サブさぶれ
2026-05-09 17:14:23
23948文字
Public 原作軸
 

原作軸②

原作軸のSS・短編置き場②です。


happy happy new year


 年明け寸前のテーブルシティはいつもより多くの人とポケモンと色鮮やかな飾りたちでごった返してる。

「こんな賑やかな年越し初めて。呼んでくれてありがとな」
「前にキタカミに遊びに来てって誘ってくれたお礼だから。気にしないで」

 ニコニコ顔の友人はさっきこちらに着いたばかりだというのに、もう生クリームたっぷりクレープを頬張ってる。せっかくだからりんご飴のお返ししたかったのに。私の好きな人はおっとりさんに見せかけて存外隙がない。
 会ってない合間のことをあれこれ報告しあいながらゆっくり街を進んでいく。今夜だけは夜更かししていいと言われた子供たちは大階段を駆け登ったり下ったりを繰り返し、大人たちは忙しなくワイングラスをぶつけ合ってる。ヒラヒナたちの大道芸に拍手を送り、露店をチラッと覗いたり。考えなしに探索するフリしてこっそり誘導してるなんて、スグリは微塵も想像してないだろう。
 やがて街の全貌を見渡せる丘へ辿り着いた。ここにもやっぱり大勢の人が押し寄せてたけど中央広場ほどではない。私は隣の人にバレないよう、半歩距離を縮ませた。

「にしても。ねーちゃんも来たらよかったのに。こんな楽しいお祭り、絶対好きなのに」

 唇についたクリームを無造作に拭いながらスグリが言う。優しくて無邪気なその言葉に、ズキンとした罪悪感を覚える。だって、ゼイユが来なかった理由も、他のみんながここにいない理由も、全部私のワガママのせいだから。
 カウントダウンがはじまる。自分も参加していいのかと、そわそわしてる横顔が可愛くてかっこよくて——好きでしょうがない。乾く喉に唾を流し込む。

「ね、スグリ」
「なに?」

 クレープを食べ終えたばかりの手を取る。隣から「え、」と惑う声が上がったけれど、気にせず強く握りしめる。

「私ね、スグリのことが、」

 君を見る。赤い頬。金ぴかの瞳。白い息。ドキドキうるさい私の心臓。
 カウントダウンの大歓声はいよいよ一桁代に突入した。熱狂の中、ちっとも関係ないこと叫んでる私の声は君にしか届いてない。
 真っ赤な顔。見開いた瞳。白い息は——腕を引き寄せられて、それ以上何も見えなかった。
 3・2・1……、街中にお祝いの声が響き渡る。背後から聞こえる激しい爆発音はきっと、西門の方から上げるという花火の音だろう。多分、そうだと思う。振り返って見ればすぐ解決することなんだけど、今はスグリの腕の中で、応えるように高鳴るスグリの心臓だけ聞いていたいから……ちょっとどうでもいいや。

 新しい年がはじまった。とびっきり素敵な新しい日が、はじまった。