asa_nohi
2023-12-23 16:04:12
19198文字
Public カルジュナ
 

アドカレワーパレまとめ1

お借りしていたワードパレットを使ってのアドベントカレンダーかるじゅ纏めその1
11/27〜12/6までの10編


12/2 夢見の守り手の願い事
くるみ割り人形「おもちゃ/こんぺいとう/物語」
ぬいナさん×ショタジュナくん 強いて挙げるならかる→じゅ

自由に動くことができたら何をする。
それは、人間たちがその日の天気や予定を話すのと同じように、おもちゃたちの間でなされるお馴染みの問いかけだった。
持ち主であるアルジュナがすっかりと寝静まった夜半に、カルナにその話を振ったのは、共に今日の夢見の番を任された、黒猫のぬいぐるみだった。
不思議と耳の中が明るい水色をしたその猫は、くるりと愛らしいまあるい目をカルナに向け、続けた。
「私は、屋根の上で一緒に日向ぼっこがしたい。もちろん、ベッドの上で一緒にお昼寝するのも気持ちがいいのですが、心地よい風に吹かれ、暖かいお日様の光を浴びながらするそれは、きっと気持ちがいいと思いませんか」
彼はそう言うと、ちょこんと首を傾げて見せた。カルナは少し考えてから「そうだな」と返した。
「それはさぞ気持ちが良いことだろうよ。……転げ落ちてしまわないか心配だがな」
「夢物語に現実的なツッコミをする、というのは野暮ですよ」
……ぬ。そういうものか」
「そういうものです」
カルナの指摘に黒猫はそう言うと、なっなっ、と小さく鳴いて笑った。カルナは棒のような腕でバツ印を作ると――人間のするところの、腕組みをしているつもりだ――、全身を傾けて疑問を現した。野暮。そうなのだろうか。
その様子を見た黒猫は、フフン、と小さく鼻を鳴らすと、「ところで、」と話しかけた。
「あなたはどうなのです。もし自由に動けたとしたら、アルジュナとしたいこととか、してあげたいことはありますか?」
「オレか。…………そうだな」
尋ねられたカルナは、相変わらずバツ印を作ったままそう答えると、体をアルジュナの方へ向けた。
自由に動き回れたとして、この小さいなりではできない、けれども、してみたいと思うことは、叶えられないわけではない。他のおもちゃたちと違い、アルジュナが見る夢に入り込めるカルナは、その夢の中でだけは完全な人の姿を取ることができるからだ。
棒のような手足も人間のそれと同じになり、背丈もずっと大きな成人の姿になれる夢の中なら、このぬいぐるみの姿でしたいと思うことはなんだって叶う。
アルジュナがいつもしてくれるように、彼を抱き上げることも、腕の中に収めることもできる。
もっともっと突っ込んで言うなら、こんぺいとうの飾りが付いた指輪を渡して、どれほど強く焦がれているのか、その想いを伝えることも叶えられよう。
……もっとも、カルナは無魔の類ではないから、悪夢を見たアルジュナが助けを求めるか、彼が招いてくれない限り、その夢の中へ自由に入り込むことはできない。そのため、叶わない夢物語であるのは、黒猫のそれと同じなのだけれど。
……そうだな。おまえと同じで、日光浴がいい。あれは本当に気持ちがいいからな」
「おや」
本当のところは言わずに、適当な返事をする。すると、黒猫は宵闇を切りとったような目をきらりと光らせ、それをちょっとだけ見開くと――本当にそうしたかは分からないが、そんなような気がする――「本当ですか?」と笑った。もしかすると、隠した部分に気がついているのかもしれない。そう思われたけれども、カルナとて、そう易々と本当のところを誰かに明かすつもりはない。
だから、少し疑わしげな目を向けてくる黒猫に、カルナは再び適当に「ああ」と返した。
それで何も言う気がないのがわかったらしい。黒猫は退屈そうに欠伸をして、「そうですか」と言うと、アルジュナの傍におすましをして座ったきり、何も言わなくなった。
大人しく座る黒猫とは反対側で、ぴんと手足を伸ばしたカルナは、再びアルジュナを見つめた。くぅ、すぅ、と規則正しく穏やかな寝息が聞こえる。それを思うに、今日の夢見は良好らしい。
一体どんな夢を見ているのだろう。穏やかで暖かなものならば、その場に招いて、手を取る機会を与えて貰えると嬉しいのだが。
そんなことを思いながら、カルナはすやすやと眠るアルジュナの傍に控え、朝が来るのを待った。