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pinopipi
2025-11-07 17:28:47
16596文字
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水龍の愛は深海より深く
神様時代に結婚してたヌヴィフリが予言後に別れた話
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「
……
好き」
「
…
っ
…
!?」
だというのに、この状況は何だ。
本日、ついに私は彼女の自宅へ招かれることとなった。
2人でお酒を飲みながら、他愛もない話をしていた。
すると突然、フリーナは何の脈絡もなく「好き」と言ったのだ。
耳を疑った。まるで私に向かって投げられた言葉だと錯覚した。
しかし、問いただそうとした私の言葉をフリーナはのらりくらりとかわして適当に誤魔化し続けた。
そしてやっと白状したかと思えば、その内容は私が最も恐れていたことだった。
「
…
実はね、僕、好きな人ができたんだ。」
そう。酔ったフリーナは、想い人と私を間違えたのだという。
2人は両想いで、告白された暁にはその男の手を取ろうと思っている、と。
初めて見るフリーナの表情。初露の源のように美しく潤んだ瞳。レインボーローズ色に上気した愛らしい頬。誰が見ても分かる、恋する少女の表情をしていた。当然ながら、私にその様な表情を向けてくれたことなど、ただの一度もなかった。
ゆえに、理解した。敵わない、と。
目の前が真っ暗になった。問いただしたことを後悔した。
知らぬままでいたかった。
もしかしたら、と一瞬でも自惚れた己を恥じた。
…
だが、フリーナにいつか愛する人ができることは、既に覚悟していたことだ。
彼女の恋を邪魔しないよう、私は良き友人として身の程を弁え、潔く身を引かなければ、と己に言い聞かせた。
彼女の幸せを願っているのは本心だが、それよりもただただ嫌われたくなかったからだ。
恐らく、これからはフリーナとあまり会えなくなるのだろう。
…
いや、フリーナの恋を邪魔しないためにも、きっと早めに離れた方がいい。
そう、思った。
しかし私がそう伝えると、フリーナは先程の表情を消した。何故か落ち着かない様子で急に話を逸らすように「それよりもヌヴィレット。キミの方こそどうなんだい
……
?」と聞いてきた。
…
無論、答えられるわけがなかった。私は今でも君のことをーーーーー。
言葉に詰まる。何と言えば良いか分からない。咄嗟に繕うこともできず、上手く立ち回れない自分に嫌気がさした。
そうして何も言えずに黙っていると、フリーナは突然、私の両手を包み込むようにして握ってきた。
「ごめん、さっきのは嘘なんだ
…
!!僕に好きな人がいるのは本当さ。でも、さっき話した彼ではないんだ
…
!」
…
では、他の男に想いを寄せているのだろうか?私としては相手が誰であってもあまり変わらないが
…
。
すると。
「僕が好きなのはっ
……
!ヌヴィレット、キミなんだっ
……
!!」
フリーナは真っ赤な顔で目を潤ませてじっと私を見つめている。
……
フリーナは今なんと?
心臓が暴れ出し、上手く息ができない。指先のひとつでさえも動かせない。
フリーナは祈るような表情を歪め、私の胸ぐらを掴んだ。そしてそのまま勢いよく引き寄せられた。
ーーーーーカチン!
刹那、前歯に伝わる衝撃。唇に触れた柔い何か。ぴりっと感じる痛み。
…
血の味がする。
「フ、フリーナ、今、何を
…
?」
「
……
キスだよ。下手くそでごめんね、勢いあまって歯がぶつかっちゃったから痛かっただろう?は、初めてだったから許して欲しいな〜
…
なんて
…
」
「
…
っ
……
」
キス。口付け。接吻
…
?
…
まさか
…
!
たちまち顔に熱が集まり、口元を手で覆う。羞恥のあまりフリーナと顔を合わせられなくなり、私は視線を逸らした。
こんな時
…
何と言えば
…
?
しかし、私が黙り込んでいる間にフリーナの顔色は少しずつ悪くなっていった。
「ヌヴィレット
…
ごめん
……
その、嫌だった
…
?やっぱり忘れて欲しいな
…
」
弱々しくそう告げたフリーナは酷く悲しそうに涙を浮かべていた。
嫌
…
?忘れろ
…
?違う、私は
…
!
真正面から見つめると、フリーナは俯いてしまった。
「ごめんねヌヴィレット
…
うう、本当にごめん。今更キミが好きだなんて都合が良すぎるよね
……
。だけど、この気持ちは嘘なんかじゃない、僕の本心さ。ずっとキミを騙していた僕の言葉なんてもう信じてもらえないかもしれないけど、僕は本当にキミのことが好きなんだ
……
。」
「
……
フリーナ
………
」
涙声でそう話すフリーナ。私を、好き
…
だと?あの、フリーナが
…
?まさかそんな
……
そんな幸福なことが現実に
…
?
恐る恐るフリーナの頬に触れ、指で優しく涙を拭った。嫌がる素振りはない。むしろ、無意識なのか、私の手に頬を擦り寄せて来た。まさか、まさか、本当に私を
…
?
「
……
ありがとう、君がそんなふうに思ってくれていたとは知らなかった。まさか君から好意を寄せられる日が来るなど夢にも思っていなかったため驚いたが、私は今、相当浮かれている。」
「えっ
…
?」
フリーナが顔を上げる。私は彼女を安心させたくて、笑って見せた。
「フリーナ、私は今も変わらず君を愛している。
……
別れた後も、ずっと君だけを想っていた。」
フリーナの背中にそっと両腕を回し、抱きしめた。
「
…
君が許してくれるのなら、もう一度、やり直したい。フリーナ、どうか
……
」
抱きしめる力を強める。暴れ回る鼓動が彼女に伝わってしまっているだろうが、それでも離したくはない。背中に回したこの手は僅かに震えている。このように緊張したのはおそらく、数百年前のプロポーズ以来だった。
フリーナが息を呑む音が聞こえる。彼女も緊張しているのだろうか。舞台慣れしている彼女にもこういう一面があるのだと初めて知り、嬉しくなった。
ーーーーーそして。
「うん、僕もキミとやり直したい。ヌヴィレット、大好きだよ。今度こそ、ずっと一緒にいて欲しいな。」
彼女の答えを聞いた瞬間、私は嬉しくて、胸がいっぱいになって、「ああ。」と短く返事をするのが精一杯だった。
フリーナはくすり、と小さく笑って抱き返してくれた。私たちは強く抱き合った後、笑い合い、もう一度口付けを交わした。
「
…
キスってこんなに優しいものなんだね」
「先程の口付けは少々衝撃的だったが、嬉しかった。」
「そ、そうなの?でもキミの唇に傷が
…
」
「構わない。君に付けられる傷なら歓迎だ」
「えぇ!?」
フリーナは可笑しそうに声を上げて笑った。
ああ、幸せだ。私はもう一度、フリーナと一緒にいられる。
「
…
ねぇ、ヌヴィレット。もっと触れてくれても良いんだよ
…
?前は僕のためにずっと我慢してくれていたんだろう
…
?もう遠慮なんてしなくていいからね。」
「
…
っ
…
!」
先程想いを通わせたばかりであるのに、触れる許可までくれたフリーナ。かつて婚姻関係にあった頃、私が耐えていたことにも気付かれていたとは
…
。
本来であればお酒を摂取し酩酊した状態で関係を持つのは、いちフォンテーヌ紳士として適切な行いではない。
しかし、長年焦がれ続けた彼女が期待を滲ませて潤んだ瞳でじっと私を見つめてくるものだから、私は潔く理性を手放すことにした。
他でもないフリーナが己を求めてくれたのだから。ここで断れば彼女に恥をかかせてしまう。それに何より、据え膳食わぬは男の恥だと、稲妻にはそんな言葉があるらしいので。
お酒のグラスをテーブルに置き、私はフリーナを抱き上げて寝室へと向かった。
彼女をベッドへと寝かせ、抱きしめるように覆い被さった。
そこからは夢中だった。やっとフリーナに触れることができ、柄にもなく浮かれた。
彼女をどろどろに溶かすように快楽を与え、そして溺れた。
ああ、幸せだ。恋い慕い、愛する唯一のひとをこの手で暴いていく行為がこんなにも心満たされるなんて。
狂ったマシナリーのように何度も何度も愛していると伝えた。そのひとつひとつに対して律儀に愛を返してくれるフリーナ。
それだけでもう、私は満足だったのだが。
「ずっと一緒にいたいなぁ
…
」
フリーナは小さく、そう言葉を溢した。甘い表情で私を見つめ、さらりと髪を撫でられた。
「
…
ヌヴィレット。僕と、もう一度結婚して。」
その言葉に思わず、目を見開いた。彼女は今、何と
……
?
「
…
っは、そ、それは
…
」
あまりにも突然の逆プロポーズに、私は戸惑った。
しかし、フリーナは私の頬を両手で包み込んで、ふわり、と笑った。
「キミとやり直したいんだ。この数百年、キミは僕をとびきり愛してくれていた。別れた後も
……
今だってずっと変わらずに愛してくれていて
……
僕は世界で一番の幸せ者だ。だからこれからは、僕も一生をかけてキミに愛してると伝えていきたい。キミを世界で一番幸せにしたい。
…
だめかな?」
フリーナは私の頬を撫でながら微笑んだ。
鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなる。涙など今まで一度も流したこともないのに、人の形を模した己の身体は涙を流す機能も備えているのではないかと錯覚するほど、目の奥から熱い水が込み上げてくるような感覚がした。それを誤魔化すようにフリーナの手に自分のそれを重ね、瞼を閉じた。
「私も、君とずっと一緒にいたい。もう二度と、離したくない。
…
フリーナ、」
刹那、細い身体を力強く抱き締める。耳元で名前を呼ぶと、彼女はくすぐったそうに笑った。
「結婚しよう。君を愛している。今度こそ、君を幸せにすると誓おう。」
「うん
…
!」
フリーナがそう返事をすると同時に私は彼女へ口付けを贈った。
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