「俺の知っている味ではない」
ベンガーナの繁華街で適当に選んだシンプルな名前の料理が来てみれば、半魔が顔には出さないままに、なかなか嫌な駄目出しをした。
「思い出の中のこれはもっと硬く塩辛く、かすかに苦くもあって」
だがそれが熱いスープになるために働けた自分が誇らしくもなった懐かしい味で
寒村に入ってくる貴重で保存のきく動物蛋白といえば大抵これで、共同の水場を使わせてもらえそうな時に、人目を盗み大急ぎで行っては、塩漬の魚を洗わせてもらって逃げ帰る。それは、幼少時からはしこかった彼の仕事だったという
半魔の気負う事無い過去話には息をするようにそんな迫害の大前提がある。聞く方も話す方ももう慣れた。
「すまんな、俺の福引の結果がこの界隈の飯屋の割引券銀貨一枚分x2で」
「ニシン蕎麦」なる上半分だけは正体の知れたメニューを、彼らは差し向かい席で啜り身体を温める
「ダイの随身でポップについていけばよかったのに、」
特賞の『ナントカ貴族食べ放題無料御招待』とやらを引き当てていたんだろう?そう言われれば、ああいう肉と脂身の塊にかぶりつきたがる連中に付き合いがあったためしは無いし、嘗て俺の家庭が渇望して叶わなかったものの代わりになるものでもない、と半魔は淡々と、にべもなくとても淡々と答えた後で「しかしお前の『うんのよさ』は相変わらずだ、宝引富籤でさえ」そこでうっすらと笑いが漏れた。
身体の単純な欠如感が自尊心への傷や孤独の意味に同一化しやすかった彼には、長じて後も補給は傷の手当のように静かで信頼できる場でのものであるべきなようだ
「うーん、夢の中でなら最近何かに大当たりした気がするんだが」
「なんだそれは」
「いやわからん、不思議とここ数日続いてる夢なんだ」
でもああそうだ、お前たちとこんな感じの保存肉の糧食を食べていたのを思い出した、それで俺が当たりを引いてとても嬉しかったような、よく思い出せないが。そういえばお前が何か怒って飛び出した後それでも帰ってきてくれてそれから
―――いやいい、多分今夜また続きを見るさ
「ふん?」
ほろほろと崩れる甘い魚肉を噛み締めながら
その夜『ミート・キューブの作り方は
……』などとの寝言をいう戦友の穏やかな寝顔にそっと触れた半魔とか、最近藤子F不二雄短編集が本棚にある金属生命体が盛大に茶を吹いたとかは別の話。
●お題『くじびき』
あれです、藤子F不二雄先生のカンビュセスの
……
ヒュンケルは1/10の確率を引き当てた模様です、スゴーイ
……?w
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%A5%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%B1%A4
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