akinoshiroihana
2025-04-14 21:32:47
13014文字
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名刺置き場3

2023手術入院ひまつぶしゲッター


●鬼百合①

「さわんじゃねえ」
ついでに騒ぐんじゃねえぞ
隼人が心底迷惑ですという顔で庇った小さな膝小僧には確かに赤い物が見えた。いつもと違う、風通しの良さそうな、色の薄いネグリジェみたいなそれに(ネグリジェってのはワンピース型の寝間着の事しか指さねえよ、との突っ込みは当人から先日もらったが、どうやら俺はもう忘れていたようだ)。
そもそもはこいつがバレエ漫画の、トゥシューズに画鋲を仕込まれる系ヒロインばりにしょっちゅう足を怪我するのが、『瀕死の白鳥』をぱた、ぱた、と踊り切る代わりにシャインスパークで百鬼メカを粉砕するだけしてあとはコックピットでバッタリなんてこともままあった身なのがいけない

いいから見せろ違うよ触んな怪我じゃあないのなら触って大丈夫だろうあっもう、このバカっ
声を殺しての言い争いから振り切ろうとするのを引き戻し、だんだん乱暴になり押し合い圧し合い、ついにはばきばきという音と一緒に真夏の熱を帯びた生け垣を破壊しつつ二人倒れ込めば、槐の淡い翠の絨毯の上隼人は唐突に朱に染まったし俺は手に血塗ったかのようになった

花粉だよ、百合の———鬼百合の
贈り物なら葯を取るなり拭うだのしてあるからすっかり忘れちまってた

騒がれた挙げ句、沽券にかけて面倒な汚れを落としてみせようなんて女性陣に着かけの服をひっぺがされでもしたら見られたもんじゃないし申し訳無いから着替えに行こうと思ってたってのに、まさかお前さんが騒ぐとか
触ったり洗っちまったりする前にブラシで気長に払ってやりゃあよかったんだけどよ、
どうする、これ
両腕の間に閉じ込めた隼人は、望まぬ腹モフ客が来たときの猫みたいな神妙と不本意の混じった顔をしていた(かくてGであいつが着ていた夏服は、わずか2話の儚い命だった)

***

「はやと、さん」
ごめんなさい、気を付けたつもりだったんですけど、とは海の底の皇国から来た子供の弁だった。蛇の腹のように白い肌がオレンジどころか赤に近い色にべっとり染まっている
「ついてくるならその背の高い花には特に気を付けろと」
なかなか取れないんだぞ、この色は
その瞳と同じくらい真っ赤に染まった手を取り、「彼」は見はるかす、旧研究所敷地の一角。また夏が来ていた。

「『猿ども』の血の色のよう、かな?」そう人の悪いことを聞いてみれば、
ええ、エイプ・ブラッドよりは毒蛇に噛まれた時の出血色ぐらいが僕らの方での「お品のいい赤」だって言われますね、などという殊勝なんだかふてぶてしいんだかわからない返事があった

だから「彼」は思い出した、彼を。