Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
めまめ
2023-10-31 22:32:59
20595文字
Public
穂荒
Clear cache
穂荒ワンドロワンライ まとめ
穂荒ワンドロワンライ様用に書いたお話のまとめ。全体的に加筆修正済み。ハッピーエンドではないものが含まれますので、ご注意ください。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
第一回お題「遅刻」「手を繋ぐ」高所からのジャンプがまだ慣れてない穂刈君
イーグレットから放たれた弾丸はトリオン兵を貫いた。同時に、穂刈のすぐ後ろで光が破裂する。次いで、硬いブーツの底とコンクリートがぶつかるような音。振り返ると、斜めに切られたトリオン兵が煙を巻き上げて崩れ落ちるところだった。
「重役出勤か、隊長」
「グッドタイミングの間違いだろ」
「なるほど。遅れてやってくるらしいな、ヒーローってやつは」
「要するに助かったってことでいいんだよな?」
荒船は弧月を鞘に納めながら笑い、耳に手をあてる仕草をした。
「半崎も良い援護だった」
『うっす。オレはここで待機しときます。穂刈さんもナイスショットでした』
「照れるな、褒められると」
『穂刈くんも一発で仕留めてたもんね』
「気は抜くなよ。引き続き周囲を警戒しとけ」
鶴の一声だ。三者三様の返答のあと、通信が切れる。穂刈はイーグレットを片手に立ち上がった。ビル風をうけたバッグワームが忙しくはためいた。ガラクタになったトリオン兵に目を落とし、何やら検分しているらしい荒船の方へ近づく。気配を察知したように、帽子のつばが上を向いた。
やはり、穂刈の気のせいではなかった。荒船の右目の下のぎりぎりのところが縦横に割れて、かすかに黒い煙があがっていた。穂刈は亀裂の入ったそこを無遠慮に親指で押さえる。親指で覆えるくらいの小さな傷だが、荒船の整った容貌には似つかわしくないと思った。止血の要領でぎゅっと押さえると、黒煙が細くなった。指を浮かせればその隙間からボーダー隊員の第二の命ともいえるトリオンが止めどなく溢れていく。ふしぎな色の瞳が、穂刈の挙動を見守っていた。
「どうした」
「もったいねえ」
「これくらいの傷ならトリオンの漏出量も少ないし、特に問題ない」
「そこだけじゃねえけどな、オレが言いたいのは」
亀裂を指でなぞれば荒船は目をすがめ、まばたきをして、小さく息を吐いた。
「
……
警戒続けろって言っただろ。おまえは向こう側を見張れ」
荒船がそっぽを向くと、その動きにあわせて煙がゆらりと揺れた。その時、
『皆、聞いて』
加賀美の真剣な声音に、空気が張り詰めた。穂刈も荒船も通信に耳を傾ける。
『門の発生の前兆が確認されたよ。予想地点を送るから、荒船君と穂刈君はマーキングした場所に百五十秒以内に移動。半崎君はその場から動かないで』
「了解」
穂刈は転送されてきたデータを確認する。指定されたポイントに向かうには、高低差のあるこのビル群を抜けていかなければならない。
「加賀美、最短ルートを
……
」
さてどうするかと考える間もなく、荒船は屋上のへりに向かってずかずかと歩き出した。穂刈を置き去りにして。
「荒船」
「穂刈。ここから隣のビルに飛ぶぞ」
穂刈達のいる雑居ビルの屋上には転落防止柵は設置されていなかった。荒船はあと一歩踏み出せば落ちてしまうというところで立ち止まり、こっちに来い、と穂刈を手招きした。
「ショートカットする。重役出勤分のな」
「根に持ってんのか、さっきの」
「まさか。ほら、おまえは慣れてないだろうから俺がエスコートしてやる」
穂刈はこちらへ伸ばされた手を掴んだ。
「行くぞ」
そう言うと荒船はビルから身を躍らせた。穂刈の身体が荒船に引っ張られる形で落ちていく。ごうごうと吹く風が耳を塞ぐ。死なないと分かっていても、遊園地のアトラクションとは比べ物にならないくらいのスリルに穂刈の顔が引き攣った。しかも荒船の帽子は浮かび上がり、風に流されそうになっていた。穂刈が帽子を慌てて捕まえると、ちょうど内部通信が入った。
『帽子、そのまま持っておいてくれ。あと言い忘れてたが、着地は自分でどうにかしろよ!』
『言い忘れるなそんな大事なこと!』
荒船は、穂刈には想像もつかないことをやってのける。だからこそ穂刈の血は沸き立った。同年代に比べると静かだと思っていた己の心臓は、荒船のそばではひっきりなしにうるさくなる。今だって、トリオン体が熱を帯びたように感じる。手汗をかいていないだろうか。だが穂刈は構わず、ぎゅっとそれを握り込んだ。
地面が近づいてくる。強く握り返された手を、穂刈が離せるはずもなかった。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内