asa_nohi
2023-12-23 16:04:12
19198文字
Public カルジュナ
 

アドカレワーパレまとめ1

お借りしていたワードパレットを使ってのアドベントカレンダーかるじゅ纏めその1
11/27〜12/6までの10編


11/28 外さない理由はそんなこと
ベル「小さな/音/知らせ」
デア時空、夜這いと魔力感知してなる鈴

夜も更けてきた頃だった。部屋の外で、リリン、と涼やかな音が鳴った。数日前、忙しない日々を過ごしているはずのマスターが、「今年はこんなもの作ってみました!」と、意気揚々と持ち込んだ、セイヨウヒイラギの造花で作られたリースのてっぺんに飾られている、小さなベルが立てた音だ。
さほど大きくはないながらも、室外で響いたその音をしっかりと聞き留めたアルジュナは、寝台に横たえていた身体を起こした。
あの音が鳴った時は、日中帯であれば苦言を呈する元となる、空間の揺らぎが生じているが常だった。今は一先ず不法侵入は不問にするとしても、揺らぎ自体はどこかにあるはずだ。そう思い、暗闇の中、部屋中をゆっくりと視線でなぞってそれを探す。
けれども視線は、予想に反して何も捉えることなく、ぐるりと部屋を一周した。どこかにあると思っていた空間の揺らぎがない……ということは、どうやら、犯人は部屋の中にまでは入ってこなかったらしい……とは言っても、ただ入ってきていないだけで、気配はまだ薄壁一枚隔てた向こう側にある。リリン、と再び鳴ったベルがそのことを知らせてくれたから、間違いない。
……観念して入ってきたらどうだ、カルナ」
アルジュナはサイドテーブルのランプを点けながら、扉の向こう側に声をかけた。すると、リリン、と三度鳴った小さな音とともに、扉の前が小さく揺らいだ。気配の主、基、カルナが部屋に入ってきたからだ。
彼はぶわりと熱を放ちながらその姿を現わすと、顔をしかめて言った。
……アルジュナよ。夜ぐらい、あの飾りを外さないか」
「断る」
あの飾り、とは、もちろんリースのことだ。マスター手製の、ごくごくありふれた可愛らしいあの装飾だが、実は、ここにしかないちょっと特殊な仕様になっている。魔力を感知すると、飾りのベルが音を鳴らすのだ。先程から扉の向こうで音が鳴っていたのは、感知圏内にカルナが入り込んでいたためだった。
きっとマスターの遊び心に、ダ・ヴィンチが便乗して作ったのだろうこの仕掛けは、場所によっては、並んだベルたちがクリスマスソングを奏で、聴覚的にも気分を盛り上げる一助になっている。もちろん、これが正しい使われ方だ。
けれども、どの場所からも遠く、単一の音しか鳴ることのないアルジュナの部屋では、はからずもカルナの不法侵入対策になっている。
なにせあの賜りものは、アルジュナが気づくよりも、もっと言うのなら、部屋に入り込まれるよりも早く、カルナの魔力を感知して知らせてくれる。魔力を拾う範囲こそさほど広くはないが、それでも、さすが天才技術者であるダ・ヴィンチの発明がとにかくありがたい……だって、あれがあるおかげで、度々深夜に訪ねてくるカルナが取る、アルジュナが起きるまで一切声もかけずに様子を観察する、という奇行を妨害できるのだ。
熱の籠った視線が黙って己を見つめたまま、何もせずに寝覚めを待っているというのは、真夜中にやってくる目的を知っていても気味が悪い。
だから、その存在を事前に知らせてくれるものを頼りにしない手はない、というわけだった。
「あれをつけておけば、おまえの奇行を抑止できるからな。外すわけにはいかない」
ふふん、と少し勝ち誇ったようにアルジュナが言う。すると、カルナはムッとした表情のまま寝台に近づき、乗り上げると、こつんと互いの額を合わせた。
「凝視したところで減るものでもあるまいに、なぜ阻もうとする」
「減る減らないとかいう問題じゃない。それが嫌だから、対策するためにつけている」
「その対策とやらが仇となり、逢瀬が周囲に知れても知らんぞ」
「あの程度の音がそう遠くまで届くものか。それに、逢瀬などと言うが、マイペースに夜這いを行っているのは誰だろうな?」
……ぬ」
じっと目を覗きこみながら、内緒話でもするように、こっそり伝えられるカルナの言い分に、とことん反論してみる。分は完全にアルジュナにあるらしい。カルナは無意味な一音を零した後、珍しく眉を寄せて黙り込んでしまった。痛いところをつかれてぐうの音も出ない、そんな様子だ。そうお目にかかることのない表情が、なぜかなぜだか面白い。アルジュナは、くすくすと小さく肩を揺らして笑うと、カルナの眉間の皴がますます深くなった。
これ以上煽る真似をするのは、さすがに危ない。きちんと理由を言ってやらねばなるまいか。……できることなら、口にするのは恥ずかしいので、自発的に気付いてもらえるとありがたかったのだが。
不機嫌そうな視線にそう感じたアルジュナは、カルナの唇に触れるだけの口付けをすると、吐き出す息に乗せるようにしてこっそりと言った。
「おまえの奇行を抑止しておかないと、私が楽しめない。……警戒心を煽られてから求められても、その気になれないから」