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サブさぶれ
2026-05-09 17:43:58
20837文字
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ワンドロワンライ
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ワンドロワンライまとめ
sgaoワンドロワンライのお題で書いた作品まとめです。
覚えているものはタイトルと一緒にお題とかかった時間も記録しておきます。
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幸福
お題「幸福」※成長ifです
鬼は外。福は内。俺は昔から、この風習が嫌いだった。
理由は簡単。鬼さまが好きだから。一人っきりで何もしてない鬼さまに、一方的に理不尽に豆をぶつけて追い払うなんて、ひどすぎる。そんでもって都合よく「福だけは来い」なんて。
じーちゃんもばーちゃんも「そういう意味じゃない」って言ってたけど、豆撒きの時はみんな、オモテ祭りで買った鬼さまのお面被って、鬼さまのバルーンに向かって豆投げてたし。結局みんな、鬼さまが嫌いなんだって思わされて、悲しくて悔しくて、嫌いだった。
「おじいちゃんたちはが言ってた『そういう意味じゃない』ってのは? 鬼がオーガポンじゃないなら、何が鬼なの?」
俺の話を静かに聞いていた人からそう尋ねられ、何だっけと記憶の本棚を漁ってみる。
たしか
……
。そうだ。災いだ。病気や不幸ごとが起きませんようにってお祈りするためだって言ってた。
昔は、病気とか悪いことは全部鬼が持ってきてるって言われていたらしい。だから鬼が嫌いな豆を撒いてたとかなんとか
――
。
「ねえ、豆、嫌い?」
「ぽに? ぽにおー!」
オーガポンはピョンピョンと、踊ってるみたいに足をばたつかせて飛び跳ねてから、サイドテーブルに置いていた豆菓子を器用に掴んで食べた。オーガポンのために用意したわけじゃないのに、結局彼女が一人で平らげてしまった。
新しいものを用意しようと、一階にあるコンビニまで行こうとした時だった。すぐ隣にいる、上体を起こして寝そべる人がぼそりと言った。
「それにしても、『災い』かぁ」
丸椅子に座り直して、彼女の言葉を待つ。
化粧っけがないのに艶やかな赤色をした唇から、次はどんな言葉が出るんだろう。
保湿クリームを塗ってあげたばかりの手を握る。シビシラスみたいな透明感のある肌が、赤切ればかりになった俺の手にしっとり吸い付いた。
「どうする? 私、災いの伝説があるポケモンも、鬼もいるよ? 鬼は外って追い出しちゃう?」
おどけた瞳には、不安の影が潜んでいた。
「バカ言わねえで」
きみが、アオイが、どんなポケモン持ってたって関係ない。アオイは俺の何よりの「福」だ。
アオイが俺にもたらしてくれるのは、全部がぜんぶ、何から何まで、永遠に幸福しかない。俺は一生「福は内」っていう必要ないんだ。すでに幸福が、アオイがいてくれるから。
真剣な顔でそう言うと、アオイはくすぐったそうに顔をクシャッと綻ばせた。それから「私も、福は内はいらないかも」と言って、手のひらをくるんと上に向けた。
互いの手を包み合う。俺とアオイの真ん中で、互いの体温が溶け合ってるみたいだった。
少ししてから、アオイが俺の顔を見上げて言った。
「ねえ。やっぱり豆撒きしようよ。病気や不幸ごとが起こりませんようにって。スグリと私と、この子のために」
俺の手を乗せたまま、アオイは大きくなった自分のお腹をゆっくり撫でた。柔らかく伏せられた睫毛には、零れ落ちんばかりの愛情が乗っかっている。
「んだな」
これから訪れる、たくさんの幸福の日々に災いが起こりませんように。願いを込めて豆を撒く。
俺は生まれて初めて、節分という日を幸せに過ごした。
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