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スサ
2025-04-15 18:17:47
16303文字
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【鬼水】百夜通いする話
たぶんスパコミの新刊になります。百人一首×百夜通い、ただ百全部は書くのも見るのも大変なので十数首をピックアップします。
※適宜追加(4/27追加)
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一世一代の告白だった。
正座で向かい合う養父はあまり見たことがない顔をしていた。神妙でいて、瞳の奥に一欠片迷いようなものがある。
「あなたをお慕いしています。どうかあなたを丸ごと僕にください」
もっと緊張するかと思っていたのだけれど、案外なめらかに言葉は滑り出た。
相対する彼はちらりとこちらの栗色の頭を盗み見た。
「父さんならいませんよ」
「
…………
」
「いくらなんでも求婚の場に親を連れてきたりはしません」
「
……
相手が親の場合は?」
己を指さし問う男に、鬼太郎はむぅ、と眉をひそめた。
「その言い方はずるい。あなたが僕を育ててくれたことを忘れたわけじゃない」
そこまで強い調子で言ったわけではなかったが、養父、水木は黙ってしまった。困った、という顔をしている。
あけすけな程に顔に出てしまう彼の、そういう拭いきれない善良な所も鬼太郎は好きだった。
ただ、「あなたが僕を育ててくれた日々があなたへの気持ちを育てた」は言ってはいけない気がした。少なくとも今は。もしかしたら水木は彼自身を責めてしまうかもしれないから。
「水木さん」
「
……
なんだ」
突き放せばいいのだ。だが水木にはそれができない。
「明日から百夜、ここに通います」
「
…………
?」
水木は素直に首を傾げた。何を言っているのかわからないという顔だ。
鬼太郎もそれを最初から考えていたわけではないので、口に出してから一瞬悩んだが、きっとこれが正しいのだと果断に選んだ。
「小野小町だって百夜通ったら多少は心を傾けてくれたわけですし」
水木は目を見開き、それから呆れた顔をした。
「
……
わかった」
ぱっと輝いた鬼太郎の髪を少々乱暴にかき回し、水木は釘をさすように付け加える。
「だが、縁起でもないことを言うものじゃない」
「え?」
「深草少将は百夜目に亡くなってしまうだろう」
ああ、と鬼太郎はにんまり笑った。
「お義父さんはきっと、百晩経つ前に戸をあけてくれるんじゃないかと
…
」
馬鹿、と最後まで聞かず水木は鬼太郎の頭を小突いた。その顔は本気で憤っているように見えたので、鬼太郎は「ごめんなさい」と素直に謝った。
「大丈夫ですよ。僕はかよわい人間ではない」
「
…………
」
苦虫を噛み潰したような顔をする水木の手を鬼太郎は素早く取った。そしてその甲にさり気なく唇で触れた。
水木の目が驚きに見開かれる。
「百夜通う間に、あなたの返事を聞かせてくださいね」
断られるとは思わないのか、と口まで出かかったが、水木は「勝手にしろ」とぞんざいに答えただけだった。
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