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すなつき
2025-06-19 00:07:01
13996文字
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ウサギの嫁入り
黒毛のオオカミシリオンの中、ひとりだけ白い毛並みで生まれてきたことにより一族からその存在を疎まれてきたライカンと、
そのライカンの楔となるために番として選ばれ、はるばる嫁入りしてきたウサギシリオンのアキラ。
彼らが互いを知り家族となるまでの話。
Xにて投稿分をひとつにまとめました。
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朝食編
彼の好きなものは、何だろうか。
ひとりきりではなくなった家の中で、ライカンはフライパンを見つめながらぼうと考えた。
自分だけならば最低限の食事で充分だった。それこそ必要な栄養素が摂れていれば何とでもなる。
ただ、アキラには美味しいものを食べてもらいたいと、そう思うのはなぜだろうか。
フライ返しで綺麗に焼けたそれをすくい上げながらライカンはぼうと考えた。二つ並んだ皿。二つ並んだフォークとナイフ。慌てて棚の奥から取り出したランチョンマットの上に同じ様に乗せていく。磨かれた小さなテーブルは二人で満員だ。
中央には花を一輪。それから小皿に持ったサラダと、マグの中に注いだスープ。
彼は朝はコーヒーが譲れない人だろうか。
それとも自分と同じ紅茶を愛してくれる人だろうか。
開け放たれたカーテンの向こうですっかり日差しは高く登って、柔らかな日差しを殺風景な庭に満遍なく降り注いでいた。
ふと、ぴくりと耳が動く。さして広くはない家の中だ。軽やかな足音にライカンは堪らず、ふふ、と小さく笑った。
「う、わああ! ごめん! まさか寝坊してしまうなんて! 本当にごめん!」
「ふふ、おはようございます。良く眠れたようで何よりです。疲れは取れましたか?」
「うん、おかげさまで」
寝間着のまま、あちこち跳ねた髪を何とか撫でつけようと躍起になるアキラをテーブルへと案内してやれば、わわ、と目を輝かせた。
「これ、ライカンさんが
……
!?」
「ええ、僭越ながら。あなたのお口に合えば良いのですが」
アキラの向かいに腰掛けながらどうぞ、と促せば彼はキラキラした目のままそっとフォークを持ち上げた。
目の前の白い皿の上には、きつね色に焼けた表面が眩しい分厚いホットケーキが二段積み。たっぷりと蜂蜜をかけて、艶めくそれを慎重に切り分けたアキラは、ぱくりと一口頬張って長い耳をぶるぶると震わせた。
「アキラ様?」
「
……
おいっ、しぃ
……
幸せすぎる
……
ライカンさん結婚してくれ
……
」
「ふふ、実はもう私たち結婚しておりますよ」
そうだった!とアキラは満面の笑みを浮かべて二口目を運んだ。本当に幸せそうに顔を緩ませて耳までほわほわとした空気を出すアキラを目の前にしてライカンはどこか胸がぽかぽかと暖かくなる感覚を噛み締めながら、自らも一口ホットケーキを食す。
朝にしてはちょっと遅くて、昼にしてはちょっと早い。そんな時間にゆっくり食べる温かな食事は今後、ライカンがその腕を存分に振るうことになる。
「ねぇ、ライカンさん」
「はい、何でしょう」
「あなたの好きなものをひとつずつ教えてほしいな」
「
……
ええ、ぜひ」
(代わりにあなたの好きなものも、ひとつずつ教えてください)
(もちろんだとも! まずひとつ目はね、ライカンさん。あなたかな)
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