DRRV11037
2025-09-30 17:46:19
16304文字
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DRRV:1章地下道編




ペンキ塗りの梯子はひんやりと冷たく、空気はじっとりと湿っている。周囲がはっきり見えないほど暗くても、みんなと一緒だから少しも怖くなかった。一段ずつ慎重に下りていくと……やがて開けた空間に出た。



黄と黒の工業用フックがシャンデリアのごとく吊り下げられ、コンクリートの床の両端に、鉄製の太いパイプが荘厳な柱のように立ち並んでいる。工場の通路だろうか?工場でも他の場所でもアルバイトをしたことはないけど、漠然とそんな印象を受けた。薄暗いなかで私が先ほど下りてきた黄色の梯子を見上げると、地上の空間から白い光の筋が差し込んできている。私は目を細めた。

「ご覧!大きなトンネルだ。」
一番最後に梯子を下り、床に足をつけた三品くんがそう叫んだ。声が反響している。

彼が指し示した方向に頭を向ける。目が慣れてきた私の視界にやっと映り込んだのは、横に伸びた巨大なトンネルだった。三品くんの深く青い目にははじめからそれがくっきりと見えているらしい。

よく見えるね。」
楠木くんは年老いた猫のように目を細めている。

三品くんは振り返ると、茶色の看板の文字を──恐らく彼以外誰も読めない文字を──声に出して読んだ。

「ご丁寧なことで『出口』と書かれているよ。可愛らしいフォントでね。」

「な~るほどっ!出口ッスか。」
釘山さんは腕を組んだ。

「そこに出口って書いてあるってことはつまり、ここは出口ってことなんやな。」
小栄くんが納得したように頷く。

「そんな露骨な
楸谷がいぶかしむ。

天探さんが断言した。
「罠。間違いないわ。初めからそう思っていたのよ

天探さんはつかつかと看板に歩み寄ると、背を屈めて自らその文字を確認した。それから私たちのほうに鋭い目を向ける。

「この看板を設置したのは黒幕以外にありえないわ。黒幕はこのトンネルのことを認知しているだけじゃなく、私たちがここに来ることまで想定済みだったのよ。先へ歩いてみるとしても、良い結果は期待できなそうね。」

私は、先程のモニターを思い出した。あれもまた、黒幕が“私たちがここに来る”と想定していた証拠だった。

どうしよう。黒幕が知らない秘密の脱出口を見つけたつもりだったのに。そうじゃないみたいだ。黒幕からは全てお見通しだったんだ。期待が、希望が、揺らぐ心地がした。

……そうとも限りませんよ。」

改瀬さんが静かに否定した。

「行きましょうっ!まずは一歩進んでみましょう!もしかしたら本当の本当に出口かもしれないんだから確認してみませんか!?」

彼女の深緑の目がきらきらとエメラルドの明るさにまで輝いた。彼女の視線は、瞳孔に魔力でも宿しているのだろうか、と思うくらい力強くこちらを励まして、私たちみんなを次々とそんな気にさせる。

「改瀬の言うとおりだ。立ち止まっていても状況は何も変わらねーだろ。進もうぜッ!」

榊くんがそう促して笑う。白い八重歯が、薄暗いこの空間でも光って見えた。

「細心の注意だけは払ってね」
楠木くんは青いマフラーを撫でた。なんとなく、彼の同意を得られたことで安心している自分がいる。

誰にともなく私たちは、トンネルへと歩いていく。
きっと大丈夫。この先に出口があって、そこまで辿り着けば終わり。そうやって自分に言い聞かせながら前進する。右を見ても左を見ても仲間がいる。互いの存在を確かめれば、恐怖は薄れていく。

私たちは、トンネルの中へ足を踏み入れた。