akinoshiroihana
2025-04-14 21:29:56
13333文字
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名刺置き場4




逆だったら良かったのに

「随分鮮やかなお召し物だったんですね」
お寒うございます、と研究所廊下で白い息を吐き挨拶した子供は、部屋に招き入れられ、鉱石標本の琥珀かガーネットみたいなコーヒーシュガーと白湯で饗され、彼のために今しがた点けられたストーブの火の匂いに目を細めた。
彼には少し高い椅子から降り、幾つかの写真立ての中の一つ、心持ち隠れ気味な位置にあった上に小さなそれを、迷うことなく引っ張り出した子供はそう言う。かつての仲間との、「最初の三人」がパイロットスーツではなく普段着で、当時の早乙女家居間かどこかで寛いでいる姿。フィルムカメラを使ったらしいカメラマンの腕は決して良くなく、目が猫のように光ってしまっているものまでいる、が、三人とも笑っていた。まるで信頼できる子供にでも向けるような表情で。目の前の男の往年の姿は、目にも鮮やかな色のシャツをまとっている。
ああ、たまに驚いたりなんなら呆れる者もいるよ、
子供の頃から血色が悪くてな、少しでもマシになるようにとそういう色のセーターだのマフラーだのばかり与えられていたんだ。おかげで女々しい奴と勘違いされては相手を泣かせてしまったものだ。
少年期の終わり、青年期の始まりにさえ、まだ針金体形の中に鋼の強靭さを秘めていたかのようなその写真を見るに、彼の幼い日がどんなに寄る辺なくはかなげな子供の姿をしていたか、想像するに容易かった。
「逆だったら良かったのに。幼いあなたが僕の国に―――故郷に来ていたら、『白蛇様』だと一目でわかってくれたと思いますよ」
みんなと違うことは寂しいけれど、奇異なものとして「自分より下」と見られたことはそうそう無かったので、地上では驚いているのだと真っ白な肌で真っ赤な瞳の子供は既に彼になら告げていた。かつてのゲッターの白い戦闘機乗り、白い戦鬼を駆った「最後の一人」に。

「でもちょっと面白いですね、そんなことだっただなんて。僕の故郷でジン・ハヤトと言えば、蒼白な面の下、血の色のマフラーをぶら下げた、恐ろしい戦士に描かれていたっていうのに」

     *

逆だったらよかったのに

「あの子の恋煩いが一過性のものであってくれなければ、正直なところ申し上げますとな」
ハン博士は地上土産のその小鳥の形のケーキを、子供を怖がらせないように注射するにも似た速やかさで切り分けつつ言う。クラム地———ケーキくずでひな鳥の綿毛を再現したその菓子が気に入ったというのは、立派な池の鯉がさして変わり映えしない麩菓子を喜んで集まってくるのに似ている、と橘翔は思った、思ったが言わないことにした。話がすでに面倒だったこともあって。
「あの子の爬虫人類遺伝子と猿猴人類遺伝子が今後の成長曲線にどう影響するかは読み切れたものではない」
老いた「バット将軍」同様哺乳類の、海獣の家系らしい好々爺は、年を重ねた分巨きくなり続けたその小山のごとき体躯で、数年ぶりの地上土産の「ぴ〇りん」をつついてため息をつく。
それはつまり、力士が華奢な女性とゴールインしたときなどに、毎度密かに下世話にザワザワされる系のああいう、
つまり、

「そうだな時々思う、俺ではなくあの人の方に爬虫人類の遺伝子があるのなら、未来にそんな懸念を抱くこともなかっただろうと」
おい誰だ、巨女もののエロ本なんてマニアックなもん通販したの、それを仮眠室に忘れてったバカは。カムイが間違った感じに前向きになってるぞ
事態は神所長の命令一下、その粗忽者の洗い出しと、「メンタルに傷を負ったかもしれないカムイ」の捜索騒ぎとなっており、とくに理由もなく巻き込まれて一緒に隠れているのは拓馬と獏であって

あの人を傷つけてしまうよりはいっそ、俺があの人の手のひらに乗るくらいの体格差でもいいんだ、
「いさぎよしってか極端」
そうしたら俺はあの人の肩に乗って敵に向かって「焼き払え!」と
「やめろよー!」
もしくは二人で手を取り合って、一緒に破壊と裁きの言葉を唱えるんだ「「目だ耳だ鼻!」」
「混ぜんなぁぁ!」

アンドロメダ流国侵攻は、本日休業
地上は平和である。



(了)