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seika_ashe
2024-07-20 15:38:40
22166文字
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蛇狐の戯れ 【人喰いホテル】
蛇も狐も、全ては疾く闇の内へ──。
スペシャルサンクス
アスナショウコさんの作品「アンシーリーコート」及び「レゾンデートル」の世界観と、最後に少しキャラクターをお借りして書いております。
友人宅創作キャラ、白崎幸葵をお借りしています。ありがとな!!!!
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幸葵が示した方面は、生存者が倒れていた場所よりも更に薄暗い。正直浅葱としては近づきたくも無いのだが、自分の後ろをニコニコ笑顔の幸葵が塞いでいるため引くに引けなくなっている。愉快犯クソ野郎が、と心の中で毒づきながら、浅葱は遅々とした歩みで暗がりへ近づいた。
すん、と鼻を動かした浅葱は表情を歪める。狐臭い、生臭い、最悪だと吐き捨てながら顔を歪めるせいで端正な顔が台無しだ。荷物から消臭剤を再び取りだして、容赦無く噴霧する浅葱は潔癖症さながらである。後ろからその様子を眺める幸葵は、んふふふふ、と何ともムカつく笑い声を発した。
「笑ってんじゃねぇぞ白崎この野郎
………
」
「ンッフフ、いえすみません
……
双鶴さんが余りにも面白くてつい
……
」
「煽ってんのか??」
「そんなまさか!」
幸葵の方を見て威嚇する浅葱の足にこつ、と何かが当たる。何が、と足元を確認したことを浅葱は秒で後悔する羽目になった。
死体だ。
それもカラカラに干からびた、ミイラと呼んでも差し支え無さそうな。
「
…………………
白崎。一応、一応聞くぞ。お前まさかこれが件の『面白いもの』だなんて宣ったりしないよな?」
「いえ、確かに其方が面白いものですが」
「〜〜〜〜〜っっっ!!!!」
幸葵の襟首を掴んで声も発さず怒りを表現する浅葱。器用ですねえ、と余裕な態度を崩さぬ幸葵。離れたところにいる気絶した生存者たち。そして足元の死体。状況が混沌としすぎている。ネットに出回る情報量が多い写真顔負けの状況だ。
暫く幸葵を揺さぶりながら怒りを発散した浅葱は、今度は幸葵が差し出した手袋を奪い取って死体の検分を始める。
……
正直なところ、担当教科からも察せられるように、この手のことは浅葱よりも幸葵の方が向いている。加えて幸葵は天才と呼んで差し支えない頭脳を持っており、本来なら幸葵に任せた方が色々とわかる
………
のだが、幸葵は先程の発言からもお分かりの通り、倫理観が死んでいるので死体には近づけない方が賢明なのだ。幸葵は幸葵で、ある程度の常識観と自分の性質を疎む傾向もある為、こうして浅葱の後ろで見守りに徹している。
「
………
軽すぎる、体の大きさに対して重さが全く釣り合ってねえ。人じゃなくて物って言われた方がまだ納得いくぞ」
「そのようですねぇ。明らかに内蔵が抜かれてそうな身体の陥没具合ですし、干からびてるとなると血液まで。見境が無いなんてレベルじゃないですね」
「どんなに少量であろうがそこにある程度の力が含まれているなら
……
で喰らったんだろう、本当に胸糞悪い」
ふい、と浅葱が視線を向けた先には、点々と同じようにかつて人だったものが転がっている。弔ってやりたい気持ちは山々だが、幻想系の被害を受けたものは恐らくこの後螺旋捜査部へ引き渡さなければならない。原因究明とその他諸々の調査をしなければならないからだ。仕方なく浅葱は、やるせない表情のまま手を合わせて立ち上がった。
「双鶴さんはお優しいですねぇ。哀れんだところで生き返る訳でもないでしょうに!」
「お前と違って俺は倫理観がちゃんとあるもんでね。死者を愚弄する程アホじゃない」
「今間接的に俺の事アホって言いました?」
「それ以外に何がある?」
数秒の沈黙、そして肘でのどつきあい。
先程まで神妙な雰囲気だったというのに、たった数秒でこれなのだから浅葱も大概幸葵のことを言えないくらい変人である。
互いの脇腹に強めの一撃を入れながら、それでも2人は暗がりの奥の方を、一切視線を逸らすことなく見つめている。点々と転がる死体は、その暗がりの奥へ進むにつれ数が増えているのだ。どう考えても、元凶がその先にいる。いつ自分たちの本質や目的を悟って、奥から襲いかかってきてもおかしくない。
「
…………
どうする白崎。行くか?」
「ご冗談を。解決が無理だと仰ったのは双鶴さんでしょう。信仰を失ったとはいえ、紛いなりにも神座に居る物をどうにかしようなど、自殺行為以外の何物でもありません」
「聞いてみただけだよ。お前の場合『興味が湧きました』とか言って行きかねないからな。そうなったら殴ってでも止めようかと」
「俺をなんだと思ってるんです?俺だって自分の命は惜しいですよ」
くる、とどちらともなく暗がりに背を向け、生存者たちの方へと戻る。浅葱が見張り用に出していた狐は、浅葱たちが帰ってきたのを見ると立ち上がり、浅葱の肩へと飛び乗った。離れていた間も特に異常は無かったらしい。相変わらず生存者は気絶しているが。
「さて、どうします?出るとなると、先程見つけたショートカットルートか、正面玄関になりますが
……
いえ正面玄関は乱闘になりますけどね?」
「あそこから出るしか無いだろ
………
荒事は陸烏あたりならまだしも俺とお前じゃ無茶」
「ですよねぇ。
……
まあ、そろそろ増援も到着している頃合でしょう。さっさと引き渡して帰りますよ」
「あぁ、この分なら夕飯の時間までには帰れそうだな」
それぞれ狐と蛇を呼び出しながら、日常会話とも取れるような言葉を交わしている。この状況下でこんな会話をする2人は、異常者と言われても納得されるだろう。2人からすれば、理事長から厄介事を押し付けられすぎて、もう慣れが出てしまっただけなのだが。
生存者たちを使い魔たちに運ばせながら、空間の端へ辿り着く。狐たちが運ぶのに協力しているせいか、生存者たちはするりと空間の境を超えていくが、幸葵は普通に抜けようとすると入った時同様発破が必要なはずだ。どうする、と浅葱が嫌そうな顔で幸葵を見る。
「これなら、お前だけ正面玄関から出る手もあるぞ」
「嫌ですよ。ここに入ったことがバレたら面倒です。
……
まあかと言って貴方はもう使いたくないって顔してますし
……
はあ
……
わかりましたよ。食い破ります。それで良いでしょう」
面倒かつ浅葱と同じように嫌悪の顔をしながら、幸葵は先程狐を喰らった時と同じ蛇を呼び出す。食事が出来て機嫌が良いのか、呼び掛けに対してすんなり出て来た蛇へ「殊勝な心がけですね」等と、余りにも上から目線な言葉をかけながら幸葵はつい、と境界を指差す。
「デザート代わりです。食い破って差し上げなさい」
ぶち、という音と共に、不自然に景色が歪む。強い風が吹き込んだと同時に、それまで一切聞こえてこなかった鳥の鳴き声や、人の話す声が耳に入る。どうやら無事に外へ繋がったらしい。
***
空間から出てきた浅葱と幸葵へ、1人の男性が慌ただしく駆け寄って来た。
「お二人さん怪我は!?
……
んや、杞憂か。ならいいや。ご無事で何より〜ってなァ」
「弟さん。毎回すいませんねぇ。理事長と貴方の姉のせいでこんな事に巻き込まれて可哀想に」
「可哀想って思うんなら名前くらい覚えてくれねェかな
……
」
「颯さん、本当にすいません白崎が失礼で
……
」
んやいーのいーの、いつもの事だろォ、と苦笑する男性の名前は樂木颯。陰陽庁の職員で、浅葱と幸葵とは度々顔を合わせる顔馴染みである。
……
ついでに言うと、2人の同僚かつ浅葱の能力制御に使った抽出液等を作った人物の弟で、浅葱に負けず劣らずの大層な苦労人だ。
「生存者はアレで全員か?7人
……
も残ってりゃ幸運な方かね」
「死亡者はその倍以上と思っていただければ宜しいかと。ご覧になりたいのでしたら、今俺たちが出てきた所からどうぞ中へ」
「白崎サン相変わらず鬼畜だなァ
……
そういうのは他に任せてるんで。俺は2人の無事を確認するのと、生存者の保護係だからさァ」
「詳しい事はまた理事長通すと思います。颯さん、この後の処理頑張ってくださいね」
労る言葉を投げかけた浅葱へ、浅葱クン超いい子、と言いながら颯は浅葱の頭を撫で回す。複雑な面持ちになる浅葱を、幸葵は憐れむような目で見て失笑を零した。尚、勿論浅葱から肘は貰ったが。
じゃ、俺仕事あるんで!と他の職員が集まっている方へ走り去っていった颯を見送り、浅葱と幸葵は深い深い、それはもう今日一番の深い溜息を吐き出した。
「帰りますか
……
」
「帰るか
……
」
既に夕焼けも終わりに差し掛かった空を見ながら、浅葱と幸葵は駐車場に停めている車へと歩を進めた。
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