08
[二人とも時間があったら、お昼ご飯食べに行かない?]
わたしはあえてグループLIMEに返事を送る。
しばらく返事が来なかったけど、カズイから一言
[どういうつもりだよ]
とだけ返事が来る。
[よかったらそこで話さない? 三人で]
三人で、という言葉にすべてを込めてメッセージを送ると、
[俺は構わないですよ]
[ねーちゃんがそれでいいなら]
間髪入れずに二人からも返事が来たので、場所や時間を打ち込んでいく。
「うまく話せればいいけど
……」
祈るような気持ちでメッセージを送り、スマホを鞄に滑らせた。
* * *
「ごめんね、わざわざ呼び出して」
二人に向かって頭を下げると、マサくんはそんな、と慌てて首を振り、カズイは逆にむすっとした表情で目を逸らす。
バイト先のカフェはようやくランチのお客さんが落ち着いた時間で、運よく奥にあるボックス席に入ることができた。
「
……で?」
カズイはこっちを見ないままでぶっきらぼうにそう呟く。
「俺ら二人集めるってどういうつもりなの」
「カズイ、言い方」
「いやだって、おかしいだろ。ねーちゃん状況わかってるんだよな?」
たしなめるマサくんを押しのけるように身を乗り出すカズイに頷いてみせる。
「うん、わかってる。だからちゃんと返事をしようと思って呼んだんだよ」
カズイは不満そうだったけど、マサくんと目を合わせると椅子に座りなおす。
「聞かせてくれますか? リコさんの気持ち」
「うん
……あのね」
* * *
「
……なんだ、それ」
「いや
……まぁ、想定の範囲内というか考えなかったこともないです、けど」
二人は反応に困ったように視線を彷徨わせる。
「でも、それがリコさんの本当の気持ちなんですよね」
「うん
……ずっと考えていたんだけど
……二人とも比べられないくらい大切なの。だから一人を選ぶとか、やっぱりできなくて
……」
これ以上でも、これ以下でもないわたしの結論。
どちらを選ぶのも嫌だし、どちらにも傷ついてほしくない。それならいっそ、わたしが二人と距離を置くほうがずっとマシだと思っている。
「ま、ねーちゃんらしい答えだな」
「悩ませてしまったみたいですね、すみません」
「ごめんね、ちゃんと気持ちに応えられたらよかったんだけど
……」
ふがいないわたしに二人は呆れただろうか。
恐る恐る顔を上げると、ふたりとも嬉しそうな顔でわたしの顔を覗き込んでいた。
「
……え?」
「いや、予想通り。つか、やっぱそうなるかって感じ」
「そうだね。リコさんは優しいから」
「優柔不断なだけだろ」
「そうだとしたら、俺たち二人とも振られて終わったはずだけど」
「まーそりゃそうか」
まるでこうなることを予測していたように、ふたりはあっけらかんと話している。
「やっぱり、って
……?」
「ねーちゃんはどっちも選ばないだろうなってこと」
「一つ確認なんですけど、俺もカズイも、嫌われているとか、恋愛対象外ってわけではないんですよね?」
「それは
……うん、そう、かな」
「そういうことなら、俺はとりあえず現状維持でいいと思います」
「まーそうなるよな、実際。とりあえず今までみたいに三人でいりゃいーじゃん」
「えっ」
三人で。
ずっと願っていたことがあっさりと叶えられ、わたしは拍子抜けした声を出す。
「アハハ、すげぇアホ面。ねーちゃんがそうしたかったんだろ?」
「俺たちが選んで欲しいって言ったくせにって思ってますか?」
「う、うん」
「情けない話なんですけど、やっぱり俺、リコさんやカズイと離れたくないんです。だからあなたが許してくれるなら、これからもこうして過ごしたいと思って」
「ねーちゃんが俺らのこと嫌がってるわけじゃないならいいよな? 彼氏なんか作らないで、ずっと俺らとすごせば問題ねーだろ」
「
……そう、だよね」
「余計なご心配をおかけしました。でも、リコさんの気持ちが聞けただけで充分です」
「ううん、わたしこそ
……今までなんにも考えてなくて、ごめんね?」
二人がこんなに考えていてくれたのに、居心地のいい場所に甘えていたことを反省していると、カズイが右側からつんとおでこのあたりをつついてきた。
「ねーちゃんが気付いてないのなんかお見通しだっての。だからそんな落ち込むなよ」
「俺たち、そんなリコさんだから好きなんですよ」
もう片方から、マサくんが優しい目を向けてくれる。
「春まで待っててください。一番近くにいたいから、絶対に合格してみせます」
「マサはまぁ余裕だろうけど、俺だってやるときゃやるからな」
「うん
……頑張ってね。わたし、二人のこと待ってるよ」
それが正しいかどうかなんて誰にも分らないけど。
わかるときまではどうか一緒にいさせて欲しい。
「あ、その時はマサも一緒に住むことになってるから」
「えっ、そうなの?」
「ええ。二人でお互いの親に頼み込んである程度のお許しは得られました。
……だって、カズイだけ一緒に住むなんてズルいじゃないですか」
「それに、マサだって家族みたいなもんだしな」
二人がわたしの知らないところで色々準備してくれていたことを知って驚いたけど、
「でも
……それって、わたしがどっちかを選んだらどうなってたの?」
と意地悪な質問を投げかけると、お互い顔を見合わせて
「考えてなかったですね
……」
「ああ、ねーちゃんだしなぁ
……?」
と自信満々に断言されてしまった。
「
……ふたりにはホント、かなわないなぁ」
三人で過ごせることが嬉しくてわたしが泣きそうな顔で笑うと、二人も笑ってくれる。
これから先も、こうしてわたしたちは三人で時間を重ねていくのだ。
弟たち HAPPYEND
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