akinoshiroihana
2026-02-03 23:24:27
18106文字
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ノーマルぷらいべったーゲッターネタ倉庫4

2021-22



なぁんだこれ
「こん、でん……せど?」
「あっバカ、それジュースじゃないけど空気穴空けるタイプの缶だから。その缶切り捨てるなよ、武蔵」

   *

こんな時期にもなれば、登山口近くの学生寮であっても涼を求めることはある
ああ、あったなあ、中等部の夏合宿で山寺のお世話になったとき、本堂の中は障子一枚でとても涼しかったのに、薄暗いからってみんな説明を待たずに窓を開け放つから夏の熱気が一気に入って来ちまって台無しになったり、俺達の体温で既にいつもより暑いって住職さんがぼやいてたり。
へへっわかるね、お前さん達の元気さには目玉から日焼けしちまいそうだ
なんだとぉぉ「達」って誰だ、「たち」って?

三者三様いろいろ言いつつドーナツ形の専用製氷皿から大きな氷塊を取り出して氷削り機に嵌める
「さあさあオイラはレモンだリョウはイチゴだな、ほとんどおんなじ味だけど!
 ハヤトはうーん、みぞれだなあ、これだけははっきり違う寂しい味って感じなんだよなあ、どうするメロン味でもかけるかい」
「いやいいよ、家から送って来たカルピスでもかけちまうさ」
「ええっそうかその手があったかお歳暮か、ちえっ、ずるいぞ贅沢な奴、ははっ」
なんだいリョウ、そりゃ面白くねえのか面白いのかどっちなんだい、………あーまた、またなんだな、えええいもうひと削り

70年代の「氷みつ」には赤黄緑とみぞれのシロップしかなかったのだった
だからチームのリーダーたる「彼」は、次の機会の為にこっそり考えた首を傾げた。

   *

ふん?なんだこれ
「コンcondensed milk?」
「ああ今容器に移してるとこなんだよ、ひっくり返すなよ弁慶」

またやってきた夏、目に映るのは、誰かの不在にまだ馴染み切らない新たな仲間、
それにもう二度と残る二人の内一人を失わないよう離れがたくなったような仲間
「さあさあおれはレモンだリョウはイチゴだな、ほとんどおんなじ味だけど!
 ハヤトはうーん、メロンかなあ、緑を青信号って言うみたいでよ、なんだかインチキくせえ話だが」
「いやいいよ姉貴が作った菓子と一緒に送って来たブルーキュラソーをかけてみる。なんだいあの人処分に困ったかな」

70年代の悪童はときにたやすく雲を吐き、酒精をも帯びた
「おいおいゲットマシンに乗ったら血管が開いちまうから危ない……らしい、ぞ?」
「そうかい?ああこれオレンジの香りだ、じゃあベンケイさん向けだな、ほら」
「ふんなんだそんなもの、どれどれ……うへえ?」

うちの親父のヘアトニックみたいなラベルにうちの親父がたまにつけて来るスッチーさんみたいな匂いだつまりキケンなやつだ!と弁慶が叫ぶところに、目を伏せて笑う隼人の白い横顔が柑橘の揮発臭とともにすいと滑り込んできて、「彼」はどきりとする
「梅酒氷みたいに美味くはならなさそうだぜ」
やめとく、と言いつつ肩をすくめた隼人の、舐めた程度だという吐息まで青く色が付いて見えるくらいにその軌跡ははっきりと追えたから
「じ、実は去年氷を削ったあとに思い出して、実家から送ってもらったものがあるんだ」
「うん?」
「九州名物。白くま。」
英字ラベルと漢字両記の空き缶がずいと出される
「コンデンスミルク、練乳だよ。九州で白いかき氷と言ったらこれで、みんな大好きさ。それを言いたかった」
「みんな」と言えば、「なにを誰を」を省略してしまえばむずむずだかばくばくするなにかが一瞬抑えられるものなのだ、と「彼」は内心驚く。いやそもそもどうしてその言葉を口にするのが、そんなにも心躍るのだろう?
「今はライガー乗りなんだけどよ?」
「すまない、遅くなった」
「いいさ嬉しいy」うわあああああ!お前らいい加減交代しろおぉぉ!

その時々急にやたら濃密になる空気を破るべく、弁慶が夏の空に吠えた

     *

「神さん、俺なんか食っちゃいけねえもの食っちゃった?ゴディバとか高野とかのアイスはおっかねえんで、袋アイスもらったんだけど」
「いや、かまわんよ、まったく」

白くまバーの消えた冷凍庫内を熱帯魚の水槽か何かみたいに凝視している男と、なんともバツの悪そうなもう約一名。ベランダから昼の余韻の風。
また来た夏の、そんな寸劇。