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ゆの
2024-07-13 16:43:51
57084文字
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あつむとあの子
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かけらの紡ぎ
あつむとあの子の本編連載 (サイト掲載:2023/08/19~2025/3/23完結)
隣の席の宮くんとゆっくり進む両片思いの話。サイト掲載済。
!名前変換しない場合はデフォ名が表示されます。
!夢主の設定が少し強めです。苦手な方はご注意ください。
4/4 17~21話(17~21ページ目)UP !完結
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授業中のしんとした気配から一転、教室の中がざわざわとして空気が緩んだのをふと感じていつの間にか授業もHRも終わっていたことに気が付いた。
全然気付かなかったのはたぶん、さっきのことをずっと考えていたから。頬を掠めた指のこと。もしも私がよけなかったら宮くんはどうしていたんだろう。その手がもしも私の頬に触れていたら。今さら聞けるはずのないもしもをずっと考えてたら授業が終わっていたらしい。うそやん、と思わず出そうになった声を抑えて横目で宮くんの様子を窺うと、そっぽを向くように向こうに視線をやったままだった。
それはそうか。けれどさっきはごめんと私から謝るのは何か違う気がするし、さっきのことをわざわざ蒸し返すのも違う気がして小さく息を吐く。もしかしてこれから先、このまま何となく気まずいような微妙なままなのかと思うと気が重い。それは嫌やなあ。せっかく話をするようになって、ちょっとずつ宮くんのことを知って、楽しくて嬉しかった。だからもっと知りたいと思った、自分でも気付かないくらい大きくなったこの気持ちは、たぶんそういうことだ。
それに気付いた瞬間重苦しい気持ちが大きくなっただけじゃなく、淋しいと悲しいも同時に大きくなる。もしこのまま話も出来なくなったらどうしよう。さっきまで考えていたもしもよりもずっと現実になりそうなことを考えて思わず眉間を寄せてしまった。
「
あかり
、どうしたん?」
「
……
え、あっ、なんも?!」
「ほんまに?すっごい顔しとるで」
大丈夫?とあやちゃんが心配そうな顔でそう声をかけてくれたのはきっとあの、先輩とのやりとりを見てたからだ。というかあれ、よく考えたらクラス中の子たちに見られてたんやなあと思うと複雑だ。さすがにその後のあれこれは見てないと思うけど
……
見られていないといいなと思う。今はあやちゃんに心配かけたくなくて大丈夫、帰ろ、とあやちゃんに声をかけて立ち上がった。
「テスト期間中も練習なん?」
「うん、今日からはさすがにちょっと早く終わるけど」
「頑張るなぁ、無理せんでよ」
「ありがとぉ」
きっと様子のおかしい私のことを気にしてくれてるだろうけど、何も言わないでくれるあやちゃんの優しさが今は嬉しい。触れられてしまったらきっと、気付いてしまったその気持ちを上手く形にできないでとりとめもないまま話してしまっていた。それは悪いことじゃないとは思うけれどもっと、ちゃんと自分の気持ちと向き合ってから聞いてほしいと思った。何より、勢いだけで話をして宮くんに対しての誤解が生まれてしまうのがいやだった。
練習頑張ってな、と逆方向に向かうあやちゃんと校門前で別れて外へ出る。外に出た瞬間に刺す陽射しはもうすっかり真夏のそれでまるであの最初、日に見た宮くんの髪色みたいにきらきらしていた。
あのきらきらにはもうお目にかかれないかもしれないなあ、隣の席に居るのにもうこれまでみたいに話すことも無いのかもしれない。そんなことを考えていたら目に刺さる陽がまぶしくて痛い。
それはいややなあ。もっと見ていたい。もっと宮くんのことを知りたい。けれど、もしかしたら自分の気持ちに気づいた瞬間にそれが全部終わってしまったのかもしれない。そう思って下を向いたら泣いてしまいそうだと思った。せめて浮かんだ涙が落ちないようにその痛いくらいのまぶしさをこらえながら上を向いて歩きだしたその時だった。
「
真嶋
!おい待てや!」
「
……
っ、宮くん?」
「おま、なんっ
……
いつの間に帰りよって!」
「えぇ、ごめんね
……
?」
やけにガラの悪い声で呼ばれたのと同時に後ろからぐい、と腕を掴まれた。衝撃で後ろによろけたままその方向に顔をやったら、息を切らした宮くんがごめんちゃうわ、と声を上げた。どうしたん?と聞いてみたけれど何も言わずに大きく息を吐く。もしかして怒ってるんかな。さっきの不安を思い出して思わず視線を落としてしまったら、眉をひそめた少し険しい顔をしてさっきの、と頼りなさげにぽつりとつぶやいた。
「さっきの?」
「もう、仲良くせんて」
「あ
……
」
「本気やないよな?」
「
……
え、っと」
「俺、
真嶋
のこともっと知りたい」
やから、仲良くせんとか言うなや。そう拗ねたように言った宮くんを思わず見上げると、少しだけ困ったような顔をして、真っすぐな視線を向けてきた。
おんなじこと、考えてたんだ。気持ちのかたちはきっと違うのかもしれないけれど、これからももっとたくさん私がまだ知らない宮くんを知ることができるかもしれない。そう思ったら、ずっと心にあった重苦しい気分がどこかへ行った。
私も、もっとちゃんと話したい。そう思ってじっと見つめていたら、何か言えやとやっと呆れたようにぼそりとこぼす。その様子がなんだか
――
言うとさすがに怒られそうやなと思うけど
――
かわいくて、思わず笑ってしまった。
練習行くんやろ、行くでと歩き出した宮くんがぶっきらぼうに、けれどさっきよりもずっと優しく掴んだままでいる腕のそこだけが何だか熱い気がする。それはまるで何かが動き出す予感のような気がした。
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