mochita_rj
2024-11-16 17:15:13
24499文字
Public TwitterのSS
 

SS2023年分

1Pに説明があるよ


「あ、あの。仗助くん。良かったらこれ、受け取ってくれませんか?」

学校中が色めき立つバレンタイン当日、目の前に差し出されたのは可愛らしくラッピングされた包み。こんなふうに、顔もよく知らない女の子からチョコレートを渡されるなんてことは毎年恒例の事だった。せっかくおれのために用意してくれたんだし、別に断る理由もないから受け取る。これがいつもの流れ。でも、今年はそうはいかなかった。

「あーわりぃ、おれ受け取れねえんだ。ごめんな」

どうして?それならチョコだけでも!と今日何回聞いたかわからない言葉を聞き流していると、物陰からチラチラとこちらを見つめる女の子達が目に入った。手には色とりどりの四角形が見え、驕りとかじゃあなく間違いなくあれはおれ宛てだと悟った。まずい、このままだと日が暮れちまいそうだ。

「えーと、もうおれ帰るから!じゃあな!」

仗助くん!?と慌て出す女の子達の声を尻目に、カバンを小脇に抱えて駆け出す。急いでも勢い余ってカバンの中身を潰さないように。目的地までの道中、おれの頭に浮かんだのはちょうど1年前の今日の事だった。



……オイ』
『なんスか?』
『きみ、わざとか?』
『何が?』
『恋人の家でよその女から貰ったチョコレートを見せつけるように貪って、当のぼくには何もないのかって話だよ』
『うん?えーともしかして露伴おれからのチョコレート、欲しかった?』
……
『露伴?』
ああそうさ!期待したよ!悪いか!』
『え、でもあんた甘いもの嫌いって言ってたじゃあねえかよ』
『そうだな』
『てっきりチョコなんか要らねえって思ってた。ファンから送られてくる分もあるし』
『それとこれとは別だ!』
『ええなんなんスか



あの後、不貞腐れた恋人の機嫌を治すのにどれだけ苦労したか。おい露伴、あんたがヤキモチ妬くから今年はちゃんと誰からもチョコ受け取らずに帰って来たんだぜ。こうやって理不尽で身勝手で素直じゃないアイツの顔を思い浮かべてると、思わずふふっと笑いが漏れちまった。

露伴、気に入ってくれるかな」

昨日の夜せっせと手作りしたそれをカバンからこっそり取り出す。初めて作ったチョコは形も不格好だし、ラッピングのリボンだって少し傾いてる。今までおれが女の子達から受け取ってきたものとは大違いだ。どうしよう、今になって不安になってきちまった。喜んでくれたらいいなあって思いきって手作りしてみたけど、男なのにちょっと重すぎたか?

「うあ〜〜〜!!」

やけに軽かった足取りのせいか、自分んちの次に見慣れた家の扉がもう目の前にあった。あーもうなんか帰りたくなってきた。手作りなんて露伴食うのかな、いやでもおれのチョコ欲しいって言ったのはあっちだし。ちゃんと露伴が食べられるようビターチョコレート選んだし、いやこれでも甘すぎたかも。頭の中で、渡さない理由と渡す理由がぐるぐると背反してどうしたらいいかわかんねえ。そうやってインターホンに触れた指先に力を込めては引っ込め、を繰り返していると、中からバタバタと痺れを切らしたような足音が聞こえてきた。

「さっきからきみ、人の家で何やってんだ」
「ギャッ!!!!」

ガチャリと扉を開けて出てきたのは、丁度今おれの頭をひっかき回してる張本人。心臓はスゲー早く鳴ってるし、口の中はからっからに乾き出す。今までおれにチョコくれた子達ってこんな気分だったのかな。いやめちゃくちゃ緊張するじゃあねえかよ!

「仗助?どうした」

胡乱な目を向ける露伴にチョコレートの存在を気付かれるのは時間の問題。ここで逃げたって、結局全てがバレるのはわかりきってる。っていうか去年あれだけバレンタインがどうのってうるさかった癖に、おれがチョコを渡しに来たって気づかねえかな!?ひょっとして今日がバレンタインなのも仕事してて忘れてんじゃあねえの。あーもういい!どうにでもなっちまえ!と、後ろ手に隠していた緑色の包みを投げつける勢いでおれは言った。

「ひ、東方仗助ッ!恋人の露伴先生に渡したいものがあって来ました!」