サブさぶれ
2026-05-09 16:31:23
16963文字
Public 原作軸
 

原作軸①

原作軸のSS・短編置き場です


はじめての


 君のやわらかな唇を喰む。息を呑んだ音。金色が訴える。「ファーストキスだったのに」と。
 私だってファーストキスだった。なのに君が、いつまでも踏み込んでくれないから。私から踏み荒らさなきゃならなかった。
 小麦は踏めば踏むほど強靭に、美味しく育つんだって。同じくらい美しい色の君はどうなのかな。私の影で淀んだ君の瞳を見る。
 奪われたばかりの唇は言った。

「俺からしたかった」 



 ミルクチョコレートの瞳が近づき、細まり、やがて閉じた。
 その美しい変遷を、世界一間近で見守った。この世で最も贅沢な瞬間だった。だが、その世界記録は一瞬で塗り替えられた。
 きみが、俺にキスしてくれたから。
 他人の柔らかさを初めて知った。他の誰とも味わいたくないと、欲張りなことを思った。——もっと強欲なことでさえ。
 つまらないことを言った。きみはこう返した。

「二回目はスグリからして」

 世界一糖度の高い言葉に、甘党の俺はなす術もなかった。