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ゆの
2024-07-13 16:43:51
57084文字
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あつむとあの子
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かけらの紡ぎ
あつむとあの子の本編連載 (サイト掲載:2023/08/19~2025/3/23完結)
隣の席の宮くんとゆっくり進む両片思いの話。サイト掲載済。
!名前変換しない場合はデフォ名が表示されます。
!夢主の設定が少し強めです。苦手な方はご注意ください。
4/4 17~21話(17~21ページ目)UP !完結
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聞き違いかもしれない。きっとそう。日に透けた髪があまりにもきれいで見惚れてしまってぼぅっとしていたから。そう思って口を開こうとしたけれど、それより先に宮くんがうそやろ、とこぼした。
「
……
ちょお待って
……
」
「うん、
……
えっ」
「なんで今やねんあほか
……
」
「えと、ごめん
……
?」
ちゃうわ、やってもうた、何やっとんねんと言いながら顔を覆って天を仰いだ。どうしよう。こうなった宮くんを見てしまってはもう聞き違いだなんて言い逃れもできないんじゃないだろうか。その証拠に覆われた顔の隙間から見える頬がうっすら赤い。そしてたぶん私も言い逃れはできなくなった。今それを聞いて、言ってしまわないときっともう永遠に心の中にしまわれたままになってしまう気がした。
「あの、聞き違いやったらごめんなんやけど
……
」
「
……
たぶんちゃうと思う」
「じゃあみやくんは、その、わたしのこと、」
「待って、もいっかいちゃんと言わして」
無粋なことを聞こうとした私の言葉を遮った宮くんは少し赤い顔で、それでも真っすぐな視線で真剣な顔ではっきりと
真嶋
が好きやと、そう言った。聞き間違いやなかった。みやくん、わたしのこと好きやったんや。いつからか同じだったんだなあと思うと嬉しい。そして、きっとずっと煮え切らない態度で申し訳なかったとも思う。もうちょっと早く自分の気持ちを素直に出せていたらよかった。だからこそ、こうして言ってくれたことに応えなければならないと、油断すると震えそうになる声を絞り出すように口をひらいた。
「
……
わたしも、宮くんが好き」
「おっそいねんて
……
」
絶対言わしたろておもってたのに、ぜんっぜん言わへんねんもんと言いながら肩にもたれ掛ってきた。その重みと熱を感じて思わず小さく悲鳴を上げる。支えきれなくて倒れそうになるのを逆の肩を抱いて支えてくれてさらにくっつく格好になった。意志をもって触れ合う身体の近さにめまいがしそうだ。待って、と抗議の声を上げたけれどその言葉は拾ってはもらえず楽しそうに肩口にもたれたままぐりぐりと頭を押し付けてくるから、少し痛んだその金色の髪が頬やら首やらあちこち触れて痛い。痛いはずなのにそんなことも知れたことが今は嬉しい。
「こうなったら絶対離さんからな」
「急に熱烈
……
!」
「当たり前やろ、こちとら半年たぶらかされてたんやぞ!」
「そんなことしてへんけど!」
しとったわ、散々じらしよって
……
と頭を肩に乗せたままこっちを向くから、あまりの近さにいよいよ耐え切れずどうにかその腕の中から逃げ出したら宮くんが何で逃げるん! と近寄ってくる。狭いベンチでの攻防はあっけなく端に追いやられてつかまえられて収束した。
「まってむり、急すぎる!」
「待たれへん!」
「あかん
……
そんな一気にキャパオーバーの限界超えてこないで
……
」
「なんやそれ」
おもろいけど慣れろやと笑いながらじりじりと近づいてくる宮くんをかわしてまるで小さい子のじゃれあいみたいにしていたら、エントランスの向こうが少しずつざわざわとして人気が増え始める。宮くんも気付いたのか、なに? と向こうを振り返る。ああ、もうそんな時間かと急に空気が現実に戻るような気がした。これが終わったら私も練習が始まる。
状況を理解したらしい宮くんが真嶋もこれから練習やんなと言って立ち上がる。そうやねとその背を追って立ち上がろうとしたら、振り返った宮くんが怪訝な顔をしてほんまにさぁ
……
と言いながらしゃがみこんだ。
「なんなん、急にそんな顔するん反則やろ
……
」
「え、そんなに変な顔しとった?」
「ちゃうわ〝宮くん帰っちゃうのさみしー〟て顔してんで」
「
……
は」
思ってもないことを言われて
——
いや確かにもう帰っちゃうのかとは思っていたけれど。私、そんなに分かりやすいん? 言わせたろって思ってたって宮くんは言ってたけどもしかしてずっといろいろ全部駄々洩れてたん? 色んなことが頭をよぎってたぶんさっきからずっと百面相をしている
——
きっとこういうところなんやと思う
——
私を見て笑いながらそういうところやでと笑っていた。正直あんまり知りたくない気がするけれど、宮くんには一体どんな私が映っていたんだろう。
顔を上げた宮くんが自覚無いんか、と言いながらくしゃりと頭を撫でたその手は今までで一番優しい。ああもうこれは、本気で腹をくくらなければならないと思った。
「
……
さみしいよ」
「急にデレるんやめえや」
「でも宮くんにとってバレーが大事なように私も、スケートも大事やから」
「せやな
……
でも」
いっこ訂正やけど、としゃがんだままの宮くんに手を取られた。俺やってバレーも、
真嶋
も大事やから。そう言いながら宮くんの手が撫でるように手の甲から指先の方に動いて、優しく握られる。ひどくやさしく触れられた手の感触に思考を持っていかれながらようやくその言葉の意味を理解して、今度こそ本当に心臓が破裂してしまうんじゃないかと思った。
色んなことがあった冬休みが終わった。色々ありすぎてまだちょっと夢かもしれないと思うことも無かったけれど、それが現実だと言わんばかりに宮くんの猛攻撃のようなアピールに少しずつ実感しているところだ。
いつも通りの朝練終わり、学校までの道のりを歩いていたら後ろに人の気配。そしてすっかり覚えてしまった体温が頭のてっぺんに触れる。顔を上げれば思った通り宮くんがおはよと言って隣に並んだ。
「おはよう、今日朝練ないんやね」
「体育館使えへんねん」
そうぼやいた宮くんに、行くわと言ってこちらにも視線を寄越して小さく会釈して少し早足で先に行った片割れくんを見送って私たちも歩き出した。気を使わせてしまったなと思ってその顔を見上げたら、俺が先行け言てうたから気にせんでええよと宮くんが言う。曰く、二人で歩きたいやんか、と。
元々はっきりとものを言う人だと思っていたけれど、それがこういう場面でも発揮されるんだと日々感じている。どう返そうか悩んでいたら嫌やったん? と拗ねた顔で聞いてくるからずるいと思う。
「
……
嫌な訳ないやん、嬉しいよ」
「またそうやって焦らすんやめぇや」
「そんなことしてへんですー」
「よお言うわ」
ほんまそういうとこやぞと言って宮くんが手を取って私の手ごと自分のコートのポケットにつっこんだ。握った手を、何かを確かめるように手のひらから指の先までなぞるように触れるからポケットの中だけまるで季節外れの暑さのようだ。その手から逃れようとしても無駄な抵抗と言わんばかりに離してはくれなかった。
宮くんこそそういうとこやん
……
という私のなけなしの反撃も、満足そうに笑った宮くんに受け流されてしまった。こういうところはたぶんきっとずっと敵わないんだろうなと思う。けれどそれがひどく心地いいと思ってしまうのはやっぱり宮くんが好きだから。
だからずっとずっと、いつまでもふたりこう在れたらいいなとそんなことを思った。
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