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RONPA HABIT

本編まとめ【https://x.com/HabitRonpa】



❑4章

―――

あなたの■■た顔が見たくて、私が出来うる限りの■■をあげた。
それがあなたにとっての幸せだと信じて疑わなかった。違う意見があるだなんて、考えもしなかった。

気心の知れた友達もいて、美味しいものも食べられて、それから。
そんな、ありふれた幸福に満たされた日常が味気なく思えていたあの頃に戻れたのなら、どれだけ良かったのだろうか。

――――

なんだかどんよりとした空模様でした。気圧からくるものでしょうか、少々の頭の痛さを感じながらも体を起こしました。
まだまだぼんやりする頭で部屋の中を見回すと、カヌレちゃんは丁度出ていくところだったみたいです。

フラフラしているような気がしますが、気のせいでしょうか?もしかしたらわたしが揺れているからそう見えるのかもしれません。
感じた違和はすぐに消えてしまいました。それからわたしは身支度を済ませ、ご飯を食べるために食堂へと向かいました。

空尾「あ!おはようございます!今日は天気があまり良くないですね」
氷雅「オハヨ~。確かに、ほんのちょーっとだけだけど、頭も重い気がするナ~」

いつもより静かな気がする、朝の光景でした。
今日は何を食べましょうか。なんだかとってもいい匂いもしますし、増々お腹が空いてきてしまいました。

寧「……あのさ、聞きたいことがあるんだけど。ちょっといいかな」
月城「何だか珍しいね。いいよ、俺が出来ることだったら存分に頼って」

皆がご飯を食べ終えた頃、困ったような顔の寧ちゃんが月城くんに話かけていました。
その内容は、平和な日常に影を落とすものでした。

寧「梓涵の様子がちょっとおかしくて。いきなり性格が変わる病気ってあるの?」

🐰🦠

王「……え、えっと。皆さんお揃いでどうしたんですか……?」
寧ちゃんに連れてこられた王くんは、いつもより元気がなさそうでした。
連れてこられた事情を聞くと、王くんは目をまるくして。

王「性格が……?自分ではいつも通り、のつもりなんですけど。あ、ご、ごめんなさい。口答えなんてするつもりじゃ……
その後もぼそぼそと何かを喋る王くんは、確かに別人のようでした。

月城「これ以外の不調はなさそうだね。それにしても、いきなり性格が変わるだなんて……
ちぃ「びっくりしたよね?これ、普通の病気じゃないもん」

いつの間にか現れたちぃちゃんに、わたしは驚きました。
そんなわたしを見て、彼女はくすくすと笑っています。

ちぃ「実はね、未知のウイルスをばらまいちゃったのです!」
サチア「え。そんなこと、出来るの?」
ちぃ「うん。人によって症状も、潜伏期間も違うよってやつ。絶望病っていうの!」

ちぃ「病気を治すおくすりが欲しかったら、コロシアイしてね」

早くしないと大変なことになっちゃうかも!とちぃちゃんは相変わらずの笑顔で話しています。
またもや提示されたコロシアイの動機に、わたしは目の前がぐるぐるするようでした。

🐰

『政万くんは、今のところは大丈夫なんですか?』
政万「ああ!この通り元気いっぱいだよ」

おやつ時。小腹が空いてしまったので何かつまもうかと食堂に向かう途中で政万くんに会いました。
話題は件の病気、絶望病のことです。まだ症状が出ている人の方が少ないみたいです。

食堂につくと、何やらいい香りが漂ってきました。そういえば、朝も同じような香りがしていたような気がします。
お菓子の焼ける甘い匂い。カヌレちゃん、もしや朝からずっと作っているのでしょうか?

まさかそんな、とは思いつつ、二人で厨房を覗くことにしました。
そこには案の定カヌレちゃんの姿が見えたのですけれど。

政万「美味しそうだね。ところで、パーティでもするつもりなのかい?やけに量が多いけれど」
豆花「……
政万「……ちょっと失礼するよ」

問いかけに何の反応も示さないカヌレちゃんの顔を政万くんが覗きます。
そうして驚いたような表情を浮かべてこちらに戻ってくると、政万くんは口を開きました。

政万「彼女、とても具合が悪そうなのだけれど。これ、もしかして絶望病というやつではないのかい」
『え……
豆花「あの、そこのやつ、取りたいんだけど」

そう言いながらこちらを向いたカヌレちゃんの顔は、真っ赤でした。

その後、お菓子を作り続けようとするカヌレちゃんを何とか休ませて。
ちぃちゃんが言っていたことは本当だったんだ、と気持ちが重くなりました。

🐰✌

時間が経つにつれ、どんどん具合が悪く、調子がおかしくなっている人ばかりになっていきます。
本当にコロシアイをして薬を貰うしか方法はないのでしょうか。もし、これが一過性の病気だったらその必要はないはずです。

わたしはまだ比較的症状は浅いですし、寝込んでしまっている人たちに比べれば動ける方です。
色々調べを進めるのであれば、動けるうちに動いてしまった方が良いでしょう。

手遅れになる前に。またコロシアイが起こる前に。

そうして歩を進めていると、突然ゴン、と重たいものが落ちたような音がしました。
それと、唸るような苦しむような声。何があったのでしょうかと、声が聞こえた方へと急ぎます。

真っ先に見えたのは、階段に付着した血。それから、下に転がる誰かの姿。

『サチアくん……!』
わたしは彼に駆け寄って、大丈夫かと声をかけました。
返事は虚ろです。もしかして、当たり所が悪かったのかも。死んでしまったらどうしましょう。

とりあえず応急処置を、と思ったところでサチアくんは体を起こし、こちらに笑いかけました。

サチア「アハ、ごめんね。よそ見してたら転んじゃって」
『どこも痛くないですか?血も出てますし、あまり動かない方が……
サチア「え、血……?そんなに痛くないんだけど……自分で手当てするし、大丈夫だよ」

何事もなかったかのようにサチアくんは立ち上がります。割れてしまったスマホを拾い上げ、「後で掃除しとくね」なんて笑って。
本当に大丈夫なのでしょうか。絶望病のこともありますし、なんだか心配です。

けれど、引き留める隙も見つからないまま彼は立ち去ってしまいました。

それから更に数日が経過して。
病気について調べようとはしたものの、専門家でもないわたしに出来ることなんて限られていました。

空尾「書庫にある本にはあまり有益な情報は載っていませんでしたね……
氷雅「まあ、そんなに簡単に治るなら苦労はしないし、動機にもならないよネ」

もう限界に近そうな人もいるくらいだし、そろそろ誰かいなくなっちゃったりして、と氷雅くんは縁起でもないことを呟いています。
わたしも、だいぶ具合が悪くなってきていました。最初から症状が出ている人たちはわたしの比ではないでしょう。

けれど、コロシアイなんて起こって欲しくありませんでした。みんな治るのだとしても、それだけは避けなくってはいけません。
なんとかしなくっちゃ、と再び意気込んだところで、終わりを告げるアナウンスが聞こえました。

〈死体が発見されました。繰り返します、死体が発見されました――――

―――――

女の子って何で出来ていると思いますか?
お砂糖にスパイス、それからすてきな何か?

いいえ、それは現実から目を反らした答えでしょう。

女の子だって、血と肉と骨で出来ている。
中身を暴いてみても、すてきな何かなんて詰まっていないのよ。

がっかりしましたか?
絶望しましたか?

魔法なんてどこにもないのに、信じてしまっていただなんて可哀想に。

――――――

この世で信じられるのは、お金とものに付随する価値だけ。
だから、金さえ手に入ればなんでも叶う。

それは真理のようで、真理ではなかったのだろう。

命あっての金で、命あっての夢なのだ。
どんな金持ちでも、世界の覇者でも、生命が終われば全て無駄になる。

そんなことにも気が付けなかった。それだけの話だ。

―――――――

離れた場所で見つかった二人は、どうあっても助からないであろうことが一目でわかりました。
先ほど薬を飲まされたおかげで、ここ数日感じていた不調は嘘のように消えてしまっています。

寧「……嘘。なんで……
王くんの遺体に駆け寄り、そう呟いた寧ちゃんの声はとても暗いものでした。

回復した体調に反比例するように、精神は疲弊していきます。
捜査をして、裁判をして、また、誰かを断罪して。今から起こることを考えて、わたしは治ったはずの頭痛が再発したような気持ちになりました。

――

ああ、そうさ。私がやったんだ。もう逃れられないみたいだから認めてやろう。
……それにしては整合性がとれていない部分が沢山あるって?はは。

私は願いを叶えてあげただけだ。殺して、少しばかり齧ってみた。真相なんてそれくらい簡単なものなのさ。
確かに嗜好としている人はいるかもしれないけれど、私のはそうではない。

これは罪なんだ。背負っているものを確認するための、神聖で美しい行為だ。

民意に耳を傾け、有象無象にばれないように背く。そうやってずっと世界は動いてきた。
上に立つ者の話は誰も聞いてくれないのだから。意思は握りつぶされるのだから。意趣返しを密かに行うんだ。
私はそんな世界は許せなかったけれどね。

ああ、ごめん。何が言いたいのかというと、つまりは大勢に耳を傾けてもらえるのが嬉しくってたまらないのさ。
個人的には沢山話を聞いてもらいはしたけどね。嬉しかったよ、だからこそ好きだったのかもしれないな。

使った凶器は結局どこにあるのかって?ああ、それはそこにいる彼にでも聞いたらどうかな。
私は彼のものを少しだけ借りたに過ぎないよ。付け加えると、殺し方も彼を真似ただけだ。

整合性がとれないのは当たり前だよ。私が殺したのは一人だけだからね。

ねえ、どうして彼はナイフを持っていたんだと思う?どこかから拝借したものではなくって、自前のものを。
答えてくれそうにないから私が代わりに教えてあげようか。

なあ、人を殺したくって堪らなかったんだろう?
己を抑えきれなくて、それを皆を助けたいからという欺瞞と混ぜ合わせて、勘違いして。

サチア。いや、名前なんて忘れてしまったのだったか。
そうやって都合よく全てを忘れて、一人だけ逃れようとだなんて。まさかしていないよな?

違う、やってない、そんな言葉だけじゃあ誰も信じてくれない。
そうだな。ブーツを脱いでくれないか?まだ、ナイフはそこにあるんだろう?



う、あ。ち、違うよ。殺したとか、違う。そんなこと覚えてない。
パティシエールチャンを殺す理由なんてないよ!オレがなんでそんなことしなくっちゃいけないの。

あの子、すっごい辛そうだった。病気の名前の通り絶望して、それでも止まることを許されなくて!停滞も休息も許されないなんてそんなの地獄だ。地獄と向き合い続けなくちゃいけなかった。
助けたいって思うことはあっても!奈落の底に突き落とすだなんて、オレは。

……あ。そういうこと?ねえ、そういうことなの、ぜんクン。

そんな目でオレのこと見ないで。

あたま、いたい。

かけるん。……しろクン。
何言ってるのか、よくわかんない。オレのことそんな悪し様に罵るだなんて二人じゃないみたいだよ。ねえどうして、二人ともそんな酷いこという人じゃなかったのに!オレが悪いことしたからって、そんな怒鳴る人じゃないでしょ!ねえ!

空尾「サチアお兄さん……?私たち、そんなことしてないですよ……

分かった、さては二人とも偽物なんだな。これが次の殺人の動機ってやつ?ちーチャンも中々手の込んだことするんだね。そうでしょぜんクン。さっきのはオレにそれを遠回しに教えてくれてたんだ!
生物活動部チャンたちもこっちおいで。二人のそばにいたら危ないよ。

ちぃ「どうしよっか。全然お話出来ないみたいだね?」
政万「あまり長引かせるのも嫌だ、とでも言いたいのかな」
ちぃ「うん。あんなの見てられないもん。ちぃたちも……みんなもそうでしょ」

え。ぜんクン、どこ行くの。オレも着いてきてって?わかった。
やっぱり、オレがパティシエールチャンを殺したとか何かの間違いだったんだ!助けたいから殺すだなんて、そんな、そんなこと……

ねえ、外に出たらみんなで何しよっか。
天気がよかったら、ピクニックとかどうかな。オレ、景色が綺麗なところ知ってるよ。



❑Sachia・neelleくんがクロに決まりました。
オシオキを開始いたします。

……

❑error!

❑蜷榊燕縺ェ繧薙※縺ェ縺がクロに決まりました。
オシオキを開始いたします。

❑オシオキ完了!



❑政万禅くんがクロに決まりました。
オシオキを開始いたします。

❑オシオキ完了!

――――――――

絶望病になんてかからなかったら、きっとこの事件は起こらなかったのでしょう。
そんな”もしも”に思いを馳せて、わたしはやるせない気持ちになりました。

呆然と立ち尽くす彼女と、いつも通りに見えてどこか陰りが見える彼。それに、ずっと悲痛な面持ちのあの子にも。
誰にもかける言葉は思いつきませんでした。わたしの言葉はきっと届かないだろう、だなんて思ってしまったから。

あと何回、誰かとお別れしたらこの生活は終わるのでしょうか。
いつの間にか空席の方が多くなった部屋を後にして、何度目か分からぬ問いを浮かべました。

ちぃ「……安心してね。もうすぐ終わるよ」

わたしの心を覗いたかのように、ちぃちゃんはすれ違いざまにそう呟きました。

―――――――――

あつい。あつくてしかたがない。
オーブンの中で焼かれて膨らむケーキ生地になった気分だった。全身が不調を訴えかけてきて、今すぐにでも倒れてしまいたかった。だというのに、わたしはホイップを混ぜる手を止められない。絶望病と言う病気にかかっているらしい。

ぐるぐる、ぐるぐる。視界がまわる。誰にも食べさせる予定のないお菓子を作り続けさせられている。
……いちばん食べてほしかった人は、いちばんにいなくなってしまった。渡せなかった愛情は、自分の中で膨らみ続けている。

パンクしてしまいそうだった。ずっと前からわたしはおかしかったのに、これ以上おかしくなってしまうことなんてあるんだろうか。熱に浮かされた頭で考えても、答えなんて浮かばなかった。

後ろの方からカタンと音が聞こえる。誰かがつばを飲み込んで、一歩踏み出してきていた。
絶望は変わらず、ぐるぐると混ぜられていた。早くここから助け出して欲しかった。逃げたくってしょうがなかった。

するり、と体に刃が刺さる。全身が熱くて訳が分からなかったけど、そこだけが明確な痛みを帯びている。
サチアは、今にも叫び出しそうな顔をしていた。まるでわたしの絶望が彼にうつってしまったかのようだった。

そんな顔しなくってもいいのに。けれど。

……どうせなら好きな人に助けてもらいたかった。例えどんな魔法でも叶わない願いでも。

――――――――――

これが小綺麗な感情からくるものではないことは、自分が一番に分かっていた。
もっと他に良い方法はあるだろう。皆が幸せに過ごせる道は、今進もうとしているこれではないはずだ。

目の前の彼は苦しんでいる。その苦しみの元が何からくるのかは、彼自身にしか分からないだろうけど。
話を聞いて、救いたいと思ってしまった。地獄の中から一瞬でも助け出したら、もしかしたら、と希望を思ってしまった。

殺してしまおう。それが病に苦しむ皆を救う道だから。
君は何も悪くない。君は絶望から皆を助け出した希望なのだから!

声高らかに何回もそう伝えれば、彼は落ち着きを取り戻した。
甘言に身をゆだねてしまったのだ。それを与えてくれた僕のことなんて、見ていなかった。

なあ、僕の話も聞いてくれよ。さっき、君と同じことをしてきたんだ。
この手は君と同じように血にまみれたんだ。

ぼんやりしてないで、頼むから。

❑4章 完

❑4章
負傷 Sachia・neelle様
シロ 豆花カヌレ様、王梓涵
クロ Sachia・neelle様、政万禅様