akinoshiroihana
2025-04-14 21:29:56
13333文字
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名刺置き場4




「魚ってなぁ干してもいい具合に脂巻いててうめぇけどさ、昔っからこの尻尾近くのイガイガが残念ってか」
「ゼイゴっていうんだよ、そこは。鯵ぐらいにしかないぞ基本は。あと食事中だ、肘突くんじゃない。」

「さすが服部の館はすごいのう!夕餉によう脂を巻いた干物が出るだけでのうて、とれとれの海の魚や藻塩も来よる!」
「しぃ、じゃ竜のよ」

志摩の地頭衆のひとりに嫁いだおばばさまの孫一族がの、今も届け物をしてくれることがある、それだけじゃ
「鯵のここは楯鱗(ぜいご)というのじゃよ。」

そこまできれいにしつらえたでもなく、小魚を追って飲み込みかけたのが口からにゅっと出ている魚までかまわず届けるものであるので、ときにその腹に子細な文が隠されていることもあるとは読み切れたものでもない。生命線の塩の補給先という長い目で認識される方が先なので。

地頭十三人衆の九鬼一族。
信長の焼き討ちを寸での差で伝え、服部一族が壊滅を逃れることとなる縁である
この四百年先も色を売る女達を集めた半ば治外法権な島が浮かぶ郷で、少年期の半蔵が初めて飲まされた強すぎる蒸留酒に悪酔いして、暮れゆくぬるい波打ち際に吐いたこともあった。

「ゼイゴは取って食えよ」
言いつつ自分の魚からその硬い部位を器用に外す彼を見守った差し向かいの竜馬が「ん」との応えとともにその一夜干しを浚い、ぽいと自分の口に放り込んだ。
……なにしやがる」
表でまでいちゃつくのはよせ、そう含ませたつもりの隼人の言葉に、機嫌よく飯を掻き込んでいた竜馬は「いやなんかなつかしくってよ――じゃねえな、あれ、なんだ今の」などと首をひねる。
なんかさ、お前にこうやってもらったってかしてもらいそうていうのか、とにかく嬉しかったんだよ。
既成事実にするな。
あれ?

膳をついと横にのけてよく見ようとにじり寄って来た幼い竜之進をどうしたものかと考えつつ、箸で摘んだ身を差し出してやれば、彼と同じ年の頃の子供は嬉しそうにあーんと口を開けた。このあとどれだけ巨大に育とうが構わずホオジロに甘え続ける郭公の雛のように

そんな浅間山の麓。伊州の奥。朝餉。