ツキシキ
2023-07-01 22:36:39
32841文字
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★男女カプ二次創作まとめ

暗殺教室¦WIXOSS¦未来日記¦デュラララ!!¦ボカロ¦ネウロ¦フォーチュンクエスト¦ハピツリ擬人化



綺麗な彼女、汚い自分(HTF)


・ハッピーツリーフレンズ擬人化
・ハンディ×ペチュニア
・暗い
____________




 ペチュニアさんは綺麗だ。
 それは美人、という意味もあるし、清潔、という意味もある。
 ペチュニアさんは綺麗好きだ。
 だから、綺麗じゃない俺は嫌われても仕方がないかな、とも思う。



 ペチュニアさんは時々、俺の仕事場に顔を出す。きちんと仕事の邪魔にならないように時間を見計らって来てくれて、そういう細やかなところはすごく女性らしい。仕事柄、周りの人は皆けっこう雑というか、大ざっぱだから、ペチュニアさんの態度は新鮮だ。戸惑う時もあるけど、嫌じゃない。むしろありがたい。
 昼休み。綺麗な青髪をなびかせて、手を振りながら近づいてくるペチュニアさん。これはもう、見慣れた光景になっていた。

 でも、不思議なことに彼女は俺を見るなり血相を変えて、大慌てでポケットを探り始める。

「駄目じゃない!ほらこっち向いて」

 何故だか叱咤された。とりあえず言われるがままに向くと、真っ白なハンカチが押しつけられる。ぶふ、なんてカッコ悪い声を上げて目をつぶっても、彼女はお構いなしで腕を動かす。遠慮が無い。だんだん擦られる皮膚が熱を増すのがわかる。

「すいませんペチュニアさん、ちょっと、い、痛いっす」
「我慢して!」

 提言するも、あえなく敗退。本気だ。鼻が潰されそうなくらいの勢いだ。もしかして俺は顔面の皮膚を擦りとられるんじゃないだろうか。

「ふう、もう大丈夫よ」

 彼女が満足した頃には、顔面のひりひりとした痛みがとれなくなっていた。多分、真っ赤になっているであろう俺の顔を見て、ようやく彼女は驚いた表情をとる。

「ちょっとやりすぎたかしら。ごめんなさい、私、つい夢中になっちゃったわ」
「そ、そんなことないんで……。気ぃ使ってくれてありがとうございます。」

 どうやら顔に汚れがついていただけだとわかって安心した。例の軍人さんみたいに、急にキレたらどうしようかと思った。まあ、彼女に限っておかしくなるなんてことはないだろうけど。



 ペチュニアさんには潔癖症のきらいがあって、汚れているものや整っていないものを見ると過呼吸になってしまう。だから、彼女と会う時は俺もそれなりに身だしなみを確認してはいるのだけど、それも彼女にとっては甘すぎるらしい。
 こういう急な行動はちょっと冷や汗ものではあるけど、ペチュニアさんの好意は感じられるから、多少過激なことだって笑顔で許せる。やっぱ、見てもらえるのって嬉しいし。
 そもそも、大工自体が汚れてなんぼの職業なわけだから、汗だらけ木くずまみれになるのは当然のことだ。そう考えると、いつ過呼吸が発症してもおかしくない状況で俺にわざわざ会いに来てくれるのは、実はものすごいことなのかもしれない。

「そうそう、差し入れ持ってきたの!」

 一息ついたペチュニアさんが、じゃじゃーん、と効果音を口で言ってバスケットを取り出す。思いがけず、サプライズ。これはもしかして愛妻弁当ってやつだと考えても良いんだろうか。結婚はまだしてないけど、いずれはプロポーズしたいな、なんて思う俺はきっと馬鹿だ。

「良いんすか!? ありがとうございます!」

 すっかり感動して礼をすると、ペチュニアさんは顔の前で手を振ってはにかむ。

「そんな大層なものは作ってないのよ」
「いや、ペチュニアさんからもらえる物は何でも嬉しいんで!」
「えっ……

 言うと、ペチュニアさんは目を丸くした。目おっきいなあ。澄んだブルーの瞳が綺麗だ。目が離せなくなる。
 と、思った矢先、彼女はそっぽを向いてしまった。

「もう、そんなに見ないで。照れるじゃない」

 ああ、可愛いなあ。
 俺はもうなんだかたまらなくなって、彼女を抱きしめたくって仕方が無かった。愛しい、とか言うと照れ臭いけど、つまりはそういうことだ。

 抱きしめたい。できないけど。せめて、触れたいな。
 “普通”とは違う途切れた腕を彼女の方へ伸ばす。抱きしめる、真似事。
 ペチュニアさんが、黙った俺を探るように見つめる。そして、俺が触れようとしていることに気づく、と。

「っ、いや!!」




 彼女は叫び、弾けるように後ずさった。顔がさっと青ざめて、さっきまでの笑顔は瞬時に怯えに変わる。
 ……やってしまった。
 どうしてか、俺はその反応をとても冷静に眺めていた。拒絶されたことを悲しむ、でもなく。理不尽に怒る、でもなく。淡々と、冷静に。なんとなくこうなると予感はしていたから。
 ペチュニアさんの表情が歪む。後悔と、怯えと、自責と、読みとれるのはそのくらい。ああ、さっきまでの幸せはどこにいったんだろう。触れたいなんて思わなければ良かった。

「違う、違うの! あの、包帯がね、汚れてるから……
「大丈夫。全部わかってるんで」

 理由もなく人を拒絶するペチュニアさんじゃない。よく見ると俺の腕の包帯は確かに汚れていて、彼女が嫌がるのも当然だった。けれど、俺はそれ以上の何か大きな隔たりを感じていた。
 俺が微笑むと、逆にペチュニアさんはいっそう泣き出しそうな表情になる。お互い何も言えなくなって、息がつまりそうな沈黙が漂う。すう、と深呼吸する音がして、俺はそれがおしまいの合図だと薄々感づいてしまった。

「ごめんなさい」
「何が?」
「ハンディは、私と離れた方が良いよ」
「それは俺が汚れてるから?」
「違うわ。私が汚いから。あなたを汚いと思ってしまった、私が汚いからよ」

 ペチュニアさんは吐き出すように言うと、堪え切れず涙を零した。あんなに綺麗好きな彼女が、自分を汚いと言いきるのにはどれだけの勇気がいるだろう。俺はそうさせてしまった自分が嫌でたまらなかった。

「ペチュニアさんはとても綺麗で、汚いのは俺の方だから」

 呟くと、ひどく寒々しく響いた。彼女の嗚咽が耳を打つ。

「駄目……。これじゃいけないの。本当は、私が一番汚いのよ。ごめんなさい」

 その“汚い”が何を指すのか、思い当たるところは全く無くて、でも言わんとするところは多く伝わってきて、俺はもうどうしたらいいのかわからなかった。

 ただわかるのは、少しだけ。

 “普通”と比べて俺はとても汚いということ。
 彼女は泣いていても綺麗だということ。

 たった二つが俺の真実だった。





~END~