DRRV11037
2025-09-30 17:46:19
16304文字
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DRRV:1章地下道編




対立ができあがっていた。

地下道を利用した脱出を目指すグループと、地下道は望み薄だと諦めるグループ。

地下道による脱出を唱えているのは、改瀬さんを中心として、清忌さん、白跳さん、黒原くん、昼間くん、そして私の6人。
それに反対するのが楸谷くんを中心として、釘山さん、楠木くん、天探さん、形代さん、三品くん、夜深くんの7人。

だけど、中立も存在した。
小栄くんだ。

「な、なに?これ。みんなどうしたん?」

彼は明らかに怯えていた。落ち着きなく視線を彷徨わせて、周囲の顔色を窺いながら、結局何も決められずにいる。

「俺、言い争いとか議論とかホンマ苦手で分からんのやけどなんや怖いわ、こういうの耐えられん

迷いに迷った小栄くんの爪先はいちど多数派に流れかけた。地下道反対派だ。彼らが小栄くんを迎えたら、8対6で向こうが完全に競り勝ってしまう───そんな緊張が走った。

「ナズ、」
改瀬さんがだしぬけに呼びかけた。

「こっちの味方にはなってくれないんですか?」

彼女はこの話し合いの途中からずっと涙目になっていた。隠したがってときどき隙を見ては拭うけど、誰にもバレていた。その今にも泣きそうな顔を向けて、救いを求めるかのように呼ぶ。

「い、いやっそんなこと!」
小栄くんはハッとすると、慌てて取り繕った。

そうして彼はあっさりと宗旨替えして、地下道脱出派に傾いた。ぼんやりとして曖昧な笑みを見せたまま言う。

「もちろん俺はみはるんの味方やで。当たり前やん、友達なんやから同じ意見に決まっとるやろ?」

腑に落ちないけど、とにかくこれで7対7になった。同数だ。
先ほどよりも私のグループは力を増したけど素直に喜べなかった。こんなの対立がますます激しくなるだけだ。

それに、

「音楽家クンはそれでいいの?」

「仕方ありません。女の涙には勝てませんからねぇ、」

そりゃちょっとズルくないスか?」

改瀬さんは真っ青になった。私にも分かる。彼女にそんなつもりは一切なかったはずだ。

「ちょっ、そんな言い方やめなって!何馬鹿なこと言ってんの!」
裁門さんが止めたけど、もう効果はなかった。

そこから、酷い言い争いが始まった。

「そもそも押しつけがましいんスよ」

「どうせまた失敗するんです、何を頑張っても無駄なんです」

「もう無理!みゆ疲れちゃったもんっ」

「Please! Stop! 話、聞いてください!」

「君たちと一緒にしないでよ」

「お、俺、そんなつもりじゃ!?」

まさかこんなことになるなんて思わなかった。この地下道を通ればみんなで一緒に脱出できると信じていたのに、まさか、こんな仲間割れを引き起こすことになるなんて。

「ま、待って、もうやめて!怖い声ばっかり。言い争いなんて悲しいだけだよ──」

「アンタさっきまで改瀬の味方してたじゃないスか!誰が聞くかよ」

私の声は一蹴されてしまい、取り付く島も無かった。争いはどんどん大きくなっていく。

何この野蛮。アタシみんなのこと守らなきゃって思ってるけど、やる気失せるんですけど」

裁門さんは呆れて目を逸らした。私の言葉ももはや反対派に響かない。となると、混乱しきったこの場をもう誰も収められない。仲間割れになってしまったのだ。

私は不安と妙な息苦しさから自分の三つ編みを握りしめた。逃げようとする足が、後ずさり。

まるで空気に責められているようだ。
これは、何かしなきゃいけない。何かしなきゃ。何かしなきゃ。何を?先生に報告する?ここに先生はいないし、先生は絶対に何も聞かなかったことにしちゃう。私が止める?聞く耳を持ってもらえないか、良くてみんなの冷たい目を浴びるだけだ。駄目だ。何もできない。見てることしか。

どうして私はこんなに無力なんだろう。
これは、私の罪だ。




そのとき……

ドォォォォオオン!!!

腹の底まで揺さぶるような衝撃音が炸裂した。そのあとに、耳を刺すような不快な、金属らしき反響音だけがいつまでも残る。

思わず顔をしかめて振り返ると、視界の端を覆う影が落ちる。
先程まで宙に吊るされていた、人二人分の大きさはある工業用の黄色と黒のクレーンが、巨大な鎖を引きずりながら、床へ落ちていた。──いや、落とされた。

……これでやっと静かになったな?」

平たい地面に立つ榊くんが、少し苛立ったような、それでも何でもないことのような素振りで、私たちを見遣った。


            To be continued...