akinoshiroihana
2025-01-22 02:24:28
11949文字
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ラ―ヒュンワンドロ2025名刺原文




『ラーハルトの野郎がおかしい』
と、パプニカ王宮に親友を訪ねた大魔導士が書いて寄越した。
半魔は現在、彼の国の式典でレオナとともに重要な役目を果たす主君の護衛を務めている筈だ。式前からの数週間、あの島に渡る彼を見送り、自身の推定故郷にして自身が灰燼に帰した国に踏み入ることを、銀色の彼は自粛した。湯治先で試した鍼治療が裏目に出たところであり、嘗ての仲間を驚かせたくなかったので。
そういうわけで暫くは蚯蚓ののたくったような返事しか書けんしむしろサボらせてもらうぞとだけ返したというのに

『なんだか宿房がすげえくっせえんだ、王宮に出る時は臭わねえようにしてるけど』
『つまり俺の部屋までくせえんだよ!
たぶんてめえんとこのラーハルトのせいで!』
『何かが腐ったみてえな……?アーあれだあれだ、牛乳こぼれたのを拭いた事のある雑巾みたいな!あ?そんな小学校みたいな所には通わなかったからそんな掃除用ロッカーの惨状みたいな話はわからん?わかってんじゃねえかコノヤロ』
『わかんねえけど間違いなくあいつなんだチクショウ(´;ω;`)夜になるとまいど何かチャプチャプと水音がして何かを洗い流す音がそれに続いてさあ
 なんかやばいモンの証拠隠滅でもしてんじゃねえのかイヤそれにしちゃ腐るの早すぎっだろ計算が合わねえわかんねえなあああ』

つまりあれだ、こっちに着いた最初の夜に、金色に染まった並木道に立ってたあいつに「カムフラかよ魔力要らずのマヌーサかよ」と声を掛けてみたら実につまらなさそうに振り向いたあいつに「なーんだしけたツラしてやがんの、ダイ様かあいつがいねえとツラも維持すンのをケチんのかよ」と絡みかけたら、あいつが急に何かに気付いたか思い当たったみたいに探偵物~知恵者話の気難しい天才たちが奇行じみた仕草で真実を導き始めたみたいに、ばっとしゃがみ込んで枯葉の上に手を這わせて何か探すか拾うかしてて、それからすぐだ、この物凄い匂いが始まったのは
ああ師匠、俺はあいつに一体何を気付かせてしまったんでしょうかタスケテ(あっ間違えた、これヒュンケル宛ての手紙だったぜ)

更に幾度か、黄色い月は昇り月は沈み
式典が終わる頃、悪臭消しのために香を焚き込み続けた大魔導士が、いろいろ混ざりすぎて剣呑な匂いの抜けない荷物と頭髪ともはや全身をばさばさごしごししつつ辞去の準備をしていると
「お前も持って行け」
そう、軽い紙袋が渡された。
「『銀』の『杏』というそうだ」
金の並木道の上に、ここに来ていないあいつと同じ「銀」が落ちているのを思い出させてもらった礼代わりだ、外の果肉を腐らせて落とし、なよやかな人肌のように白い種を割って実を取り出せば、火で焙るまではあいつの瞳よりは明るい緑をした可食部が出る
……へえ」
「食い過ぎると良くないが料理の材料としては重宝される」
「へええ」
「ただこれであいつに何か作ってやるにあたっては、アバンの書にある『茶碗蒸し』がまず所望されるだろうところが業腹だ」
「へ~~~えええ、ゴチソウサマだよコンチクショウ!」

なにはともあれ、帰ったらごちそう。


●お題『ごちそう』