旅と夢の狭間にて

FF14の二次創作です。
暁月のフィナーレ(6.0)までのネタバレを含みます。


 青白い光に足を踏み入れた途端、濁流に飲み込まれた。上へ上へと流される。しかしそれも長くは続かない。光の流れは次第に穏やかになっていった。
 アゼルは流れに身を任せて揺蕩っていた。彼を導くように、茜色の光が少し先の方を飛んでいる。
 周囲にはきらきらしたものが無数に散らばっていた。それは砕けた水晶の欠片のようにも見える。大きさはまばらだったが、大きな欠片の表面にはどこか見覚えのある景色が映っていた。
 あれはウルダハの賑やかな目抜き通り。あれは逆さを下った星海の覗き窓。あれは霧立ち込める夜の森。あれは……
 欠片の中に懐かしい風景を見つけては、流れざまに見送った。
 残る一つは、天空に浮かぶ庭園の島。風に吹かれる花弁の向こうに、佇む彼らの姿を見つけた。
 二つの名前を唇が紡いでいた。届くはずがない。これは記憶の残滓のようなもの。わかっている。それでも彼らならば、もしかしたら……
 気がつけばアゼルは欠片に向けて手を伸ばしていた。
 菫色の青年が視線を上げた。
 万象を見通すその瞳が何を映しているのかはわからない。それでもたしかに、菫色を柔らかに咲かせた彼はアゼルに向かって大きく手を振っていた。
 傍らの男は大袈裟に肩を竦めている。彼の瞳の金色はアゼルを見据えて、のそりと右手が上がった。二度、三度、気怠げに振るう仕草とは裏腹に、口元には満足げな笑みが覗いていた。
 またいつか、どこかで。その時は、きっと不思議な懐かしさを覚えるだろう。
 そうして最後の欠片も見送り、光の旅路もいよいよ終わりを迎える時が来た。
『あなたの旅は、良いものでしたか?』
 どこからともなく声が聞こえた。
 姿はどこにも見えはしない。その声も耳が捉えたものなのか、そうでないのかはわからない。
 しかしアゼルは知っていた。月明かりのように冴えていて、陽ざしのように鮮やかな、この声色の持ち主を。
 彼女に、悠久の空の下で投げかけられたものと同じ問い。
 もう妨げるものは何もない。
 この答えが、世界を巡る風となって、どうか彼女に届きますように。
「ああ、もちろん。これからも、旅はきっと良いものになる!」
 言葉と共に景色が溶ける。アゼルの意識も光の彼方に運ばれていく。
『ええ、いってらっしゃい』
 海色の瞳の女性が楽しそうに微笑んで、優しく背中を押してくれたような気がした。