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サブさぶれ
2026-05-09 17:43:58
20837文字
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ワンドロワンライ
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ワンドロワンライまとめ
sgaoワンドロワンライのお題で書いた作品まとめです。
覚えているものはタイトルと一緒にお題とかかった時間も記録しておきます。
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かわいいひと
お題「ヘアケア」「相合傘」
ハイドロポンプを頭からぶっかけられたらきっとこんな風になるんだろう。スグリは現実逃避気味にそう考えた。濡れた額を腕で拭いパラソル越しに雨雲を睨めつける。
——
せっかくヒウンシティまで来たのに。天気予報が外れるのなんて今日じゃなくってもよかったのに!
わかくちゃになりながら一緒に避難してきた隣人もきっと嫌な気持ちになってるはずだ。行き場のない苛立ちを分かち合おうと、同じくびしょ濡れになったアオイを窺い見た。
「もー、すっごい雨だね! 近くにカイオーガ来てたりして!」
視線に気付いたアオイがこちらを振り向く。口をキュッと尖らせてる割に瞳は爛々と輝いている。不意打ちの土砂降りを喰らったのに、それすら楽しいイベントと捉えているようで
——
苛立ちまみれだった心がフワフワほぐされていくのを感じた。しわくちゃだった眉間をゆるめ、バッグを胸の方に手繰り寄せる。
「イッシュの方さも来んだべか」
「おやつ親父さんはパルデアで見たって言ってたよ。だからイッシュに来ててもおかしくないはず!」
アオイが言うならきっとそうに違いない。何の疑いもなくそう思える自分の単純さがおかしくてスグリはふっと笑った。つられてアオイも笑う。じとじと纏わりつく嫌な空気が軽やかになった感覚が無性にくすぐったくて、スグリはもう一段階笑みを深めた。バッグのファスナーを開け、奥底に常備させてるタオルを引き抜く。
「使って」
「え? 貸してくれるの?」
「うん。風邪引いたら大変だから」
本音は「きみが病気になったら悲しいから」だけど、そんなの言ったら「重い奴」って軽蔑されるかもしれないから嘘を吐く。アオイはどんぐりみたいな瞳を少し彷徨わせてから、スグリのタオルを取ることなく自分のリュックをまさぐりだした。
「
……
実は、私もタオル持ってたりして」
スグリと勝負した後必ず使うから持ち歩いてるんだ。そう言いながらアオイはシャリタツ柄のタオルを鞄から取り、スグリの方へと差し出した。
「せっかくだしさ、拭きっこしない?」
ずぶ濡れなのに自分よりも大好きな相手にタオルを使わせたい同士で雨を払おう。大胆な提案をしかけた人は、なのに目元はぽわっと赤く染めていて。緊張と嬉しさと、腹の奥から湧く熱っぽい感情にスグリは大きく喉を鳴らした。
「いい、よ」
冷えた指からふわふわのタオルを受け取る。自分のタオルを渡す。ざあざあぼつぼつ喧しい中、孵化したてのポケモンをあやす手つきで愛しい人の頭を包む。雨粒を押さえ、拭い払う。可愛い三つ編みを崩さないよう慎重に。湿った部分が残らないようしっかりと。半分ほど乾いてきた頃、スグリはあることに気が付いた。
「アオイ、髪の毛わやサラサラじゃ」
前々から柔らかくてお人形さんのような髪だとは思っていた。ついでに石鹸のいい匂いだとも。でも今日の髪の毛はいつもよりもっとサラサラでスベスベで、ベリーのような甘酸っぱい香りがしている。普段の元気はつらつなイメージからさらに、より女の子らしさが引き立っているようだ。スグリの言葉を受けたアオイが目を細める。
「気づいた? 最近ね、髪の毛もキレイにしようって頑張ってるんだ」
長いまつ毛がいたずらっぽく揺れる。艶めいた愛らしさに心臓がキュンと高鳴る。そういえば最近女子の間で『最強モテ髪ヘアマスク』なんてものが流行ってたっけ。片隅に思い出しながら、少し乱れてしまった三つ編みを自分の方へと掬い上げる。
「
……
なんで?」
なんで髪の毛もキレイにしたいと思ったの?
答えなんて分かりきってるけれど、アオイの言葉で教えてもらいたい。我儘な願いは小さく浅い呼吸の後、ひそやかな声によって叶えられた。
「
………
好きな人に『髪も好き』って言ってもらいたいから」
囁かれたのは望んだ通りの答えだった。はにかんだ上目遣いが恋心を射抜く。「何かちょっと恥ずかしいね」とわずかに顔を逸らした仕草も可愛くてたまらなくて、抑えられない。
想ってもらって嬉しかったのなら今度は自分が応える番だ。スグリは何より大切な人の頭を引き寄せた。
「髪の毛も手も目も匂いも、全部好きだよ」
何より、好きって言ってもらうために頑張ってくれた心が大好きだ。
想いをたくさん込め、かすかに熱を帯びた頬に口付ける。アオイはピクンと小さく震えてから、
「えへへ、やった」
すぐさまとろけた声で笑ってくれた。甘く弾む声に耳をくすぐられた直後、今度は自分の頬に柔らかいものが押し当てられた。
「私も。スグリの髪も手も目も匂いも、唇もほっぺも全部大好き」
本当に大好きだよ、とこぼしてからアオイはもう一度スグリにキスを与えてくれた。甘酸っぱい香りに脳みそが包まれていく。大好きの気持ちに全身が支配されていく。
「もっかいキスしていい?」
答えを聞くよりも先に唇を塞がれた。耳障りな雨音がどこか遠くに消えていく。二人分のドキドキが重なりあって溶けていく。
もし本当にカイオーガが近くに来ているのならば、もう少し、あと一時間だけでいいからこのままそこにいてほしい。
途方もないことを思いながらスグリは大好きな恋人の腰を抱いた。雨はしばらく止まなかった。
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