動物のように震えた。
「んっ!ちょっと、どこ触ってんスか!」
「んー?」
鼻先で首筋を滑らせれば、ぼくの好きな匂いがぶわあっと鼻腔を擽る。柔らかくて甘い香り。仗助はくすぐったいと身をよじりながら、太ももを無遠慮に這うぼくの手に上から手を重ねた。ぼくが耳元で「いいか?」と許しを乞うと、仗助はそのままきゅっと手を握って、
「
…
おれ、露伴のお嫁さん、っスから」
なんて遠回しの肯定をしてぼくの顔を窺うようにちらちらと見る。先程冗談交じりにふざけて言ったそれとは違って、羞恥の限界を超えて潤んだ青い瞳は、ぼくを吸い寄せて夢中にさせるには十分だった。なあ、それぼくが喜ぶとわかっててやってるのか?呆れたような顔をしたぼくに仗助は唇を引き結び、重ねた手の上から縋るようにぼくの手を握った。
「でも、明日朝から初売行く約束でしょ。だから、その。控えめにしてくれよ」
「いつもそう言うけどやめないでって泣きつくのはきみの方だろ」
「う、うるせえ!するならさっさとしろッ!」
痺れを切らした仗助がぼくの唇に続きを促すように、軽くキスを落とした。ふは、と甘えた息がぼくの唇を濡らして離れていこうとするので、逃がさぬようにその柔らかくて熱い唇に噛み付いた。キスなんて何百回としているのにも関わらず、仗助はぎゃっ!と色気のない声をあげてぼくに腕を回してしがみつく。ふん、今更手加減する気なんてないからな。せめてそうだな、さっき渡したお年玉分くらいは返してもらわなきゃあいけないよ。にやりと笑ったぼくの顔を見て、仗助はさあっと怯えのような、期待のような、そんな捕食される寸前のうさぎみたいな顔をした。
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