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サブさぶれ
2026-05-09 16:31:23
16963文字
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原作軸
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原作軸①
原作軸のSS・短編置き場です
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月が見ていても
今日という日の冷たい月の色を覚えていたくて、窓を開ける。行き場のなくなった熱の上を夜風が滑っていく。春になりかけの優しい香りが鼻をくすぐった。翻ったレースカーテンと戯れるように消えた吐息を追いかけて振り向くと、すぐ後ろに恋人が立っていた。
「風邪、引くから
……
」
手には脱ぎ捨ててから数十分経ったパジャマ。金の瞳はうろうろ泳いで、真っ赤な顔は半分だけ。日頃より服の隙間から覗いていた肩の先は細く青白く、だけど思ってたより硬くて、不思議な感触をしていた。今はもうグレーの薄布に隠れてしまった部分は
——
、ピンク色で、幼さが未だ濃く残る顔に似つかわしくないほど
……
。
思い出し、目頭がじんわり熱くなる。下唇を噛んだアオイに何らかの勘違いしたのだろう、スグリが慌てて駆け寄ってきた。
「ごめん、ごめんな。俺が、」
「
……
ちがうの。ただ、くやしくて」
悔しい。
事前にいろいろ調べてきたのに、いざ実践となって、彼の秘密も自分の秘密も目の当たりにして、怖気付いてしまった。アオイの怯えはスグリにも伝わり、何とか取り返そうと踠けばもがくほど、威勢を失っていった。
そして今に至る。最高に幸せになるはずだった夜の居心地悪さに困り果て、何かを求めて窓を開けた。
嘲る色の月に照らされながら見つめ合う。スグリはたっぷり時間を使ってぐるぐる考えた後、静かに口を開いた。
「今って、ギュッてしても
……
平気?」
返事の代わりに腕を広げる。スグリの視線が顔の下、心臓のあたりに下がったのを感じたが、気にせず腕を広げ続ける。ややあって、スグリが一歩近付いた。何も隔てるものがない、白くて薄くて形のいい胸板。夜風で冷えた身体を包んでくれる彼のやさしい体温。低く強張った声が耳に落ちていく。
アオイ。
何の変哲もない、自分の名前。スグリの声によって世界一特別な響きになる、私を表す三文字。
次こそは。スグリと。絶対に。スグリと。
決意の分だけ腕の力を込めた。すぐ横で「ぐえっ」と呻き声が聞こえた気がしたが、構わずギュッと抱きしめた。
月は白々しいかんばせのまま、若者たちが寒さに堪えきれなくなるまで見守り続けた。
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