akinoshiroihana
2024-10-13 20:31:35
15825文字
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名刺置き場8

メモ:ゲッター以外が入ったらここにその旨書くこと



●レコードで何か
「ベアー号の中には天地真理のピンナップポスターが貼ってある」という設定が東映版にあります
レコードはこの曲



うわあよせよせ違うようやめろってこんにゃろう

そんな声が自分達の部屋からするのに竜馬と隼人は顔を見合わせる
おうお前ら何とかしてくれよ、天地真理ちゃんはこんな野太い声なんかじゃないよう

武蔵の丸っこい指が示す先には隼人の実家から送られてきたやたら場所取りな木製のレコードステレオセット(明日香さんからでないのは到着日に完全な無表情で電話した隼人により確認された)があり、開いたレコードプレイヤーの上には透明な赤いソノシートがちょこんと乗っている。両のスピーカーからはなんだがのったりした性別不明の太い声が「一人でないのは素敵なことである」旨を朗々と歌っていた。

こいつには俺自身触ってもいねえだろ、何で居間のステレオを貸してもらわないんだいと隼人が聞けば、だって恥ずかしいよとの純朴な返事がかえってくるのに彼はため息をつく。そういえば武蔵がアイドルのピンナップを貼るのは彼等三人の部屋ではなくベアー号のコックピットだけだ。
こういうのって紙で作るレコードプレーヤーセットと一緒に入ってんじゃないのか、ほらレコード針の代わりに先のまあまあとがった針金が付いてくる、との竜馬の問いには「やっぱちゃんとした機械で大きな音で聴きたいしさ、えへへ」と頭を掻いて武蔵は笑う

「うーん、そういえば元気ちゃんがどこぞの雑誌付録には男の声のドラえもんが入ってたヒドイとかご機嫌斜めになってたぐらいだから、ひょっとして男声の真理ちゃんなんていう仕様の付録もあり得るかも―――
「リョウさんよ、お前ね」
ふざけなさんなよ、だがそれで原因は分かったぜ、ちょっとそのレコードだかソノシートも借りてきなよ

言いつつ隼人はステレオの蓋を開けて中を確かめる。
「こりゃあEP、小さいレコードだから回転数が違うんだよ、ここもLPから切り変えないと」
かちり、と脇のスイッチが上げられて、再度演奏開始ボタンが押される、と、今度は可憐で爽やかな歌声がスピーカーから流れた。

あなたが雨の街振り返ってくれて
そのときが二人の 旅のはじまり

あああっ真理ちゃん、これだあそうだそうだよ!と武蔵がぱああっとなる。なんだか身に覚えはないけどいい歌詞かもな、と隼人も思う。雨の日の、運命の出会い、きっとそれもいい。

ふたりでいくって すてきなことね
いつまでも どこまでも―――
「隼人!これだ元気ちゃんに借りてきたぞ」

戻って来た竜馬が青い不透明なソノシートを差し出したので、優しい表情になっていた隼人はすぐにいつものシニカルに戻る。はいよ、どうせこっちも回転数違いだろうぜ、と。

ぷつりとダイヤモンド針の盤面に落ちる音、盤面の微細な汚れか傷を拾う小さなざらざら音。そして
「こんにちは ぼく、ドラえもんです」
そう挨拶したのはどこかのアナウンサーのように真面目な、紛れもない男性の声で、三人は黙って顔を見合わせた。
「いやこれは、これがドラえもんを名乗ったら小学生でも怒るよなあ」
「う~~~~~ん」

レコードの廉価版、「ソノシート」には、斯様な奇怪な代物も流通していたのである。


一九七四年の平和なある日。