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akinoshiroihana
2026-02-03 23:24:27
18106文字
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ノーマルぷらいべったーゲッターネタ倉庫4
2021-22
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●
レモンの花の蕾がさ
白かったのが膨らむにつれて赤みをはっきり帯びてきて、なんだかドキドキワクワクしてたら、今日開いた花は黄色いんだ、なんだかとってもしょんぼり負けた気分になるのは何故だろう
竜馬が窓際のソファでそんなふうに独り言ち
それでなんでオイラの方を恨めしそうに見てんだようやめてくれよ!と武蔵が頭を掻く
*
白い彼岸花ってさ、赤いのと黄色いので交配するとできるらしいんだ。黄色は俺の故郷の方にはよく咲いてるから、こいつとこいつがうまく交わればきっと、と竜馬が赤と黄の野の花を植木鉢に突っ込みにこにことしている
おおおい、それでなんで隼人の方を見て楽しそうにしてんだよ、持って帰るんじゃねえよ家が火事になるぞ死人が出るぞ馬鹿!もうやだぞ俺はと弁慶が叫ぶ
隼人は今日も何も聞こえないふりをする。
●
「今日は七夕なんだってさ」
言いつつ願い事を書くかと短冊を持って行ってやった相手は
「そうかい」
そう言葉少なに返し、ミチルさんに頼まれたらしい七夕飾りを色紙で折っている
赤いケーブル編みのセーターで。
なんだい冬物も赤なのか、やっぱり好きな色なのかと聞けば、イーグル号の赤も彼は好きだろうかとこっそり思えば。違うよねえさ
……
姉貴が練習で編んじまって、これ一着でタンスの引き出しの中を占領するったら酷いからって押し付けられて持たされてさ。そう彼は端正な面差しにあるまじく、ぶすくれ、ひとつ身震いもした。深紅のハイネックにも温めきれない白くて長い首はいかにも寒そうだ、七月だというのに!
「どうしてお前さんは平気なんだい、お里は九州なんだろう」
「さあ、進学で故郷を離れたのは中学のときだからかな」
一九七四年七月七日 麓軽井沢の最高気温十五・五度
ならばここ浅間山を眼前にした研究所は
―――
七夕だからお昼はそうめんだって、と言えば、笹飾りを作るべく色紙を切る鋏の音がぎくりと止まったのがわかり、竜馬は吹き出しそうになって必死にこらえる。
提灯に吹き流しに網、螺旋の貝殻それに星
夏の川面を今宵の星の瀬を、そこを渡り出会う「二人」を飾るそれを不承不承つくっている白くて長くてすらりとした指は、口許に浮かべる半笑いや伏せた目よりずっとまじめで素直そうだと。そう思うだけで楽しくなるのはいったい何なのか。
なんだっていい、胸か手のひらかどこかがやわこくはねるのがきもちよいと竜馬は思った。夜が待ち遠しかった。
●
墓ってのは
隼人が言う
今だって田舎じゃ土葬のとこもあるが、
ちょっと昔までは河原や山の中に「捨て場」があって、どこに葬ったかは担当した連中があの世に持っていくってならいもあった、身寄りがちゃんとした人間でも坊さんでも。
身体がここに埋まってないことも多かったのさ
大爆発の中奇跡のように無傷で飛んできた赤胴以外は収めるものの無かった武蔵の墓を彼は撫でる
「だったら」
だったらこんな空っぽの墓はあいつに何をしてやれてるってんだ
「墓」前の土の上に両膝をついたままの竜馬がそう吐き出せば
「こいつはな、魂がここから寺だの神棚だの家に帰るための道しるべになるっていうぜ」
だからあいつにわかりやすいよう、きれいにしといてやろうや、
大雪山の山籠りは半分迷子になって始まった遭難だったかもしれねえって言わなかったかあいつ、ったく。
言いつつくるりと背を向けて隼人は野辺の夕菅を詰んでいる。
これから咲く花、夜の花だよユウスゲは、ちなみに食えねえ、との余計な解説は彼の、隼人の声ではなく耳に蘇る
「なあ隼人」
「俺ももう泣いたよ」
薄闇の中そんな応えがあった
●
「なんだか小洒落ちゃいないかい」
「ん」
病院の白い患者タグが久し振りに巻かれた手を取って、何とのうもてあそべば、それはあの日初めて触れてすがり付いてきた時のようにすこし冷たくもしっかり脈打っている。そしてそこからぷらりもうひとつ下がるものがある。プラスチックとビニールの、青と透明、透き通る水色。
ミサンガかプロミスリング、それともカラ
…
ビナなんなら数珠か
「いやこれ何かの願掛けかい教えろよ」
「ばぁか、よく見ろ、こりゃもう数日続く点滴のクチさ」
ほらこっちで一回血管にぶっ差しゃ点滴常備薬片っ端から入れ替わり立ち替わりで身体に流し込んでくれてる
えっ
楽だぜ?
えっ
…………
なんか、言うに憚られることされてねえかお前
こっちにもあるぜ、こっちはオレンジ、あいつらの色かな
ウワー!
うわぁ?ついでに昨日までは気道に穴が空いてスピーチじゃねえカニューレ刺さっていたから、喋れねえまま鼻から喉にも管突っ込まれて、二百cc四百calの薄汚い色の白濁液を二時間ずつ
ウワー!抜け!せめて片っぽにしやがれ‼
おいおいナースコール、勝てなくていいからせめてウェイトある奴ら寄越せ
まったく、おれがこうなるの初めてじゃないのもわかってるくせに。
おまえがそのハラワタまろび出そうな大怪我した時のことは今も話してくれねえくせに、よーし連れて行け
ええこんにゃろう、言えばだいたい「ああ、あの頃か」でわかるし済んじまうと思うんだよお!
「そうかい」
勝手なやつ、
自分ばかりだいつだって!
……
でも
お前がそう思うならそうなんだろうよ。
●
病院の正面ロビーの吹き抜けの上、
ファストフードとコンビニが並ぶ桟敷フロアは
見舞客のイートインコーナーになっている。
忙し気にパンをかじる者もいればガッツリ食って休憩する体勢の者もいて、カップ麺を味噌汁代わりに弁当食ってる姿だってある。
それを見回していれば少し遠いテーブルで、あの男が、流竜馬が、1ℓパックの日本茶をウォーターサーバー用のコップに注ぎつつ袋菓子なんか食いつつ、よう、と手を挙げた。
あんたも面会今日だったんだと聞けば、おうよ一番乗りだぜと自慢げに、見舞客と書かれ貼っつけられた布テープを見せ付けぐいと胸を張る。
「随分便利になったもんだがやっぱ病院の売店だな、ちっこい菓子が必ず売ってる」
確かにそうだ、チロルとかうまい棒とかビスコとかは必ず売ってる。チロルが可愛いんで土産に買ってったんだというのに安いからじゃねえのと意地悪いうのはこの際止めようと思いつつ、わざわざ呼びかけに応じた目的を果たす。
「クッピーラムネ」
言うと空気がぎくりと揺れるか鳴った。
「ラムネ菓子好きなの?それか急に好きになった?」
言えばまたぎくり
「OD錠ってムセちまうとか患者になんかあったら、がきんちょやジイサン以外でも出してもらうんだよな、飲みやすいから」
甘くって、クチん中でスーッと溶けちまうやつ。この医者も匙を投げるくらい元気そうな男はそれをどこで「口」にしたというのか、そしてはたしてそれは
「旨かった?」
尋ねる青年の共犯者の笑みに、男はこの野郎と低く呟いた。
はらはらと崩れる、ひんやりとした甘さ
それが今さっきまであった誰かの舌先
口腔内崩壊錠
●
そうは言ってもねお嬢さん!やっこさんまだぴしっとカラーを付けたまんま、アイロン線がぱりっと入ったままのお召し物だったんだよ、俺の中学の時分みたいな、親父の知り合いに貰った、ツギのあたったおさがりでもなく、多分クリーニング出す間の代えも持ってるの
仕立て代だけでいくらしたか、想像しただけでブルっちまうよ(逆に言えば彼が空手着以外でほぼ唯一価格を想像できる被服関連だった)
あらやだ、とミチルが顔を赤くしたのは、そうやって引っぺがしてきたらしいものの中に白いブリーフまで紛れ込んでいた事
わはは、と竜馬が笑い、何故か彼まで赤くなった
〇
「心配するな十代の青臭いガキの時分に先制カニバリズムと季節外れの人肉クリスマスツリーで戦意喪失させられた時と、血の繋がった従兄弟が冒頭からサラツと人間やめつつ完全に逝っちゃった形相のサイボーグ仲間を巨大ロボ一台形成できるぐらい引き連れて来た時以外、私は誰にも連れていけんよ」
〇
「ちくしょっ、おまえら犬嫌いだろ」
「なぜそう思う。お父様の方の家は代々犬飼いでみんな同じ名前をもらってる
今はスパニエルだ」
「あの人をよく知っている敵のほうがあの人をそう呼ぶ」
犬よりも猫とか狐とか
要注意ポイントだ
〇
あいつへばってる時には平気で座ってションベンしやがりそうだからなあ、と竿を振る竜馬の呟きが彼の耳に入らないことを弁慶は祈った
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