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サブさぶれ
2026-05-09 16:31:23
16963文字
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原作軸
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原作軸①
原作軸のSS・短編置き場です
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臆病者どものバレンタイン戦線
アオイに「バトルに使う道具、相談しながら買いたいから付き合って」と誘われてやってきた街は、暖色系のバルーンとパステルカラーのオーナメントで飾られ、お祭りみたいに賑わっていた。
二月の突き刺すような風の中、やたらに着飾った女の子たちが大量発生している。黄色いざわめきに紛れて、ニコニコ幸せそうに女の子と腕を組む男もたまにいる。肩を縮こませているのは、俺だけだった。
何でこんな、バレンタインの真っ最中に誘ってきたんだろう。
……
友達としか見られてないからだろうな。友達だから、ピンク色に浮かれた街を一緒に歩いても平気なんだ。
若干恨めしく思いながら隣にいる人を見る。すれ違うどの女の子たちよりもツヤツヤピカピカで、びっくりするくらい洗練された、俺の片想い相手。ずるっこなくらい可愛くてたまらないアオイは、俺をクレープ屋まで引っ張ってきた。
「ハートブラウニースペシャルクレープと、
……
ブマジックミックスベリーチョコクレープ、を一つずつ! お願いします!」
前にねーちゃんと行ったコーヒーショップでも思ったけど、オシャレなお店の注文って呪文を唱えてるみたいだ。スラスラ言えるアオイはすごいな。都会の子って感じして、おどおどしっぱなしの俺なんかが一緒にいていいのか不安になる。
クレープ屋のお姉さんもそう思ったんだろうか。俺の方をチラッと見て、アオイを見て、一瞬だけクスッと笑った気がした。
アオイの注文が終わって出来上がりを待つ間、何組かのカップルが俺たちの後ろに並び始めた。ミックスベリーにしよう。俺甘いの食えないよ。ええー、ダメ、絶対食べて。とか色々喋ってる。ラブラブなカップルに囲まれた、ただの友達同士な俺たち。居た堪れなくて、早くクレープができてくれと必死に念じた。
俺の念が伝わったのは数分後。意外と早くできあがって一安心だ。
「お待たせいたしましたぁ、スペシャルクレープと、バレンタイン限定・ラブマジックミックスベリーチョコクレープでぇす」
「はい、これ。今日付き合ってくれたお礼!」
「あ、ありがとう! わやー、めんこいなぁ」
渡されたのはベリークレープの方だった。薄いピンク色のクレープ生地に、これまたピンクのクリームがこんもり載せられている。てっぺんにはハート型のカシスチョコレート。女の子が好きそうなものの集合体だ。
「このミックスベリーチョコクレープってね、バレンタイン限定で、」
「うん」
ベリーの甘酸っぱい匂いがする。見た目の印象より甘くなさそうだ。いつもより少し早口なアオイの話を半分流しながら、ピンクの塊を観察した。
「
……
好きな、人に、渡すとね、恋が叶うっておまじないがあって
……
。今すっごく人気なんだよ」
どこから食べればいいのか迷うけど、とりあえず生クリームの渦に齧りついてみた。
「ん、んまい! アオイ、これわや美味しいよ!」
俺は夢中でクレープを食べ進めた。ほんのりホワイトチョコの味もする。甘い。酸っぱい。甘い、甘い。
「話、聞いてないでしょ」
「き、聞いてる! けど
……
。えっと、ただの豆知識、だべ?」
なんだったら、出来上がりを待ってる時に商品説明読んだから知ってた。俺にベリークレープを渡された時からずっと、心臓がバゴンバゴン鳴ってる。
でも、間違えてたら恥ずかしいし、何よりアオイは俺のこと友達としか見てないだろうから。クレープに夢中なフリして、真っ赤な顔のアオイに気付いてない風を装った。
勘違いしそうになる心臓を必死で宥める。アオイは上目遣いで俺をジトッと睨みつけた。
「鈍感
……
」
「え、ええ!?」
アオイは最後に食べようと思って残していたハートのチョコを奪って口に放り込むと、プイッと背中を向けてしまった。
俺の恋も、少しは期待していいのかもしれません。ひとまず、帰りに花屋さんに寄りたいと話してみようと思います。
♢
君から奪ったカシスチョコ。君から渡された真っ赤な薔薇。臆病な私たちの代わりに気持ちを伝えてくれる、たくさんの物たち。
それらに「ありがとう」と心の中で言いながら、出来たばかりの恋人の手を握る。
スグリは私が持つ花と同じ顔色でニッコリ微笑んでくれた。
今日はステキなバレンタインデー。
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