asa_nohi
2023-12-23 16:04:12
19198文字
Public カルジュナ
 

アドカレワーパレまとめ1

お借りしていたワードパレットを使ってのアドベントカレンダーかるじゅ纏めその1
11/27〜12/6までの10編


12/4 運命の出会いの第一歩
キャロル「楽しく/気分/どこから」
現パロ。颯爽と助けに来るナさん

社交の場であることを免罪符に接近を試み、あわよくば、その後の日常に入り込もうと、躍起になる者が一定数いるらしい。そうした声をかけてくる不届きものに、アルジュナはそれなりの頻度で出くわしている。
最初、少し離れた席に座っていたにもかかわらず、急に隣にやって来たかと思えば、そのまま居座り馴れ馴れしく話しかけてきた、いい身なりに反して品のない男もまた、そうした類の人だった。
気を引こうとする明確な意思のある男は、ニタニタとしながら自分の経歴や、仕事のこと、肩書について語り始めた。その言を信じるのなら、今はどうやらどこかの重役に就いているらしいが、ちっとも興味をそそられない。
こうした輩には、その都度何となく応じつつ、アルジュナと彼らとの間に明確な壁があることを認識させて、何とか撃退しているのだが、どうやら今日出会った男は、それが通じない類の者だったらしい。
今までも、そうして他人の気を引いてきたのだろう方法で、アルジュナの気も引けると信じて疑っていない。そのせいなのか、アルジュナが男の話とはテンポが合わない、妙なところで相槌を打っていることにも気が付かず、上機嫌で自分のことを語りだして止まらない。
アルジュナはこっそりとため息を吐いた。
一人でゆっくりと日常を癒しに来ているのを邪魔されている。それが、どうにも嫌で仕方がなかった。楽しくもなければ興味もない話など、本当に雑音と相違ない……それを言えば、きっと周りを巻き込んでの迷惑事に発展するだろうから、口にすることは決して叶わないけれど。
ああ、さて、この男をどうやって諦めさせたものか……
営業スマイルを貼り付けたまま、相変わらず会話とは少しずれたテンポで相槌を打ち、そんなことを考える。
「失礼する」と声がかかったのは、ちょうどそのときだった。
「これはオレの連れだが、何か用事があるのか?」
「は?」
「え?」
熱を帯びる男のどうでもいい話の途中、ふと、耳に心地よい音が割り込んだ。唐突に話の腰を折られた男が不機嫌そうな声を出し、見知らぬ声の告げる身に覚えのない言い分に、アルジュナも思わず目を丸くして、驚きの声を上げながら、同時に声のした方を振り返る。
テレビでイケメンと持て囃される有名人も斯くやというほど、整った見目をした見知らぬ若い男が一人、隣の男の肩に手を乗せて立っていた。
「なんだ、あんたは」
男が相変わらず不服そうな声で言った。
けれども、二人の背後に立った白皙の彼は、それを聞こえていなかったように受け流すと、その特徴的な切れ長の薄青の目を、スッと細めて言った。
「聞こえなかったか? この男はオレの連れだと言ったのだが。気分よく自分を売り込んでいたようだが、よもや、手を出すつもりではあるまいな?」
「! ……ああ、いや……その、ハハハ……
肩を掴む手の力を強めたらしい。ぎゅ、と、黒の革手袋が鳴り、その下で男のスーツに皴が寄った。射殺さんばかりの視線に射抜かれた男は、一気に酔いが醒めた様子で、顔を真っ青にして乾いた笑い声を立てると、慌てて「マスター、会計を」と申し出て、そそくさとその場を後にして行った。

「あの、ありがとうございました」
どこからか現れた救世主の男に向け、アルジュナはスツールから立ち上がり、頭を下げた。すると彼は、ふっと小さく口の端を持ち上げた。
「礼には及ばんよ」
言うと彼は、アルジュナの左隣のスツールに腰掛けた。そのまま流れるように、マスターにアイ・オープナーを注文した辺り、このままここで飲むつもりなのだろう。どうにも、今日は一人の時間が阻害されてしまうらしい。そのことは少しばかり残念だけれども、それでも、この人が隣に座る分には、それでもいいような気がする。
そう思ったアルジュナは、再びスツールに腰掛け直してから、隣に話しかけた。
「あなたのお名前は?」
グラスを持ち上げる手を止めた男が、薄青をアルジュナに向け、先程と同じように口の端を持ち上げ、言った。
「カルナという。おまえは?」
「アルジュナ、と申します」
「アルジュナか、いい名だな。……今後とも、よろしく頼む」
「え……あ、ええ。こちらこそ、よろしくお願いします」
言うとカルナはグラスを少しだけ持ち上げた。多分、乾杯のつもりらしい。呆けて一拍遅れてしまったが、アルジュナもまた、残り少なくなったスクリュー・ドライバーの入ったグラスを持ち上げた。
少し震える手でグラスを空けたアルジュナの中で、ドキドキと心臓が早鐘を打っていた。けれど、それが酒精のせいなのか、それとも別な理由なのか、最早判別はつかなかった。