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ななき
2024-04-14 01:18:50
10701文字
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吸死
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紫煙で測る距離
(ドラロナ)煙草と距離がテーマの短編、連作。
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〇.約八十km(運命のドアバンまで一週間)
ポケットの中の紙箱を取り出しながら、小さなバルコニーに出る。ジャージだけでは心もとない気温だが、どうでもいい。
こういう日がたまにある。俺の城であるはずの事務所も、俺の住処であるはずの居住スペースも、余所余所しくて居心地が悪くてしかたない日が。風の当たるバルコニーの方がよほど自分の居場所に思える日が。
紙箱から抜き出した煙草に火をつけて吸い込めば、苦さが広がるのと同時、ほんの少し頭の奥が楽になる。気のせいかもしれなくとも、嫌いな感覚ではない。
煙草を初めて吸ったのは独立してすぐだ。
来客のない夜に、もしくは退治の合間に、どうしても手持ち無沙汰な時間ができる。心細さを連れてくるその隙間を、煙草が丁度埋めてくれた。それ以来、程良く麻酔してくれる煙に、こうしてお世話になっている。
流れていく白い煙をぼんやりと目で追いかける。この時間だけは、ぼんやりしてもいいと決めているのだ。
今日の仕事は上手くできていただろうか。兄貴なら、いや、レッドバレットなら、どうだっただろうか。もっと上手く、依頼人を不安にしないように、颯爽とできなくては。
……
退治人は俺の夢で、兄貴は目標で、追い付くことが使命であり贖罪だ。それなのに、目標が遠すぎてたまに自分というものがどこにあるのかわからなくなる。そんな不定形の不安も、もう一度苦い香りを吸い込んで麻酔する。
冷えてきた。体を隠すように腕をさする。まだ中に入る気にはなれない。息を吸うと灯る橙だけが暖かだ。
煙は暗い空に溶けていく。
兄貴も師匠達も煙草は吸わない。
つまりこれは間違いなく俺が選んだ事で、俺にもなにかを選べるのだという証明。これは。これだけは。
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