asa_nohi
2023-12-23 16:04:12
19198文字
Public カルジュナ
 

アドカレワーパレまとめ1

お借りしていたワードパレットを使ってのアドベントカレンダーかるじゅ纏めその1
11/27〜12/6までの10編


12/3 とっておきの回復アイテム
シェリー酒「ミンスパイ/種類/サンタのため」
剣弓 差し入れの話

「カルナさーん、ちょっと休憩しようー」
ジャブ、アッパーと技のキレを確認しながら、シャドウサーヴァント相手に打ち込みをしている最中だった。後方で眺めていたマスターが、そう声をかけてきた。呼びかけに応じて振り返ってみると、真っ白なタオルを手にしたマスターが、こちらに向かって手を振っている。カルナは打ち込みをやめ、ふむ、と息を吐いた。
「すまん、マスター。オレはまたおまえを顧みていなかった。疲れたか」
マスターの日々は忙しい。種火を集めに剛腕たちの住まう森に入り、様々な場所にいるアマゾネスやラミアと連戦しながらピースを集め、これまで立ち入った地域に飛んでは、必要な素材を集めるのが、彼女の日常だ。多忙を極めるその合間を縫って、トレーニングやロードワークに付き合ってもらっているのだが、練習に熱が入ると、そちらに気を回すことがどうにも疎かになってしまう。現に今も、マスターのことをすっかりと忘れていた。
そのことを謝罪し、尋ねてみると、マスターは「違う違う」と、困ったように笑って言い、続けた。
「私は別に疲れてはないんだけど、カルナさん、さっきからずっと打ち込み続けているでしょ? そろそろ一旦身体を休めないと」
「その心配なら不要だ。オレも特に疲れているわけでは――
「だーめ! これはマスター命令です!」
……ぬ」
休みを勧めるマスターに答えて言おうとすると、彼女はみなまで聞く前に、ホイッスルの鋭い音を響かせて、令呪を見せてそう言った。
手の甲に刻まれたそれの区画は減っていないが、これは「言うことを聞かないのなら令呪を切ってでも休ませる」という意思表示にほかならない。大人しく従うしかなさそうだ。
そう悟ったカルナは、大人しくサンドバッグから離れ、マスターの隣に戻って腰掛けた。よしよし、とマスターが頷いた。
「休憩してる場合じゃないって思ってるかもしれないけど、これもトレーニングのうちだよ。ここで怪我して、満足に練習できなくて、本番も万全な調子じゃありませんでした、とか笑えないでしょ?」
……ああ。そうだな……それは確かにそうだ」
タオルや飲み物を手渡しながらマスターが言う。聞いたカルナは大きく頷いた。不完全な状態でタイトルマッチに臨み、敗北するなど、あってはならないことだ……だって、次にお茶をするときには、必ず優勝報告をする、とアルジュナに宣言したのだ。その約束を守り、己の武を証明するためにも、万全な状態は保っておかねばならない。
「おまえの言う通りだ、マスター。一度、インターバルをおく」
「分かってもらえたならよし!」
カルナが言うと、マスターはにっかと明るく笑って令呪を下げると、手元のストップウォッチをセットした。覗いてみたそれによると、どうやら休憩時間は十分ほどのようだ。明けたら次は、確実に相手の急所にカウンターを叩き込む、そのための練習をするか……
「あ、そうだ。アルジュナから差し入れを預かってきたよ」
頭の中で練習メニューの組み立て直しを図る。その最中、ふと思い出したように言ったマスターは、どこからか小さな袋を取り出した。中にはクッキーやビスコッティなど、様々な種類の菓子が入っている。
カルナは「ほう」と零した。
「エネルギー補給をしろ、ということか。だが、」
「うん。厨房のみんなに教えてもらいながら作ったって言ってたよ」
……なんと」
その情報は早く言ってくれないか。
袋の中身を眺めていたカルナは、短い返事に続けてそう思う。ウェイト管理は重要ゆえに、いくら補給のためとはいえ、これは辞退しようかと思っていたのに、思わぬ差し入れの正体が、まさかアルジュナの手作りときた。それが分かってしまったら、どうしてこれを辞退できようか。
「そうか……そうだったか。あれにはあとで礼を言いにいかねばならんな」
言いながら、カルナは袋を開け、中から菓子をひとつ取り出した。初めて見る一口大の菓子が出てきた。すぐさま情報をくれた聖杯曰く、ミンスパイというらしいそれは、子供たちがシェリー酒やブランデーなどと一緒に、サンタのために供える菓子であるらしい。今のカルナが贈られるには、ちょうどいい菓子だ。
一口齧ってみると、香辛料の香りとともに、中に詰められたフィリングの甘酸っぱい味が広がる。少し甘いが、その甘さのおかげか、腹の底から活力が湧いてくる。
「すごいな。すごいぞ、これは。美味いだけではなく、即座に体力の回復を促すとは。……よし。マスター、次のメニューに移る。仮想敵の用意を頼む」
設定された休憩時間はまだ残っていたが、それが終わるのなど到底待っていられない。カルナはマスターにそう言いおくと、情報上のリングへ上がった。今なら百体でも千体でも、連続で組手ができる。そんな気分だった。

普通の、何の変哲もないミンスパイなのに、アルジュナが作ったというだけで、カルナだけのチートアイテム化するのだから、不思議で面白い。
そんな感想を抱き、カルナに苦笑いを向けたマスターは、「はいはい」と答えながら、仮想敵の準備を始めるのだった。