さもゆ
2024-12-10 03:42:48
82844文字
Public 吸死
 

【ヒヨロナ】ロナルドと永遠のきょうだい

弟を亡くした吸血鬼に弟認定されてしまった退治人と、その周囲の話。
※自我と名前のある吸血鬼兄弟と女性がガッツリ出る。話のメインまである
※捏造過多
※ロくんの本名有

2024.9.18 たべものpixiv投稿作品


 むかしむかし、あるところに、赤い目の鬼がいました。
 鬼には名前がありました。
 一族みんなから呼ばれる素敵な名前でしたが、ある日、その名を三度呼ばれると、一族のみんなは消えていなくなってしまいました。
 鬼は恐ろしくなり、それきり、誰にも、自分の名前を言おうとはしませんでした。

 しばらく経ったある日、鬼はひとりの人間と出会いました。
 人間は少し変わった見た目をしていたので、村から追い出され、鬼の住む山まで迷い込んでしまったのです。
 最初は警戒していましたが、鬼は、人間のことをとても気に入り、まるで弟のように可愛がりました。
 人間は体が弱く、鬼にとってはすぐに死んでしまいそうで、大事に大事に、その小さな弟と一緒に暮らしました。
 そして、弟がいいと言ってくれたので、鬼は人間の弟を自分と同じ鬼にしようとしました。
 鬼は弟に言いました。

 何かあったら、名前を呼べ。
 助けてほしいとき、どうしようもなくなったら、俺の名前を三度唱えろ。
 そうしたら、そうしたら。必ず俺がおまえを助けてやる。

 弟は、頷き、そうして半分だけ鬼になりました。体が弱かったので、一気にぜんぶ、鬼にはなれなかったのです。
 弟はよく、鬼の名前を呼びました。一度、二度、呼ばれるたびに鬼は冷や冷やしましたが、久しぶりに呼ばれる自分の名前が、何より一等、素敵なもののように思えました。
 三度呼ばれることはありません。弟は賢く、優しかったからです。だからどんなときでも、兄の名前を三度呼ぶことはありませんでした。

 あくる夜のことです。
 鬼のいない間に、弟は村人たちに捕まってしまいました。
 人間にとって、鬼は、恐るべき魔物です。野放しにしてはおけませんでした。
 弟は木に磔にされ、石を投げられましたが、何も言いませんでした。
 槍で刺され、火をつけられましたが、何も言いませんでした。

 助けに来てくれる鬼の名前を、決して呼びはしませんでした。

 兄が駆けつけたときには、もう、灰も残ってはおりませんでした。

 兄は怒りに狂い、村人たちを全員殺して回ると、弟と一緒に暮らした山へと帰っていきました。
 それ以来、その鬼の姿を見た者は、いません。
 その鬼の名前を呼ぶ者は、誰も、いません。
 
 

 ──とある地方の吸血鬼に口語でのみ伝わる、日本の吸血鬼伝説より。※内容は話者によって異なる部分がある模様