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めまめ
2023-10-31 22:32:59
20595文字
Public
穂荒
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穂荒ワンドロワンライ まとめ
穂荒ワンドロワンライ様用に書いたお話のまとめ。全体的に加筆修正済み。ハッピーエンドではないものが含まれますので、ご注意ください。
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第七回お題「クリスマス」穂→荒
私がクリスマスの飾り付けをしたい、と提案すると、荒船くんは首を縦に振った。ただし、と言葉が続く。
「ついでに、年末の大掃除もやっちまうぞ」
隊長の言うことは絶対である。
私は自作のリースを手に取った。ちりん、とベルが鳴る。プラスチック製のモミに、木の実や花をふんだんにあしらった。リボンは隊服の色。青と白と、残念ながら黒は無かったので濃紺のリボン。毎年作っているが、今年もいい出来だと胸を張って言える。
「去年と同じとこで良いっすか」
「うん。よろしくね」
後ろからひょいと顔を出した半崎くんは、私と同じくらいの背丈だ。頭の一番高いところの位置はたいして変わらないだろう。
リースを飾る予定の場所はドアのやや正面にある壁。そこにフックを取り付けてある。何かに乗れば私でも届く高さだ。でも、年下の男の子の申し出にふわふわした気持ちになったので、彼に任せることにした。半崎くんは片手にリースを、もう片方の手でキャスターつきの椅子を移動させる。
「私、おさえよっか」
「じゃあお願いします」
半崎くんを見上げるとけっこうな高さだった。私の隊服はスカートだから、椅子に乗らなくてよかったかもしれない。私は椅子が動かないようにしっかり力を込めながら、横を見た。
荒船くんと穂刈くんはロッカーの前で肩を並べていた。シュレッダーにかけるであろう書類が床に置かれ、燃えないゴミは袋にわけられていた。共有ロッカーの掃除を終えた二人は、個人ロッカーの整理を始めたらしい。
「穂刈、それは持って帰れ」
「使わないのか、おまえは」
「そっちは別に。あ、でもこれは置いとけ」
「了解」
ロッカーからは握力を鍛えるグッズや、体を鍛えるための、私には使い方がよくわからない物が出てくる。
穂刈くんのロッカーには、もちろん穂刈くんの私物が入っているはずだ。なのに何故かその持ち物に対して、荒船くんが当然のように口を出していた。どちらかと言うと荒船くんの意見が優先されているように見えたし、穂刈くんも実際に優先しているのだと思う。
「こっちはどうする、荒船」
「俺には重すぎるんだよな。おまえはどう思う?」
「そうだな。すぐには使いづらいかもしれねえが
……
」
荒船くんがハッとしたように壁掛け時計を見た。
「やべ、そろそろ会議だ。戻ってきたらまた掃除するから、少しのあいだ任せていいか」
「わかった。行ってこい」
デスクにあったファイルを掴み、風のように出ていく荒船くんの背中を、穂刈くんはじっと見送っていた。
「加賀美さん。もう放してもらって大丈夫ですよ。ありがとうございました」
「あ、ごめん。こちらこそ、つけてくれてありがとね!」
リースは完璧な位置にぶら下がっていた。これがあるだけでも作戦室の雰囲気が変わる。私は、短い間だけどよろしくね、と心のなかでリースに話しかけた。
半崎くんがイスを片付けると言ってくれたので、私は穂刈くんのところに向かった。ロッカーの前の、どこか寂しげな後ろ姿に私は声をかけた。
「穂刈くん」
穂刈くんは小さな紙切れを眺めていた。
レシートの類かな。私がゴミ袋を渡そうとすると、穂刈くんは「いや、良いんだこれは」と微かに笑い、印刷が薄くなったそれを、映画のパンフレットと一緒にクリアファイルに丁寧に挟みなおしたのだ。私はそこでようやく気付く。
大切なものなんだ。
クリアファイルをロッカーに戻す手付きがとてもとても優しくて、一瞬でもゴミだと思ってしまったことを、私は反省した。
「誕生日プレゼントなんだ、あいつから初めて貰った」
穂刈くんはぽつりと言った。私は驚いてしまった。ぎゅっと深い何かが詰まっている声色だった。
何色に例えたら良いのだろう。私はカラーパレットを想像したけれど、これだという色を選べなかった。荒船くんを想った穂刈くんのその声の彩りは、クリスマスのイルミネーションにも負けない、静謐で彼だけの唯一無二の色彩だった。
宝物のように、あるいは隠すようにしまわれた映画の半券の存在を、荒船くんは知らない。穂刈くんもきっと荒船くんに気付かせない。そのことを、私だけが知っている。
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