enoki181
2023-03-07 15:49:35
53569文字
Public リプレイ
 

【モノトーンミュージアム】霧晴れの空、輝く■【リプレイ】

前作→【モノトーンミュージアム】奇妙な国に潜む影 ~呪われし地と囚われの花婿~【リプレイ】 https://privatter.me/page/664995cb534e0
PL:成海さん、守部さん、柳さん、エノキ


■エンディングフェイズ

▼エンディングフェイズ PC3&PC4

ヒルダ:諸々の準備を済ませて屋敷に戻る。
一部の招待客たちは既に風の国に入国しており、それを捌いていたせいで想定以上の仕事量になった。

あの二人の故郷はもう存在しない。
だけども、ここに来てからこんなにも繋がりを作っている。

「喜ばしい急がしさだな」

結婚式というのはいつだって目出度いものだ。
領主たるもの住人には良い思い出を作って貰いたい。

クロ:ここ数日の準備や諸々の慌ただしさはすごかったけれど、楽しかった。
俺たちもだけれど、エメーリャもイワンも、当人たちはもっと大変だったろう。

「そうだね。でも青き風の国だからこそ、こうやって祝うことができるから俺はすごく楽しいよ」

幸せを掴み取ったのは彼らだけど、今みたいにたくさんの人に祝福されているのは、きっと青き風の国だからできたこと。
その土壌を作り上げたのはヒルダで、改めて彼女の作ったこの国に来れて良かったと思う。

「こういう祝いの席、あの国での花嫁騒動以来だよね」

ああいうのはこりごりだけど、と苦笑いを浮かべる。

それ以前はどうだったろう。旅してる途中はそういうのに無縁だったし、故郷に居た時以来だろうか。

ヒルダ:「はは、懐かしいな」

あの時は中々骨が折れた。
いや、それからも骨が折れるようなことはぼちぼちあったが。
「だがまあ祝い事というのは続くからな。次は煉瓦の国だ。招待も受けている」

しばらく裁縫師連中とは顔を合わせる機会が多いだろう。

ヒルダ:「……お前と会ってからそれくらい経ってるってことだな」

クロ:「あはは、もうそんなにかぁ。月日が経つのって早いね」

ああでも、そんなにか。

なにか物音がしてもすぐ起きなくなった。
俺のことを知ってる人が、ずいぶんたくさん増えた。
ただいまという声に返事がもらえるようになった。

もう十分幸せななんだろうけど、もうちょっとくらいはいいだろうか。

……ヒルダ、あれから考えたんだけれど。これから俺たちのこと」

ヒルダ:「ああ、聞こうか」

クロ:「俺さ、青き風の国に連れてきてもらって、帰る場所ができて、すごく幸せなんだ。でもこの国にいるなら、もっと幸せを追い求めてもいいのかなとも思って」

「だから、ヒルダが俺と一緒に居て、それが幸せだって思ってくれるなら。どうか、受け取ってほしい」

少し前に行った街で見つけた、対になるように作られた指輪を取り出す。
贈れるわけがないのだから止めておこうと思って、けれど忘れられずに買ってきて、そのまましまいこんでたものだった。

「別にヒルダのことを自分のところに留めておきたいとか、型にはめ込むとか、そういうのじゃないけれど……。なんていうのかな、隣に居させてほしいっていうのかな……

……上手く言えない。
もしかしたら、いつか俺だけが帰ってこれなくなるかもしれないけれど、せめてその時までは傍にいる権利と、その証が欲しかった。
ただそれだけのわがままだ。

ヒルダ:言い淀んでいるクロを前にして一度ため息をついて、それから笑う。

「今更言葉を選ばなくても分かっている」

そしてそれを嬉しいと思う私がいる。
故にこのまま受け取っても良かった。

「だがそうだな、それを受け取るのに一つだけ条件がある」

執務机に置いてあるカッティングナイフを手に持つ。
それをクロの首元にあてがい……

「私の隣にいると決めたんだ。終わりの首枷(こんなもの)は没収させて貰うぞ」

それを手に持ち、笑ってやった。

クロ:ヒルダの手元に握られた終わりの首枷を見て、瞬きひとつ。

これを付けたのは、確か国を出て間もない頃だったか。
ただでさえ幸福から外れてしまったのだから、これ以上外れてしまわないようにと思って。

……いや、違うな。
怖かったんだ。

いつか父のように、親友のように、大切なものを傷つけてしまうかもしれないことが。それがとてつもなく怖かった。

だから大切なものは遠くから見ていた。
それで良いと思ってた。

けれど青き風の国で、大切なものの傍にいることがとても嬉しくて。
この幸福を手放したくなくなってしまった。
それに、ヒルダは信じてくれてるんだ。
『こんなものがなくても、お前は大丈夫だ』って。

……ありがとう、ヒルダ」

そう返して笑ったつもりだけれど、頬が濡れる感触がする。

あれ、おかしいな。
こんなはずじゃなかったのだけれど。

ヒルダ:「ははっ。全く、大げさだぞ」

酷い顔をして帰ってきた時だってずっと平気なフリをしていたくせにな。

「さて、邪魔なものはなくなった。お前の気持ちは有難く受け取らせて貰おうか」

こういう時は手に嵌めて貰った方が良いのか。
あまり性に合わないが……仕方ない。
片手をその前に差し出す。

クロ:「うん」

ヒルダの左手を取り、薬指に指輪を通した。
青い宝石には星明りが綺麗に映っている。
……やっぱりこの青色、ヒルダに似合って綺麗だ。諦めなくてよかった。

……ありがとう、ヒルダ。愛してるよ」

感謝の言葉も、愛の言葉も、何度伝えたって、伝えきれないんじゃないだろうか。
もしかしたら一生かかっても難しいかも。

ヒルダは大げさだって笑っているけれど、それくらい大切なものをたくさん貰ったんだ。

帰る場所がここにあって。
みんなが幸福を掴むためのこの国を守ることができて。
自分の幸福も諦めないでいていいと、そう教えてくれた君が隣にいて。

……本当に幸せ者だなぁ。

ヒルダ:「ああ、私も……

次の言葉を少し言い淀む。
だけども伝えるべきだろう。

「愛してる」
……ああ、やっぱり恥ずかしさが来てしまうな。
全く格好がつかない。
こんな姿見せるのはお前だけだからな、クロ。

ヒルダ:「……明日も早い、そろそろ寝よう」

クロ:……あ、照れてる。
愛してるの言葉も嬉しいけれど、こういう顔を見せてくれるのが俺だけっていうのは、なんだかくすぐったい気持ちになる。
あんまり独占欲とかはない方だけど。

「そうだね、明日は大事な二人の晴れ舞台だ。体調崩したら洒落にならないし」

そう言って部屋から出ようとしたけれど……
せっかくだからと、赤くなってるヒルダの頬を手にして、そっと口付けて笑った。

「じゃあおやすみ、いい夢を」

いつもの調子で軽く手を振って、部屋に戻るよ。

シーンエンド