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太公望と普賢
トリミング 望普編9
twitterなどに掲載していた極短編のまとめです。望普、伏普、原作軸、現パロなどいろいろ。
「普賢真人、実は崑崙十二仙になりました!」
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【夢見る凍土】文字書きワードパレットより/氷、節電、お祭り
立ち寄った洞府は水を打ったように静かで、夏の風に揺られる木の葉の音さえ聞こえてくるようだった。部屋の真ん中に、見たこともない巨大な装置がいつのまにか据えられており、その傍で普賢は塑像のように座り込んで、かたときも目を逸らさない。耳をすませば、ぽちゃん、ぽちゃんと小さな水音が一定のリズムを刻んでいて、どうやら大きな陶器の甕から彼の手元の硝子容器の中に、水滴を落としているようだった。
「
……
これはなんだ」
ほとんどささやきのような問いかけに、普賢は「純水を作っているんだ」と答えた。
「今度の祭事で氷を献上することになって」
「氷?」
「透明の氷を作るには、不純物を含まない純水を使うのが大前提で、先だってから溜めていた雨を濾過しているんだけれど、そもそも雨は大気中の塵などを包含しながら落ちてくるから、どのレベルまで純水にすれば芯まで透明の氷ができるのか分からなくて、時間差で水を取り分けることで最適なものを」
「もうよい」
延々と続きそうな蘊蓄にうんざりして、太公望はため息をつく。要するに探求心に火がついて座り込んでいるのだ、こんな暑い日に。夏の祭事に氷など無茶なことをとも思ったが、彼の宝貝を使えば案外難なく叶えられるのかもしれない。
氷を作るならこの部屋も涼しくなるだろうか。そんな期待半分で隣に座り込んでみたが、水滴が落ちる速度はずいぶんゆっくりで、じっとりと汗がにじんでくる。涼しげに見えたけれど、普賢の額から頬につうと汗が流れ落ちるのが見えて、思わず指先でそれを拭った。
幾億年もの凍土の下に、太古の生物が凍らされていると聞いたことがあるけれど、あれもこんな感じだろうか。暑いとか、退屈だとか、そんなつまらない話をしながら、二度と帰れない夏の一日に閉じ込められるのだ。
でも、それはそれで、しあわせなのかもしれない。
「もうそろそろいいかも」
八分目まで水がたまった容器を満足そうに抱えて、普賢はようやく顔を上げた。
「これでようやく氷ができるな!」
「うん、三時間ぐらいかけて凍らせるんだけど」
「まだかかるのか!」
がっくりと肩を落とすと、しょうがないなあと笑って宝貝を掲げる。
「少しだけだよ」
晩秋の風を取っておいたみたいな冷たい風が、夏の部屋に満たされていく。
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