サブさぶれ
2026-05-09 16:31:23
16963文字
Public 原作軸
 

原作軸①

原作軸のSS・短編置き場です


染まる


 そういえば、こんなの持ってたんだった。
 カラーコンタクトの存在を思い出したのは、貰い受けてから半年以上も後の冬。春から今現在に至るまで未開封のままリュックの底に潜んでいた、少し色褪せてしまった箱を取り出す。初めまして、と苦笑しつつパカリと開けて、中を見る。昔ママに買ってもらった色鉛筆よりもバリエーションに富んでいた。
 ピンクにグリーン、ウルトラマリン。光も通さぬ漆黒に、パーティー気分なレインボー。定番カラーに変わり種まで何から何まで揃いぶみ。一見同じように見えるけど、違いの分かる人が見たら「なるほど」と唸りそうな二色も、複数個ある。——多分、アオイには一生分からない違いだ。
 オシャレな人たちは虹彩まで思いのままに変えるのだろうか。オシャレなんて幻のポケモンたちより縁遠い。それなのにカラーコンタクトを引っ張り出してきたのにはきちんとした理由があった。
 お目当てのケースを手に取る。開ける。液体に浸された色をまじまじと観察する。そして、慎重に指先へと乗せた。

 午前八時、少し前。始業時間に合わせて教室に入ってきた人に手を振る。温和な笑みを浮かべた人はアオイと同じく手を振って、すぐさま何かに気がついた。

「あれ? 何かアオイ、いつもと違う?」
「うん。どこか分かる?」

 立ち上がってクルンと一回転。少しイジワルを仕掛けてみる。つれない乙女の行動に、スグリは見事に釣られてくれた。

「うーん……。髪型はいつもと同じだべ? 髪飾りも。グローブ、もブルベリの指定グローブのままだな。お化粧? とか?」
「分かんない?」
「うーん、分かんない! 降参!」
「降参ダメ。ほら、もっと。よーく、見て……

 よく見て。君しか見えていない瞳を、その色を。君の色が欲しいと勇気を出した、いじらしい恋心に。同じ色に毎日染められてる私の気持ちに、どうか気付いて。