
昔は早く大人になりたかった
自分がなにものかだけはわかっていたから、早く大人になって、からだを完成させたいと
そうしたら魔王様に立派な死霊の騎士に生まれ変わらせてもらおうと
大人になることは明解なゴールで新たな始まりだったんだ
輝かしい終焉と誕生
それがどうしたことだ、生きた人間たちの間にあれば、いつが大人としての完成だかわからない
旅人などのふりをして彼等の間を行けば、おれのもつ力は気付いても信じてももらえず、なんとなれば御しやすしと侮られるか優しくされさえした
これでは場所を取らない子供のままでいるか、一気に四十五十くらいになってしまえばいいと思った
「男というのはそういうものだ」
そんな狭い、何かを拒むような区切りで半魔は青年を自分と同じ方に引き寄せ、閉ざす
ふたりきりの閨で、慰撫するかのように
俺の父の年を、俺の母は語らなかった
母を愛したときの年齢を
自分がなにものかだけはわかっていたから、知りたいと思ったことは無かったな
今ぼんやりと感じ始めたことは、俺が心の欲する所に従えども、矩(のり)を踰(こ)えんようになるには、七十年でもまだ足りるまい
きっとやらかすだろうから
ゆっくりとすべて愛させてくれ、からだが、こころが、半人であるおれたちだから

●筋肉
「今回は火炙りになるところだった」
大戦後の地上世界を、よせばいいのにときに一人歩く青年は、
案の定その前身が割れたり、ついうっかりの人助けでただびとではない闘気技を使ったり、常人の比ではなく気配に聡すぎたり遠くを見通したり、そうでなくてもその何処の者とも知れない髪の色で悪目立ちしたことひとつでなかなか洒落にならないトラブルに陥ったあと、ようよう帰ってくる。今回の彼は真珠貝みたいな青い虹が宿る銀髪をなんだか焦げ臭い匂いにしつつさらりと言う。
「モンスターの下手なモシャス扱いか邪教徒扱いか?」
「いや魔女だと」
「 」
吐いてみた皮肉が通らず、返ってくるのはそんな応えだったから半魔はあおった陶製のジョッキを噛み砕きそうになる。今度はいったい何をもってだ、モンスター達と言葉を交わしたか、前勇者に授けられた知恵でもどこぞの因習村でうっかり見せたか。
「いや単に」
溺れてる子供を助けに行ったが、幼少期のアバンとの一件を思い出し身体が強張った気がしたと思ったら、そのまま石のように沈んで行ったのがあれはおかしい、水に沈まない魔女がそれを胡麻化そうと何か魔法を使っただろうと
余所者嫌いな貧しい土地での人命救助にケチがついただけで、
「沈んだのは俺の体脂肪率とやらが低すぎたせいだな」
ああ、と半魔は天井を仰ぎ額に手を遣る。今回この優しすぎる男を窮地に追いやったのは、もはやその貌でも声でもしぐさ足取りでさえもななかった、それはただのししむらトルソー肉体表に出すことも無い温かく脈打っているだけの
筋肉。
なるほど世界は何が何でもこいつの全てにいちゃもんをつけたいのだなと、ラーハルトはまた少しこの世が許しがたくなった
恐ろしい夢を見たと半魔が深夜青年を揺り起こした。
大丈夫只の夢だ、ほら話してみるといいどんな夢だったか、
話している端からばらばらになってしまって砕けて消えてしまう、何が怖かったのか悲しかったのかもわからなくなるさ
砕けて行かないとすれば
―――それは本当の過去だけだ
言われてみれば彼は「現実ではなかったが酷かったのだ」と。
耳だけでなく、怒れる鳥のようにうなじの毛までぴりぴりと逆立てた彼は、慰撫する青年の白い手を不機嫌に払い、しかし思い直してそっと両手で包み込む
「海辺の町から出て」
「うん」
「険しい痩せた山々を背にした森の中を行けば」
「うんうん」
「不意に寂しい村落とも言えん所がひらけて、そこで休ませてもらうんだ。
ここがまともな村になるには商人が必要だとぼやかれて」
「商人」
「そうするとお前がくすり笑って、今の俺なら商人装備でもさして変わらんと言い出し」
「そうだな」
「暇なのかお人好しめとおれは意地悪を言いつつ、商人に転職したお前とともにまたその村落に。お前は肩にした正義の算盤をしゃらりと鳴らし」
「ふふ」
「そのとき突如何処かからバラン様の大音声で『いかんラーハルトそれはFC版だ』という叫びが降ってきて、俺は取り返しのつかない事が目前に迫っているとお前を止めようと大声で叫ぼうとしたら目が覚めた」
「
―――それのどれが怖いんだ?」
「うーむ目が覚めたらよくわからん」
FC版DQⅢ しょうにんのまち
それは何の警告も無く
だれかひとり えいえんに うしなうまち
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.