04
「マサくんの言っていたことを理解したい」
わたしはそう思いつつ、でも「意識して欲しいってどういうこと?」と聞くのはあまりに無神経がすぎると思ったのでなかなか連絡もできないまま日々を過ごしていた。
「リコ、なんか悩んでる? なんか調子上がらないって感じねぇ」
わたしの悩みに誰よりも早く気づいてくれたのは、こっちにきて趣味のつながりから友達になったユキねぇだった。
ひょんなことから仲良くなったモデルのクミちゃんと、それから美容師をしているユキねぇ。今日は3人でいつものようにスイーツの美味しいお店で趣味について語らう楽しいひと時のはずなのに、わたしの表情が暗かったらしくユキねぇは心配そうにわたしの顔を覗き込んでいた。
(うぅ
……優しい
……)
ふわりと甘い香りが近付き、ユキねぇがわたしの顔を覗き込む。
その優しさにわたしは胸がつかえたようになる。
「ちょっと、弟の友達といろいろあって
……」
「ふぅん
……それってあたしたちに話せる内容? もしそうなら、話すことで頭の中が整理できるかもよ」
わたしはマサくんに言われたこと、それからその話をしたときのカズイの様子を慎重にぽつぽつと話していく。
「マサくんは冗談を言うような子じゃないってわかってるんだけど、弟の親友ってずっと思ってたから、どうしたらいいかわからなくなっちゃって」
「ふぅん
……それで、弟くんは相談に乗ってくれなかったのね」
「そう。「マサのヤツ」って言ってたし、わたしのせいでカズイとマサくんが喧嘩してないかも心配になっちゃって
……」
ふぅ、とちいさく息を吐くと肩に力が入っていたのが自分でもわかるような気がした。
「リコの弟くんたちって一歳年下?」
「そう。だから今年受験で、こっちの方の大学を受ける予定みたい」
「そうなんだぁ。それじゃあ、受かったらまたご近所さんになれるんだね」
「うん。そうなると思う」
だから、答えが見つからないまま逃げるようなことはしたくないと思ってはいるけど、そこから先に思考が進まない。
「
……どうしたらいいのかなぁ」
「でも、そのマサくんって男の子はすごく頑張ったのね」
ユキねぇは感心するように呟き、「まさに若さね~」とうっとりしたように窓の外に目をやった。
「うんうん。小さい頃から知ってる友達のお姉ちゃんに“意識して”なんて言っても笑い飛ばされちゃうかもしれないもんね。すっっっごく勇気あると思う!」
クミちゃんも激しく同意するように首をぶんぶん縦に振り、いいなぁとうっとり目を細める。
「
……そういうものなの?」
「そうだよぉ、だってリコ、今まで全然そういうの気付かなかったんでしょ? ずーっと子ども扱いされて、恋愛対象外に置かれていたって思ったら
……すっごいコトだよ!」
「きっとマサくんも限界だったのね。1人の男として自分を意識してくれ、なんてなかなか言える事じゃないわ」
二人はそう言ってひとしきりマサくんを絶賛してから、わたしにまっすぐ目を向けた。
「弟の友達、っていうのはまず頭の中から追い出しちゃった方がいいよ、リコ。意識してっていうのはまずそう言うことだとボクは思う」
「そうそう。ライクかラブかっていう線引きはその後の話よね」
「でも、カズイの友達なのに
……?」
「ええ。もしマサくんに告白されたとしても、弟くんに反対されたから付き合えないって思うようなら、リコの気持ちはその程度ってコトになるわよね」
「そうそう、好きならどんな障害も乗り越えたいって思っちゃうだろうし」
「まずはまっすぐな気持ちをぶつけてくれたマサくんのこと、もう一度考えてみたらどうかしら?」
「そっか
……うん、頑張って考えてみる」
わたしは溶けてきた氷をかき混ぜて、冷たいアイスティーと一緒にモヤモヤしていた気持ちを飲み込んだ。
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