真九龍
2025-09-10 19:48:53
48337文字
Public 小説
 

【鳴ライ】Sweet and Crisis

鳴海×ライドウで、”二人で女装”して潜入捜査するお話。
ラストのページはあとがき、と言う名の裏設定になります。
注1:両想いな鳴ライになっています。
注2:ライドウremaster版をプレイ及びクリア済み。ゲーム本編のネタバレが含まれます。
注3:攻めの女装表現が含まれます(勿論ライドウも女装します)。
注4:間接的ですが、名も無きモブの死亡表現が含まれます。
注5:女性軽視表現が含まれます。


─参─

捜査、絶賛難航中。
月曜日に実施した現場検証以降、鳴海達は慎重にならざるを得なかったからだ。
初老婦人の男嫌いに因る面会謝絶、つまり、事情聴取が不可能である事。お茶会の由り詳しい詳細を知る人物は、現時点で初老婦人なだけに、かなりの痛手となっている。偵察と侵入を得意とする仲魔を初老婦人の邸宅に送り込ませ、お茶会の情報を抜き取ってくる案も浮かんだが、仮に初老婦人が悪魔だった、若しくは香木を落とした件の悪魔が邸宅に潜んでおり、偵察がバレた場合、仲魔は抹消されてしまうだろう。ライドウが仲魔に思いやりを以って使役する以上、鳴海は此の案を許可することが出来なかった。
其のライドウは銀座町ミルクホール・新世界で情報収集を行ったり、晴海町に赴き、悪魔の残気や痕跡が無いか調べていた。時には初老婦人の邸宅周辺も調査したり、晴海町の異界にも踏み入れてはみたが、確固たる証拠の発見には至らず、成果を得られぬまま帰宅する日々が続く。ライドウの手元に有るのは、事件現場で発見した三片の香木のみ。

「此処まで調査しても、悪魔の痕跡が見つからないなんて
「例え下位や中位の悪魔であっても、人を喰らい続けて力を身に付けた個体は、高位悪魔にも劣らぬ存在となる自らの気配を完全に消し、人型に擬態して潜伏することも容易いだろう件の悪魔も、相当な力を付けていると思われる十四代目葛葉ライドウよ中々進展が無いからといって、決して焦るでないぞ
「ああ分かっている」

焦りは油断を生み、油断は隙を生む。己の判断を見誤った時、其れは致命傷へと直結する。進展が無く、焦燥感に駆られるライドウを、お目付け役のゴウトは静かに戒めた。

「定吉、面会交渉は成功したか?」
「門前払い一択だ使用人も警備役も全員女性を宛がう程、相当の男嫌いのようだからなかといって、女性相手に実力行使に出るのも気が引ける
「そうか俺は犠牲者の家族と友人が未だ何処かに居ないか捜して、事情聴取してみる」
「ああ、頼む。此方も穏便に事が済むよう、交渉を続けよう」

鳴海は犠牲者の更なる身辺調査、定吉は初老婦人との面会交渉と役割を分担し、捜査を進めていた。此方もライドウと同様進展が無く、唯刻が過ぎていくだけだった。
木曜夕方、件のお茶会まであと二日。

「うーん事件の犠牲者は、初老婦人のお茶会の招待客だった!て新聞で拡散したら、自分は参加したことがある!とか、今週末のお茶会に参加予定だ!で、名乗り出てくれるかねぇ
「身の危険を感じた者は名乗り出るかもしれないが、初老婦人は善意で開催しているお茶会に泥を塗られたと思い、怒りを露わにするだろう彼女に救われた者も加わってな」
「だよなぁ

新聞記事に事件の全容を載せたとしても、初老婦人側が盛大に抗議し、此方を非難してくるのは眼に見えている。お茶会の参加者を獲物とする悪魔も状況を感知し、逃亡を赦してしまう可能性すら有るだろう。捜査は益々難航し、泥沼に沈んでいく。鳴海と定吉は声を唸らせ、あれこれ案出しては取り消し、また案出しては取り消しを繰り返し、頭を抱えた。只管苛む二人の前に、淹れたて珈琲の入ったカップが置かれる。珈琲を準備したのは、勿論ライドウだ。ライドウは眉間に皺を寄せっぱなしの二人に向かい、口を開く。

あのお茶会当日に、自分が邸宅に潜入するのはどうでしょうか?」

鳴海と定吉に、ライドウは潜入捜査を提案する。しかし、二人共あまり良い顔をせず、難色を示している様子だった。

「”潜入”ねぇ其れも有りだが、デビルサマナーたるライドウの気配を、お茶会へ潜り込んでいた件の悪魔が一早く察知したとなると?」
「人間に擬態していた悪魔が本性を現し、ライドウ君が悪魔の許へ到着する前に参加者の命を奪うだろう」
………

二人の意見を聴き、ライドウは閉口するしかなかった。
事実、デビルサマナーたる己の気配を察知し、恐れを成して逃亡する悪魔も居れば、逆に襲撃してくる悪魔も存在する。デビルサマナーは敵対者であると同時に、己の力を上昇させる”美味しい獲物”として映るからだ。由り狡猾な悪魔は、其の場に居合わせた人間を人質に取る場合もあり、油断は出来ない。もし件の悪魔が後者であり、狡猾な面も持ち合わせていたら、最悪の結末が待ち受けているだろう。
急ぎ、別の案を立てねば。

「(そうだ、此れならどうだろうか)鳴海さん。潜入には退魔の香で気配を打ち消し、最低限の装備で挑むのは」
「なあ、ライドウ最低限ってどんな意味だ?仲魔の管を減らすことか?退魔の刀と銃を敢えて置いていくことか?件の悪魔は、かなり特異的な個体だと睨んでいるんだろ?そいつは強大な力を有していても、可笑しくはないお前の言う必要最低限の装備で、特異化した悪魔を討伐出来るのか?」
ッ、済みません僕が、浅はかでした

必要最低限の装備。
其れが鳴海の癪に障ったのか、憤怒を滲ませながらライドウに説く。ライドウが立てた案は、ライドウ自身にも危険が及ぶ。鳴海はライドウという人間を、今世を生きる一人の若者、そして、護りたい愛しき人として認識している。故に、強く当たってしまった。愁いある表情を浮かべたライドウが鳴海の眼に映り、言い過ぎたと自己嫌悪に陥るも、ライドウは鳴海がどんな気持ちを以って自分に説いたのか、心の底で其の意味を理解していた。

(帝都の守護者として悪魔と闘い、何時か殉ずるものだと思っていた僕は駒の一つに過ぎないそんな思考を変えたのは、鳴海さんだ鳴海さんは、僕を一人の人として見ているそして、僕を想っているそんな僕も、鳴海さんを想い慕っている鳴海さんが説いていた意味も、此処─心─が痛い程分かるけど、此のままでは、事件を解決出来ない)

八方塞がりとも言える状況と重苦しい空気が続き、捜査は進展のないままお茶会当日の土曜日を迎える事になる。