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RONPA HABIT

本編まとめ【https://x.com/HabitRonpa】



❑2.5章

―――

落ちる時は一瞬だ。
誰かに助けを求める暇なんてなかった。

少しでも誰かに気が付いてもらえるようにと醜く足掻いても、まったく意味がないことなんて分かっていた。

いつか誰かが自分を。
そんな淡い希望は、粉々に打ち砕かれるしかないのだ。

――――

幽霊は本当にいるのか。

突然降って湧いたその話には、意外にも皆思うところがあるようでした。

普段なら……いえ、ここに来る前であればきっと無関心であったり、幽霊なんていないと吐き捨ててしまえる人が大半だったのだろうと思います。
けれど、わたしたちはこの短期間で死というものに触れすぎてしまっていました。

それ故か、この話題はとても白熱した様子を見せました。

サチア「そうだね~……みんなとまたお喋り出来るなら、いたら嬉しいかもって気はするなあ」
政万「確かに、そう考えると幽霊も悪いものじゃないな!僕は悪霊の方ばかり想像してしまっていたけれど」

空尾「月城さんは幽霊、見たことありますか?解剖してる時に気が付いたら誰かに覗きこまれてたとか……!」
月城「うーん、見たことはないかな。そもそも俺、人間死んだら空っぽになっちゃうと思ってるし。幽霊は信じてないよ」

飲食「幽霊もお腹空くんかな?そやったら何食べてはるんやろね」
豆花「昔好きだったものとかかな……幽霊になっても、食べ物にさわれるといいけど」

食事終わりに数人でがやがやと話していると、日常に戻って来れたかのような錯覚をしてしまいます。

未だに土砂で道は塞がれていますし、救助の人もくる気配を見せていません。
ここで全員が一生を終える可能性もありますし、本当はもっと焦らないといけないのかもしれません。

氷雅「ネ、何話してるの~?」
『えっと……幽霊はいるのかって話です』

氷雅くんはわたしの返答を聞き、ふむふむと頷いていました。
……氷雅くんは除霊師でしたね。彼のお仕事の根本にかかわるような話題でしたし、配慮が足りなかったでしょうか。

政万「なあ、ここら辺に幽霊がいたりしないのか?涙涙、くんとか……
氷雅「ん~、そうだなあ」

氷雅くんはぐるりと部屋の中を見回します。
その様子にわたしたちはみんな釘付けになっていました。

氷雅「あ、いるよ!キミのうしろに」
豆花「……え」

指されたカヌレちゃんは目を見開き、とても驚いていました。

氷雅「なんてね!ここに来てから幽霊は見たことないな~」
期待させるようなこといっちゃってごめんね、と氷雅くんは言いました。
(スチル)

王「本当に驚かされましたね!いやあ……でもいないんですね、皆さんの幽霊」
砂糖「ここ、一応教会みたいだしそれも関係あるのかな?ちょっと残念だよね」

忘れかけていましたが、確かにここは教会、本来なら神聖な場所でした。
そこに幽霊が住みつくことは難しいのでしょうか?

小花衣「……教会じゃなきゃきっと、みんないたんじゃない?あんな終わり方、後悔しかないでしょ」

そう、きっとみんな、何かしらの無念を残していたはずです。
死にたくて死んだ人なんていないのですから。

――――

これは悪い夢だ。
あの人の冷たい体温を感じ、そう思ったのを鮮明に覚えている。

ころころと変わっていた表情も、今となっては永遠に変わらぬ面のようにぴくりとも動かない。
何故かよく耳に入ったその声も、もう二度と聞くことは出来ないのだ。

心臓がズキズキと痛む。
感情が上手くコントロール出来なくて、涙が溢れそうになるのを必死で押さえた。

どうして自分はこんな感情を抱いているのだろうか。

最初に目の前で人が死んだ時も、初めての事件の後も、悲しくはあったけれどこんなにも辛くて、息がしづらいことはなかったのに。

ああ、きっとこれが恋なんだ。
言葉にするとストンと腑に落ちた。

彼と一緒にいると楽しかった。
偽りのない自分を受け入れてくれたことが嬉しかった。

きっと、自分の運命の人は彼だった。

……どうしたら、もう一度あの人に会えるのだろうか。
ぐるぐると思考を巡らせていると、一人の少女が目の前に現れた。

ちぃ「ねえ、大切な人が死んじゃって悲しいんだよね」

これあげるから頑張って、他の人には内緒ね。
どうしてこんな時間に起きているのか、という質問を無視し、手渡されたのは林檎だった。

ちぃ「これをたべるとね、苦しまずに死ねるんだよ。だからね、罪悪感とか感じなくていいんだよ」

そういうと少女はどこかへと消えてしまった。

……これを食べれば、苦しまずに……
いつの間にか、思いついたままその林檎に齧りついていた。

これでまた会えるんだ、と思った。
眠りにつくように死んだお姫様が次目覚めた時には王子様に出会えていたように、きっと自分と彼も再会出来るんだと。

一口、また一口と林檎を食べ進める。
3分の1ほどを胃に収めたあたりだろうか、何かがおかしいと気づき始めた。

唇が、手足がピリピリと痺れているのだ。
そして、それに気が付いた瞬間一気に吐き気と痛みが襲ってきた。

痛い、痛い!息が上手く吸えない、どうして!
苦しまないんじゃなかったの、なんでこんなことになっているの!?

苦痛にのたうち回る事しか出来なかった。
確実に近づいてきている死への恐怖に怯えることしか出来なかった。

ああ、あの子の事なんて信じちゃいけなかった。

でもこれで、奏クンが私のことを迎えに来てくれるはずなんだから。
(スチル)

次に目覚めた時は、きっと目の前にいるよね。

――――――

……沙優ちゃんは、自分で自分を殺してしまったんですよね』

礼拝堂で亡くなっていた沙優ちゃんを見つけて、3度目の裁判が行われました。
議論を交わせば交わす程、クロは彼女自身だという結論に辿り着いてしまって。

わたしたちの答えを聞いたちぃちゃんは、満足そうに「正解!」と言いました。

田中「……自分で自分を、か。小花衣、元気ないなとは思ってたけどそんなに追い詰められてたんだな」
喜色「ニコニコしてることは減ったけど、前より仲良くなったからだと思い込んじゃってたよ!なんで気づけなかったんだろね」

ちぃ「ほんとにね!あれで誰かのこと殺してオシオキされちゃえば?って意味で言ったつもりなのに、なんでわざわざ自殺なんてしちゃったのかな?死ぬの怖がってたみたいだったのにね!」

寧「……キミがあの毒林檎渡したの?また、事件を起こそうと思って?」
ちぃ「うん!そうだよ」

ニコニコと笑うちぃちゃんは、罪悪感なんてまるで感じていないようでした。
その様子にわたしは恐怖を覚えました。

望月「まあともかくさ、これでクロは見つかったわけだけど。オシオキはどうするの?」

観釉ちゃんのその言葉を待っていましたとばかりに、ちぃちゃんは笑みを深めました。

ちぃ「えっとね、オシオキはやるよ!」
『それは……どういうことですか?』

ちぃ「……こういうことだよ」

ちぃちゃんがすっと目を細めると同時に、ギギギ、と錆びつくような音が聞こえました。
これ、前にもどこかで……。正体を思い出す前に、それは襲い掛かってきました。

❑ペンは剣よりも強しと言うけれども、そのペンをもつ腕を奪ってしまえばこちらのもの!
{かけるちゃんすち}

❑逃げようと必死に手を伸ばしたのね。そうしなかったら、腕は無事だったかもしれないのに!
{ねいすち}

見覚えのある黒い槍が二人を襲いました。
いきなりの横暴に、みんな騒然とするしかありません。

ちぃ「沙優ちゃんが勝手に自殺しちゃったのが悪いんだからね!」
ちぃちゃんが何か言ったような気がしましたが、それが聞こえないくらいみんな二人の下へ必死で駆け寄って手当をしていました。

空尾「あ、腕……私、の……
{スチル}

翔ちゃんは自らの体から離れてしまった左腕を見て、酷く混乱しているようでした。
今まで当たり前に動かせていたものが突然なくなってしまったのですし、無理もないでしょう。

サチア「大丈夫、大丈夫だから。ね、しろクン、かけるん大丈夫だよね……?」
月城「まず止血しないと大丈夫じゃなくなるかな。手伝ってくれる?」

王「ちょっと寧さん、血が!いっぱい出てるじゃないですか!」
田中「オイオイ、ちょっと落ち着けって。こっちがパニックになってたら、寧の怪我ももっと酷くなっちゃうかもしれないぜ」

ちぃ「今日の裁判はこれで終わり!次はちゃんとコロシアイしてね!」

ちぃちゃんはまるで魔女のように笑っていました。

姫に毒林檎を渡して、見事自らの目論見をやり遂げた魔女のように。

❑2.5章 完

❑2.5章
自殺 小花衣沙優様
負傷 空尾翔様
   寧様