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DRRV11037
2025-09-30 17:46:19
16304文字
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DRRV:1章地下道編
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探索を終えた私たちは体育館に戻ってきた。
既にそこにはまばらに人が集っていて、他のグループも続々と鉄扉を潜り抜けてやってくる。
出口を探すため、少人数のグループに分かれて学園中を調べ回ったんだけど
……
みんなどんな成果があがったのかな。脱出、ひいては私の未来がこの探索の成果にかかっている。これから始まる報告会でどんな話が聞けるのか、胸のなかでは期待と不安が綯い交ぜになっていた。
全員が体育館に揃ったところで、
榊
さかき
くんが集合を呼びかけた。
「うーし、全員集合!!」
着実にみんなのリーダーになりつつある榊くんの声は、ハキハキと明るい。コロシアイに巻き込まれ、そのうえ自分だけが記憶喪失の状態で、全体を気にかけて行動しつづけるなんて、誰にでも真似できることじゃない。もしかしたら彼は、記憶を失う前も多くの人と接するのがふつうな子だったのかもしれない。
「探索お疲れ様ッ!これから報告会を始めるぜ。」
「よろしくお願いしまーす!」と
昼間
ひるま
くんが高らかに言うと、数人がそれに釣られた。
「よろしくお願いしますッ!!各グループ、どの順番がいいとかあるかッ?」
榊くんがみんなを見回すと、
楠木
くすのき
くんがすっと手を挙げた。表情を変えないまま発言する。
「ボクのグループは、報告を一番最後に回してもらいたい」
途端に、周囲にどよめきの波が広がる。こんな要望を出すということは、何か重要な手がかりを見つけたんじゃないかという予感がしたのだ。
「了解ッ。じゃあまずは、
改瀬
かいぜ
から!どんな些細なことでも教えてほしいッ!脱出の鍵になるかもしれねーからな。よろしくッ!」
一番最初に名前を呼ばれた
改瀬
かいぜ
さんは、淀みない話しぶりで報告を始めた。
「はい!ワタシのグループは地下室を調べました。まずゲームルームに行ったんですけど、開かずの扉がありましたね。」
「かなり硬い、だった。中を見ることができなかった、けど
……
もし道具を使うなら、できるかもしれない。」
清忌
きよき
さんが片言の日本語で口を挟んだ。
「そうですね!出口ではないと思いますが、何か手がかりがあるかもしれません。それから、図書室にも行きましたよ!手分けして大まかに調べただけですが
…
ひとまず今回めぼしい発見はありませんでした」
「ドえらい数の本やったもんな~。ま、今回見つからんかっただけで、まだまだ何か眠っとるかもしれんで。」
小栄
こざかえ
くんがそうフォローを入れた。地下室には探索の余地がありそうだ。
次のグループの報告は、
三品
みしな
くんが一人で担当した。同じメンバーの
黒原
くろばら
くんと
形代
かたしろ
さんは、どちらもお話をするのが極端に苦手なタイプ。彼らの気持ちを汲んだのだろう。
「僕のグループでは、2つの発見があったよ。」
三品くんは少し真面目な表情を作り、人差し指を立てた。
「1つ目はモニターだ。きっと皆も知るとおり、この学園では至るところにモニターと思しき機械が設置されているけれど、僕らが巡った寄宿舎や庭園も例外ではなかった。何のためにこれほどの数を張り巡らせたのだろうかと疑問に思ったのさ。 」
三品くんは2本目の指を立て、次に移る。
「2つ目は、僕らが今着ているこの服についてだ。先ほども触れた寄宿舎という施設には皆それぞれに割り当てられた個室があってね。その個室に置かれたクローゼットには、なんと今着ているのとそっくり同じ衣類が6着入っていた。どうやって用意したのか不思議だよね。」
報告を終えた彼は、いつものふわふわした笑顔に戻ると「そうそう!忘れるところだった。」と、ポケットから鍵を取り出した。 ホテルの鍵に似ていて、キープレートがついている。
「個室にはこんな鍵が置かれているから、もし利用するとなったら、忘れず携帯するようにね。」
私は苦笑した。できることならルームキーを使わないまま、家族の待つ家に帰りたい。
「最後に、勇敢に学園を探索してくれたこの場の皆、そして僕のグループの成果に大いに貢献してくれた二人へ心からの感謝を贈ろう。」
三品くんはそう締めくくると、黒原くんと形代さんに花のような笑みを向けた。
次は、
裁門
さいもん
さんが話し始めた。豊満な胸の前で腕を組み、いくらか足を広げて立っている。
「アタシらのグループは果ての壁を探索したわ。当初の方針とはちょっと違うけど、誰かが一回ガチで真剣に調べとく必要があると思ったの。
……
分かったことは3つ。」
実のところ、彼女のグループは他のどこよりも本格的な探索を展開していた。
「1つ、果ての壁を破壊するのは不可能といえるわ。ドリル試したけど傷もつかなかったもん」
「2つ、潜り抜けるのも厳しそう。壁沿いに5メートルの穴を掘ったけど、壁の終わりが見えなかったから」
「3つ、
…
上空から果ての壁を見ると、その景色に違和感がある。」
裁門さんは
白跳
しらとび
さんにちらりと目を遣った。
「それで合ってる?」
「違和感っていうよりー、おかしいなっていう感じだねー」
白跳
しらとび
さんはにこりともしないけど、高く澄みきった声で極々小さな訂正を挟んだ。
「おかしいってことは違和感があるんじゃないの
…
?」
困惑気味の楠木くんが至極真っ当な突っ込みを入れた。しかし白跳さんはそれを無視すると、しきりに首を傾げて不思議がっている。
「なんか
…
分かんなかったんだよねー。ぴょんぴょんしてるのになー
…
なんでだろーなー
…
」
裁門さんが肩を竦めた。
「
…
と、こんな風によく分からないことしか言わないのよね。」
同じ日本語を話しているのに、話が伝わってこないなんて初めての経験だ。
「
………………
“おかしい”って、具体的にどうおかしいんですか?」
白跳さんの独特の言葉を、改瀬さんは通訳士に対する挑戦状として受け取ったらしい。瞳の中に闘争心を灯している。
「ぐたいてき
…
?」
白跳さんが目をぱちくりさせた。
「
……
とにかく、それについていっぱい喋ってくれません?」
「うーん
…
だから、いつもの空じゃないなー
…
あたしの知ってる青色はこんな手の届くところにないなーって」
「手の届く
……
?じゃあ、いつもの空と違って、今日見た青色の、空、は、手の届くところにあったんですか?」
「空は硬くないはずだもんー、不思議だねー、空って硬いのかなー、それとも手は届いてないのかなー」
改瀬さんが頭を抱えた。
「ぐッ
……
諦めませんよ、いずれアナタとコミュニケーションを取ってやりますからね。でも、今は戦略的撤退です!」
次は
天探
あめのさく
さんのグループだ。彼女は淡々と述べる。
「私からは2点よ。まず、食堂には十分すぎるほどの食料があったから、餓死の危険はないこと。そして倉庫には、生活に必要なものだけではなく、凶器になりうる危険な道具も置かれていたこと。殺人を防ぎたいなら対策を話し合ったほうがいいわ。」
天探さんが意味ありげに楠木くんたちを見た。
「
……
もっとも、最後のグループによっては全てがひっくり返りそうね?」
楠木くんは視線を返すことさえしなかった。
今のところ、脱出に直接関わる大事な報告は、裁門さんグループ以外にゼロ。だけど
…
最後のグループには何かがあるにちがいない。みんながそんな期待の目を向けていた。
「
楠木
くすのき
。最後の報告をよろしく頼むぜ。」
促されると、楠木くんは簡潔に述べた。
「
…
ボクたちからはただひとつ。地下へ繋がっている可能性のあるマンホールを見つけた。」
「!」
みんながざわついた。そのマンホールを使えば、脱出できるかもしれない
…
そんな憶測が波のように広がっていく。
「ここにしかないみたいだから、ただのマンホールじゃないと思う。倉庫から必要な工具を持ってきた。あとでみんなで中を確認しに行きたい。いいかな?」
「俺が発見したのにな~んで君が喋ってんの?」
口を尖らせた
昼間
ひるま
くんは、片手で細長い工具と懐中電灯を弄んでいた。
「ラノベの主人公みたいな顔して、美味しいトコだけかっさらっちゃってさ。」
「別にボクの顔面は特にキミに悪さしてないだろ」
楠木くんが冷静に反論すると、
「寧ろ良いことしかしてないよね!」
夜深
よふか
くんが目をきらきらさせる。
「悪さしてる!めっちゃしてるもん!サイテー!キライ!」
昼間くんはぶーぶーとひたすら文句を言う。
黙って眺めていた
榊
さかき
くんは、ちょっと意地悪な笑みを頬に貼りつけて昼間くんに近寄った。そうして彼の狭い額をつっつく。
「っつーか、昼間、お前は色々言いたいこともあるんじゃねーのか?探索場所決めるとき突然外に出ていった件について。たとえば『ごめんなさい』とか、『反省してます』とか。『二度としません』でもいいんだぜ?」
「知らないもん!」
「『今後は心を入れ替えます』ってのもアリだよな!」
「
…
とにかく。みんな話し尽くしたみたいだし、確認するってことでいい?」
溜息をついて、楠木くんがそうまとめた。
結論として、全員でマンホールの確認に向かうことになった。
報告を聞いてから、みんなの緊張が解けて一気に明るい雰囲気になった。特に改瀬さんは誰よりもはしゃいでいる。
「出口が見つかってよかったです!これで明日以降の学校には間に合いそうですね。」
「わたしは帰ったら練習に戻るわ。そこには、ゴミ箱に捨てるための時間は一秒もないからね。」
清忌さんがそう言う。ダンスの練習かな?慣れない環境で疲れているだろうに、かなりストイックだ。
「だ、脱出できそう?でよかったね。ぁ、ぁ、あのさっ、ここを出たらみんなで友達にならないッ?なんて
…
」
黒原くんが勇気を振り絞って声をかけた。
「ご、ごめんね。みゆはお人形さんのお友達がいっぱいいるから遠慮しておくね
…
」
「そ、そっか
…
ごめん
…
」
みんなと同様、私も内心はしゃいでいた。ここを出たら、まずは家族と警察に連絡しよう。みんなは気づいていないみたいだけど、警察署で事情聴取っていうのを受けるかもしれない。暫くは気が抜けないよね。でもそれが終わったら、私は安心して家に帰る。こんな事件があったんだから、お父さんが私の好物を作って待ってくれているはずだ。お母さんは心配していろいろな質問をするかもしれない。食事が終わったら友達にも連絡を送りたいけど、心配かけるのはよくないかな
…
?
「
…
舞い上がりすぎじゃない?まだボクは『出られる可能性がある』としか言ってないんだけど。」
背後からそんな微かなぼやきが耳に届き、そのまま消えていった。
私たちは、体育館の扉を開く。
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