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真九龍
2025-09-10 19:48:53
48337文字
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小説
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【鳴ライ】Sweet and Crisis
鳴海×ライドウで、”二人で女装”して潜入捜査するお話。
ラストのページはあとがき、と言う名の裏設定になります。
注1:両想いな鳴ライになっています。
注2:ライドウremaster版をプレイ及びクリア済み。ゲーム本編のネタバレが含まれます。
注3:攻めの女装表現が含まれます(勿論ライドウも女装します)。
注4:間接的ですが、名も無きモブの死亡表現が含まれます。
注5:女性軽視表現が含まれます。
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─弐─
晴海町郊外の森の中は、第三の事件現場。
鳴海とライドウは定吉の案内に由って、遺体発見現場へ到着した。現場には海兵が数名巡回しており、物々しい雰囲気を醸し出している。海兵は定吉の姿を視界に捉えるや否や、即座に立ち止まって敬礼し、直ぐに周辺の警備を再開する。
「奥方の遺体が見つかったのは、此処だ」
「ふむふむ
…
ライドウ、何か感じるか
…
?」
「
………
─
…
」
「
…
?ライドウ君、一体どうし」
「ちょっと黙ってな定吉
…
ライドウの現場検証は、既に始まっている」
鳴海が声を掛けても、ライドウは”何もない所”を見詰めたまま、返事をしなかった。何処か様子の可笑しいライドウに定吉が声を掛けると、鳴海は直ぐに彼の言葉を遮り、ライドウの邪魔をせぬよう牽制する。
鳴海の言う通り、ライドウの現場検証は開始していた。ライドウは遺体発見場所にぼんやりと佇む霊魂を発見し、対話を試みていたのだ。此の霊魂は、三人目の犠牲者である奥方だった。彼女は自分の姿を視認出来るライドウに向かい、己の無念と未練を語る。
夫が自分と年の変わらぬ女の許へ行くのが、唯悲しかった。
夫が他の女の許へ行くのは、自分に魅力が無いからだと。
どれだけ献身的に支えても、私は報われないままだった。
軍人の妻たる私は、夫に黙って従うもの。
夫がどれだけ不貞を働いたとしても、私は黙認するしかなかった。
そんな折、私にお茶会の招待状と、目元を隠す仮面が届いた。
送り主は晴海町に住まう初老の外国人女性で、集合日時は土曜日の夕方五時。
招待状には、邸宅へ来訪する前に、指定の時刻と場所で仮面を付けること、名は絶対名乗らないこと、男子禁制であること、荷物の持参はしないこと、お茶会の事は誰にも口外してはいけないと記されていた。
厳しい条件付きだが、少しでも息抜きになればと思い、私は参加することにした。
終了時刻は特に記載されておらず、お茶会を心行くまで満足したら自由に帰ってもいいという意味だろう。
指定された時刻と場所で、仮面を付けて待機していると、迎えの者がやって来て、私を邸宅へと案内した。
英国式のお茶会─アフタヌーンティー─で、参加者は私を含めて二十人程。
男子禁制の通り、参加者全員女性だった。
仮面の所為で、一体誰がお呼ばれしたのか判別出来ない。
でも其処が面白可笑しくて、お茶とお菓子を堪能しながら談笑した。
皆のお話を聞いていくうちに、お茶会に参加した女性達は、何かしらの悩みを抱えていることが分かった。
私も夫の悩みを打ち明けると、皆共感し、労いの言葉と助言を沢山掛けてくれた。
ずっと圧し掛かっていた重りが取り除かれ、心が少し軽くなったような気がした。
主催の初老婦人は、悩みを抱えた女性を招待し、本音を気軽に吐き出せる場所と時間を設けたのかもしれない。
一通り話し終えたところで、私は皆から少し距離を取り、独りで庭を散策することにした。
此のまま帰っても良かったが、手入れの行き届いた美しい庭を、もっと見てみたかった。
白いベンチに腰掛け、遠くを見つめていると、声を掛けられた。
仮面の所為で顔と年は分からないが、隙間から覗く肌はとても美しく、艶やかだった。
何故肌が綺麗なのか尋ねると、秘訣が有るのだと答えた。
彼女は”私の美の秘訣が気になるのなら、教えてあげましょうか”と仮面を取り、手を差し伸べて来た。
見た目は三十半ばで、金髪碧眼の外国人だった。
彼女は微笑みながら、年は五十を過ぎてると答えた。
五十を過ぎても保ち続ける美しさに俄然興味が湧いた私は、甘い香りを漂わせる彼女の手を取った。
そして、此の森に打ち捨てられていた。
眼の前には、青白い肌で横たわる私の身体があった。
何処に連れて行かれたのか、一体何時死んだのか、私は全く覚えていない。
思い返せば、彼女には違和感があった。
見た目と年齢が一致しない外観、果実が熟したような甘い香り。
けど、彼女に美しさの秘訣を聴きたかったのは、まごうことなき事実。
私の悩みに共感してくれた女性達は、そんな夫とは離婚すべきだと勧めてきたけど、私は心の何処かで、夫が再び振り向てくれるかもしれないと僅かに望んでいた。
美に磨きを掛ければ、夫は浮気相手を捨て、私をずっと見てくれるだろう。
其れが出来なかったのは、私の甘さ故。
あの時、夫への想いを完全に断ち切れていたら、彼女の手を取らなかったら、私は死なずに済んだかもしれない。
私が言いたかったことは全て貴方に伝えたから、此の世に思い残しは無いわ。
でも、ひとつだけ夫に伝えて頂戴。
常世の入り口で、貴方をずっと待っているわ、と。
無念と未練を語った奥方の霊魂は徐々に薄れ、夫に意味深な遺言を残して消失する。女の執念は実に恐ろしいものだな、と、ゴウトは小さく呟いた。
「
………
─
…
鳴海さん、手帳とペンは持っていますか?」
「手帳とペンは探偵の必須品だ、当然持ってるぜ」
霊視を終えたライドウは、手帳とペンを構えた鳴海に詳細を伝える。鳴海はライドウが行った聴取内容を全て書き取り、早速推理を開始する。
奥方の霊魂の聴取だけで、かなりの情報を得られた。
一つ。
第一と第二の犠牲者も、此のお茶会の招待状を受けた可能性が有る。二人が出掛けた時刻は土曜日の夕刻、則ち、件のお茶会の開始時刻と合致するからだ。犠牲者の遺族や使用人が行先を知らなかったのも、招待状に口外禁止と記されていたからだろう。お茶会の参加条件を、彼女達は律儀に守った。其れが、捜査を撹乱させることになるとは。
二つ。
事件の犯人候補は、現在二人。
一人目の容疑者は、お茶会の主催たる初老婦人。何かしらの悩みを抱いた女性を極秘に調査し、招待状と仮面を送り、週末のお茶会に招待していた。想像すると、少々不気味に感じるのは気の所為か。しかし、奥方の遺言を聴く限り、初老婦人は同性同士で悩みを気軽に打ち明け、共感を得る場を設けただけのようにもみえる。
何方にせよ、初老婦人からの事情聴取が必要と判断する。
二人目の容疑者は、奥方に接近した金髪碧眼の女性。外見が三十代の自称五十超えで肌の艶も良く、甘い香りを漂わせるとは、”如何にも悪魔の所業っぽい”部分が揃い過ぎている。第一と第二の犠牲者も彼女と接触したとなれば濃厚だが、お茶会は全員招待状と共に届いた仮面の装着が必須で、尚且つ名を名乗ってはいけないルールになっている。仮に他の参加者が接触を目撃したとしても、名前と顔が割れなければ意味が無い。つまり、参加者からの聴取は不可能だ。
第一と第二の現場に移動し、ライドウの霊視で霊魂と接触するのも一つの方法か。
「此れからやるべき事は、第一と第二の事件現場の再検証と、初老婦人からの事情聴取だな
…
ライドウ、やり残しがあったら、今のうちにやっておけよ」
「はい」
鳴海の指示に、ライドウは封魔の管を構え、召喚する。
召喚したのは、雷電属ハヤタロウ。雷電属の捜査用特技と言えば、現場検証。ハヤタロウは遺体発見現場一帯に閃光を散らし、怪しいものや、隠されたものが無いか辺りを探る。
『
…
!ライドウ、あっちだ』
「
…
此れは、木の破片
…
?」
現場検証で何かを察知したハヤタロウは駆け出し、ライドウを誘導すると、其処に落ちていたのは木片一つ。見た目は何の変哲もない、麻雀牌くらいの木片だ。だが、此の木片からは、悪魔の残気を極僅かだが察知する。ふと、果実が熟したような、大変芳醇で甘い香りが鼻を掠めた。奥方が発言していた香りは、此れだろうか。
或いは、付近に悪魔が潜んでいるのか。
ライドウは神経を研ぎ澄まし、辺りを見渡すと、『香りは其の木片から出ているぞ』、と、ハヤタロウが助言を呈す。
「まあ、適当な所に落ちている木の欠片の香りなど、普通は嗅がぬものだからな」
少々赤っ恥を掻いたライドウだが、ゴウトの宥めで気を取り直し、自らも木片の香りを嗅いでみた。
(熟した桃と、メープルシロップを混ぜ合わせたような香りだ
…
)
「お~いライドウ、何か見つかったのか?」
「鳴海さん。此の木の破片から、香りがするんです」
「
…
木から香り?
………
ひょっとすると、香木ってやつかもしれないな」
ライドウが発見した木片を鳴海に見せると、鳴海は香木ではないかと答えた。
香木。
其れは、歴史上の偉人を魅了した逸品。金王屋の主人に此の香木を見せると、確実に良い値で買い取ってくれるだろう、とは、金銭面にちょっと余裕のない鳴海の談。
「僅かですが、木片から
…
いえ、香木から悪魔の残気を感じます」
「へぇ
…
犯人は悪魔説が益々濃厚になった、て訳か
…
」
「奥方と接触した女性は、人間に擬態した悪魔である可能性も高い
…
ということだな」
擬態を獲得した悪魔は、帝都社会の日常生活に溶け込んでいる場合が在る。但し、悪意も無く、此れと言ったトラブルを起こさない限り、基本放置で構わない。時々有益な情報をライドウに提供する等、適度な距離と関係を保っている状況だ。
しかし、今回の事件はどうだろうか。人型に擬態したと思しき悪魔が、人間の女性の命を奪った。勿論、悪魔が犯人であると確定した訳ではない。現時点では、可能性が単に濃厚なだけ。確証を得る為にも、捜査そのものは引き続き継続する必要が有る。
三人と一匹は第三の事件現場を後にし、第一の事件現場へと向かった。犠牲者の霊魂は現場に残留していなかったものの、仲魔の現場検証に由って、隠れていた木片を発見する。含まれるのは、悪魔の残気。木片を嗅ぐと、第三の現場で押収したものと同一の香りがした為、香木と断定する。第二の現場でも、犠牲者の霊魂は既に居なかったが、木片を発見する。香りと悪魔の残気、共に一致。
「改めて、三人の女性を殺害した犯人は、同一犯で間違いなさそうだな
…
」
「香木の残気から、悪魔の仕業かと思われます」
「法則に乗っかると、週明けにまた犠牲者が出る訳か
…
急がねぇとな。お~い定吉、現場検証は終了したぞ。次は件の初老婦人のとこに行って事情聴取だ」
「
…
鳴海殿にあれこれ指図されるといらいらするのは気の所為、ではないな
…
」
「定吉よ
…
其れは同族嫌悪、というやつだ」
全ての事件現場の現場検証を一通り終えた鳴海とライドウは、次の目的に着手する。重要参考人からの事情聴取は、探偵の必須項目だ。鳴海の台詞一つ一つに苛立ちを募らせる定吉だが、事件の解決を望む思いは同じと自身に言い聞かせ、私情を強引に押し込んだ。
行先は、お茶会会場たる初老婦人の邸宅。晴海町は外国人居住区のやや外れに、高めの侵入防止柵に囲まれた邸宅が建っていた。大変立派な庭付きで、花壇には季節の花が咲き、丁寧に剪定された低木が列を成す。富を得ていることが、眼に見えて分かる豪邸だ。錠門扉の前には二名の警備役が配備され、三人と一匹が降車すると、警戒心を露わにし、「即刻お引き取り下さい」と門前払いを喰らう。
「ええ?!何も喋ってないのに門前払いってどういうこと?!」
「御婦人の命により、男は誰であろうと一切通していけないことになっております」
「
…
ん?君達は
…
女か?女が警備の役割を担うとは
…
」
「女で何が悪い!女も鍛えれば強いと証明してやろうか!」
定吉が警備役の性別を女性と見抜いた途端、警備役は激昂し、定吉に掴みかかろうとしたが、もう一人の警備役が制止したことで、事無きを得た。門前の警備を男性ではなく女性が担い、初老婦人は男性との面会を拒否する。此れには、何か秘密が有りそうだ。ライドウは鳴海と定吉が初老婦人との面会交渉を一歩も引かず粘る中、封魔の管をこっそりと取り出し、仲魔を召喚する。
『ハロー、サマナーくぅん。ボクの力が必要みたいだね』
「モコイ、警備役の女性に読心術を」
『おまかせあれ~』
異国出身の悪魔、外法属モコイ。
外法属の捜査用特技は、読心術。その名の通り、人間の秘めたる心の内を読んでしまう技だ。モコイは警備役の女性に読心術を施し、其の心の内を読み始めた。
御婦人は大の男嫌い。
若い頃男に騙されて、其れはもう苦労したと涙ながらに語っていた。
其れから御婦人は此の日本に渡り、男との関係で苦悩を抱える女性達に救いの手を差し伸べ、再起する切っ掛けを作ってきた。
御婦人は婚約者に騙され、途方に暮れる私を救ってくれた。
私は元々腕っぷしが立つ方だったから、技を更に磨き、御婦人の警備役を自ら希望した。
私の希望を拒絶せず、快諾してくれた御婦人には感謝しかない。
此処最近の御婦人は、とても複雑なコネクションを使い、悩みを抱える女性を調べ、お茶会への招待状と仮面を送っているようだ。
顔を名を一切晒さない、週末土曜日午後五時の不思議なお茶会。
警備役として住み込みしている私にも、誰が御婦人の招待を受け、誰が参加したのかなど分からない。
お茶会中、私も仮面を付けるのだから。
けど、晒さないことが良い相乗効果になっている様子で、参加した女性達は沢山談笑し、ずっと抱えていた苦悩を打ち明け、互いに共感を得ていた。
此のお茶会が切っ掛けで、夫と別れる踏ん切りがついた、社会に進出する一歩となった、と言った感謝の手紙もよく届く。
御婦人のお茶会は悩める女性達を救い、前進する勇気を与えているのだと実感する。
御婦人は今週末もお茶会を開催する予定で、招待状を一つ一つ記して仮面を同封し、使用人が先程郵便局に届けたばかりだ。
参加者が仮面を付ける指定場所と時刻の確認、及びの誘導。
此の秘密のお茶会を成功させる為に、御婦人の為にも奮起せねば。
『だって』
「分かった。有難う、モコイ」
『困ったらボクを何時でも呼んでね、ライドウくぅん』
「中々有益な情報を得られたな、ライドウ」
ライドウはモコイを帰還させ、引き続き面会交渉中の鳴海と定吉に、一旦戻りましょうと声を掛けた。二人は大変不服な表情を浮かべていたが、ライドウが封魔の管を収めたホルスターに手を当てると、鳴海は仲魔の力を密かに行使したのだと確信し、定吉の腕を引っ張り、其の場から立ち退く。
全員車に乗り込み、移動する道中、ライドウは読心術から得た情報を鳴海と定吉に伝えた。
「成程
…
ライドウ君が一旦戻ると言い出したのは、既に情報を得ていたからなのか」
「俺達が警備役とひと悶着起こしてる隙に、仲魔の力でちゃちゃっと抜き取る
…
さっすがライドウちゃんだぜ」
「
…
ッ
…
あの、鳴海さん
…
此処は狭いですし
…
其れに、苦しいです(定吉さんと運転手さんの視線が痛い
…
!)
…
」
鳴海は満面の笑みで、ライドウを力強く抱き締めた。のだが、狭い車内の後部座席で堂々と抱擁、且つ同乗者の定吉と海軍兵の運転手が、此奴等は車の中で一体何をやってるんだ、と言わんばかりの冷たい視線で凝視してくる為、ライドウは慌てふためく。
「
…
鳴海殿だけ、今直ぐ降りてもらおうか」
「え~
…
?冷たいこと言わないでよぉ定吉さ~ん、俺だって捜査に貢献してたでしょお~?」
「
………
」
「さては鳴海の奴、いや、定吉もか
…
あの時の事を、相当根に持っておるな
…
?」
超力兵団事件の最中、鳴海は密かに探りを入れていたが、定吉及び海軍側に露見し、制裁を受けてしまう。海軍側が得た情報を得る契機にもなったものの、鳴海はライドウに斑駒の呪いを強制する要因となった定吉が、定吉は同胞たる海軍の精鋭兵達を単独で打ち負かした鳴海が余程許せなかったのか、事件解決後も根に持っている状況なのだろう。
(うう
…
鳴海さんと定吉さんに挟まれると、冷や冷やする
…
!)
「ライドウはライドウで、色々と大変だな
…
」
二人の険悪な空気を常に察知してしまい、萎縮するライドウが居ることも忘れずに。
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